Fate and Zero

 

第42話 「必殺…」

 

 

 

キュルケとタバサは突如現れた鋼の巨人に魅入られた。

 

「「……綺麗」」

 

鋼の巨人が放つ気配は圧倒的で、2人の心を大きく揺さぶる。

 

「きゅい〜〜〜」

 

一方、シルフィードは巨人の放つ余りにも強く圧倒的な気配に竜としての本能は怯えていた。

しかし、ソレと一緒に言い様の無い心地よさも感じ、困惑していた。

 

 

 

「さて、シーア。 時間が無いから、さっさと片付けるぞ」

 

「分かってる、士郎」

 

士郎達の乗るアンリミデットは敵の鬼戒神の前に降り立つ。

 

アンリミデットが出現した事により、停止していた鬼戒神が動き出した。

 

「「先手必勝!」」

 

士郎達の意思に答え、アンリミデットの右拳が敵の顔面に突き刺さる。

急造の鬼戒神は攻撃に耐え切れず吹っ飛んだ。

受身も取れず転がった鬼戒神は右腕がもげた。

 

「「あれ?」」

 

あまりにもあっけなさ過ぎて、首を傾げる2人。

 

 

 

「やった! ダーリンの攻撃が決まったわ!」

 

「決まった」

 

「きゅい〜〜〜!!」

 

2人と1匹は歓声を上げる。

 

 

 

「あまりにもあっけなさ過ぎるぞ。 罠か? シーア、周囲の警戒を強めてくれ」

 

「うん。 了解」

 

感じるプレッシャーに反して弱すぎる鬼戒神に対し、何かあると警戒を強める。

そして、その直感は正しかった。

外れた筈の腕が本体との間に霊的な糸が結びつき、瞬く間に結合する。

両腕を使って起き上がった鬼戒神は、アンリミデットに殴られた跡も消えていた。

 

「自己修復!」

 

「アイナの奴、だからガラクタで鬼戒神を造ったのか!」

 

士郎は何故、アイナが戦艦を使って鬼戒神を造った理由を理解した。

本来、鬼戒神は魔道書の『機神召喚』の術式によって組み上げられる”モノ”だ。

しかし、この鬼戒神は九郎達のデモンベインと同じく物理的に存在している。

その為、士郎達のアンリミデット違い、存在の維持に掛かる力は皆無と言っていいのだ。

アイナはその分の力を鬼戒神の回復に充てるようにしたのである。

只、時間を稼ぐ為に……。

 

「士郎、バルザイの偃月刀!」

 

「分かった!」

 

『バルザイの偃月刀!』

 

2人が叫ぶと同時に、アンリミデットの手の中に偃月刀が現れる。

 

「はぁーーー!」

 

一閃、二閃。

アンリミデットによって振るわれる偃月刀により、戦艦で作られた鬼戒神は為す統べなく切り刻まれ、あっという間に五体をバラバラにされる。

しかし、先程と同じく瞬く間に復元を完了させる。

 

「やっぱり斬撃や打撃の効果は薄いか……。 だったら、一撃でアイツを吹き飛ばさないとな」

 

「士郎!」

 

丁度その時、相手からの反撃が来た。

取り込んだ戦艦に積んであった大砲だ。

しかし、それはシーアが咄嗟に張った防御陣に防がれる。

 

「……只の大砲」

 

防御陣から伝わってくる感触から、シーアは砲弾には何の魔力付与がされていない事に気が付く。

 

「時間稼ぎが目的だな」

 

間を置かずに次々と放たれる砲弾。

その程度の攻撃でデウスマキナを倒せるはずが無いので、士郎はそう判断する。

 

「あの質量を一撃で消し飛ばすとなると……、クトゥグアを使えるか、シーア?」

 

防御陣を張りながら制御に集中できるかと言う意図を込める士郎。

 

「当然!」

 

それに対し、シーアは笑顔で答える。

 

『フングルイ ムグルウナフ クトゥグア……』

 

クトゥグアはアンリミデットの武装の中でもずば抜けて高い攻撃力を持つと同時に、制御をしくじると自滅になりかねない武装の為、気を引き締める。

 

『……ナクルタグン イア! クトゥグア!

 

アンリミデットの手の中に燃えるような真紅の大剣が現れる。

 

 

 

「士郎。 どれ位、腕を上げたのか見せて貰うわ」

 

士郎の事をじっと見つめるアイナ。

その目には純粋な期待に満ち溢れていた。

 

 

 

「行くぞ、シーア!」

 

「GO!」

 

アンリミデットは張ってある防御陣を踏み台にし、上空に跳び上がる。

大上段に構え、敵の脳天に切りかかる。

 

生きている炎(クトゥグア)

 

大剣は鬼戒神の頭部を易々と切り裂き、中央に達した所でアンリミデットは剣を止める。

 

「「昇華!」」

 

アイナが造り出した鬼戒神は巨大な光球に包まれ、士郎達が作り出した超々高温の結界の中にその姿を消した。

 

 

 

「「「………」」」

 

この一連の出来事を間近で目撃していた2人と1匹は、あまりの光景に声が出なかった。

 

 

 

「くっ、ははははは! ははははははは! アレはまさしく! 流石、士郎!」

 

狂ったような笑いがアイナのいる空間に響き渡る。

 

 

 

士郎は敵が消滅したのを確認すると、アンリミデットの術式を解く。

術式を解かれたアンリミデットは一瞬で解体され、士郎は地面に降り立つ。

 

「ふぅ〜。 シーア、お疲れ様」

 

『士郎こそ大丈夫?』

 

「ああ、少し疲れてるけど大丈夫だ。 そろそろ結界が解けるな」

 

『推定23秒後』

 

「しかし、今回は様子見だからあんなのだったけど、厄介だな」

 

『次も追い返す!』

 

何やら燃えているシーア。

 

「とっとと帰って休みたい」

 

色々と立て込んだ所為で疲れが溜まった様子の士郎。

しかし、この後には追求会が待ち受けている!

頑張れ士郎!(頑張らなくてもいいよ)

負けるな士郎!(負けてもいいよ)

きっと輝かしい未来が君を待っている!(薔薇色のね)

 

 

 

 

覇道の執務室!

 

「さて、今回はZeroの方へ初出場ですわ」

 

「流石は総帥。 まさに世界を駆けるとはこの事です」

 

「今回は士郎さんが操る【アンリミデット】についてですわ執事長」

 

「総帥【アンリミデット】は【デモンベイン】とはどの様に違うのですか?」

 

「【アンリミデット】はシーア・アジフの【機神召喚】の魔術から召喚される正真正銘の鬼戒神」

 

「成程」

 

「士郎さんはまだ発展途上の魔術師ですから、まだまだ【アンリミデット】も発展途上の機体と言ってもいいでしょう」

 

「しかし、総帥。 正真正銘の鬼戒神と言う事ですが、動力の方は如何なっているのでしょうか? アル・アジフ様の鬼戒神【アイオーン】と同じく、【アルハザード】のランプを使用しているのでしょうか?」

 

「いい質問ですわ執事長。 【アンリミデット】の動力は【アイオーン】とは違い【無限の心臓】を【銀鍵守護神機関】で制御していますわ。 その為、【アンリミデット】を動かす時の士郎さんへの負担は【デモンベイン】とほぼ変わりませんわ」

 

「総帥、動かす時はと仰いましたが……」

 

「気が付きましたか執事長。 どうしても鬼戒神を召喚する際には【銀鍵守護神機関】の力を借りる事が出来ない為、【機神召喚】の負担だけは追わなければならないのです」

 

「それはどれ位の負担になるのでしょうか?」

 

「そうですね、今の士郎さんとシーアさんの実力では1日に二度か三度が限界でしょう。 それを越すと倒れかねません」

 

「ところで総帥、衛宮様が使っていた技についてお教え下さい」

 

「クトゥグアの事ですね」

 

「はい、その通りで御座います」

 

「あれは現在の【アンリミデット】大技で【レムリア・インパクト】をクトゥグアの熱量で再現してみたものですわ。 勿論、クトゥグアを押さえながら使用しているので本家本元には威力は及びません。 まぁ、クトゥグアの完全開放が出来るようになれば必要無くなるでしょうが」

 

「つまり、衛宮様の実力が上がればあれ以上の大技が使えるようになると」

 

「その通りですわ、執事長」

 

「ご説明、有り難う御座いました。 総帥、そろそろお時間です」

 

「もう、そんな時間ですの? 名残惜しいですがまた次回に」

 

 

 

 

 

【うう、時間が中々取れない! 4月を抜ければ楽になる筈と希望を抱き、書いています。 お待ちの皆様には申し訳ありません。 執務室を追加しました】

 


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