Fate and Zero

 

第44話 「暗躍…」

 

 

 

士郎は魔法学院の近くまで戻って来ていた。

 

「ここら辺でいいか」

 

適当な広さの平原にゼロ戦を着陸させる。

 

「おいおい、相棒。如何してこんな所で降りちまうんだ? 学院までまだあるじゃねえか」

 

「いや、もうこんな時間だろう。戦闘の後だから学院もピリピリしてるだろうから、ゼロ戦で直接戻って余計な厄介事にしたくないんだよ」

 

そう言うと士郎はゼロ戦空飛び降り、早速ゼロ戦を『倉庫』中に仕舞う。

 

「へぇ〜、相棒は色々と考えてるねぇ〜」

 

「これ位はな」

 

(じゃないとやっていけなかったもんな〜)

 

士郎の苦労が窺える場面である。

 

「ん?」

 

士郎は急に辺りを見回す。

 

「如何した相棒?」

 

「……いや、何でも無い。学院に戻るか」

 

「そうだな。娘っ子も待ってるんだろう」

 

士郎達は月明かりの下、魔法学院へと歩き出した。

 

 

 

「へぇ〜。今度の『神の左手(ガンダールヴ)』は随分と鋭いね。これは要注意かな」

 

闇の中に紛れて士郎を監視していた者の声。

 

「さて、これから忙しくなりそうだ」

 

 

 

「やっと着いたか」

 

大回りで帰ってきた為、士郎が帰りついたのは夜中になっていた。

 

「もうルイズは寝てるかな?」

 

静かに部屋に戻ると其処には士郎を待って疲れてしまったのかルイズ達3人が寄り添って眠っていた。

 

「まったく」

 

苦笑を浮かべながらも3人をベットに運び、寝かせる士郎であった。

 

「ん?」

 

士郎は窓の方からある魔力の残滓を感じ取った。

 

「これは……」

 

窓枠に残った砂から確かに見に覚えのある魔力が僅かだが感じられた。

 

「アイナか」

 

(一体何をしにきたんだ? 幸い3人とも無事のようだけど)

 

これから更に激化していくであろう事態に表情を固くする士郎。

 

「朝になったら聞いて見るか」

 

そう決心した後に大きなアクビをしてしまう。

幾ら士郎でも疲労が溜まって居るようだ。

 

「俺も一眠りするか」

 

そう言うと士郎は端の方で毛布に来るまり寝息を立て始めた。

ある事に気が付かないまま。

もし気が付いていればあんな事にはならなかったかもしれない?

まあ、無理だろうが。

 

 

 

タブルでの合戦から一夜あけた朝。

トリステインではアルビオンを破った話題で持ちきりであった。

が、しかし。哀れな男には全くと言っていいほど関係の無い事であった。

 

 

 

差し込んできた朝日が士郎を刺激し、閉じていた目蓋を開く。

何時もならこの時点で意識がハッキリするのだが、疲れの為かまだ意識がハッキリしていない士郎。

その目の前にぼんやりと2人の人影が見える。

 

「んっ」

 

その人影の方を向き、数度瞬きを繰り返す。

 

「あれ、ルイズとタバサ?」

 

目の前で仁王立ちしているルイズとタバサの2人の事を漸く認識した。

 

「ふわぁ〜〜〜。おはよう」

 

「シ、シロウ」

 

「……」

 

何故か引き攣らせながら言葉を発するルイズ。

タバサの表情も何時もより固く見える。

そんな2人の様子を漸く不審がる士郎だったが時既に遅し。

自分の右腕に何かが触れたのを知覚し、そちらの方を向いてしまった。

そこには昨晩の学生服姿では無いキュルケが居た。

 

「なっ! 何でキュルケがココに!」

 

驚きのあまり大声を上げる士郎。

その声量の所為で眠りに就いて居たキュルケが目を開ける。

 

「あ、ダーリン。おはよ。昨日は凄かったわ」

 

「ああ、おはよう。って!! そうじゃない! 何でキュルケが!」

 

いきなりの事で混乱している士郎の耳に地獄の其処から響いてくる様な声が聞こえた。

 

「シ〜ロ〜ウ〜」

 

鬼のような形相で杖を構えるルイズ。

 

「ルイズ?」

 

「朝っぱらから何やってんのよ!」

 

そう言ってルイズが杖を振り下ろすと同時に盛大な爆発が撒き起こる。

こうして昨日の非日常ではなく、士郎の苦難な日常が再び始まった。

 

 

 

神聖な雰囲気が充満する空間に2人の人影がある。

 

「では今回の騒動でトリステインの担い手が見つかったという事ですね」

 

高価な衣を身に纏った男性に対し膝を付き報告する少年。

年の頃は恐らく16〜18といった所だろう。

 

「はい」

 

「では暫くの間そのトリステインの担い手と使い魔の監視をお願いします」

 

「分かりました。―――様」

 

 

 

高価な調度品に飾られた部屋に居る1人の男。

その男の目の前には小さな人形が置いてあった。

 

「そうかそうか。敗れたか」

 

男はその人形に対し喋りかける。

 

「ん? トリステインの担い手を如何するかだと? 暫く放置して置け」

 

そう言うと男は人形の前から立ち上がり、その場から離れて行く。

 

「漸くか、漸くだ。せめて相手がお前ほどの打ち手であって欲しいが……」

 

男の言葉にはとても深い感情が込められていた。

 

 

 

その頃、話題になっている人物はと言うと。

 

「シ、シロウ」

 

士郎に正座をさせられていた。キュルケと共に。

 

「ダーリン。こ、これ」

 

初めての正座の為、開始5分も立たないうちに足が限界に達している2人であった。

何故2人が正座をさせられているのかと言うと、キュルケはイタズラの罰。ルイズは人の話を聞かずに暴発した罰であった。

 

「駄目だ。全く、反省してるのか?」

 

「し、してる」

「し、してるわ」

 

タバサは2人の後ろに回り、痺れているであろう足に杖に先端を押し付けた。

 

「つん」

 

「「!!〜〜〜〜〜」」

 

声にならない絶叫を上げる2人。

 

「面白い」

 

相変わらず無表情を崩さないまま、さらに2人の足を突く。

その度にルイズとキュルケの表情が歪む。

 

「タバサ、それはやめろ」

 

士郎の言葉に何処か残念そうではあるが付くのを止める。

 

「さて、俺は朝食を作ってくるからそれまで2人を見張っててくれ。戻ってくるまでに足を崩したら……」

 

そう言葉を区切り、部屋を後にする士郎。

 

「「!!!」」

 

2人は恐怖した。後ろに居るであろう悪魔の気配に。

 

結果を言えば2人は息も絶え絶えに成りながらも何とか士郎が戻ってくるまでの間、正座をやり遂げる事が出来た。

若干のトラウマを抱え。

 

 

 

 

 

【皆さんお久しぶりです。色々と忙しい毎日が続いておりますが、自分の作品を楽しみにして下さって居る方々の為にもこれからも頑張って行きます】

 


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