Fate and Zero

 

第40話 「爆発…」

 

 

 

「ダーリンってば凄い! 竜騎兵を次々に倒していってるわ」

 

次々に士郎の操るゼロ戦が風竜を落としていく光景を見て、キュルケは感嘆の声を漏らす。

 

「速さが違う」

 

タバサを表面上は冷静を装いながら喋っているが、内心ではゼロ戦の凄さに驚いていた。

 

「ホント、あれって凄い物だったのね〜」

 

タルブ村で見た時はインチキの秘宝だと思っていたキュルケだったが、これほどの戦果を見せられては脱帽するしかなかった。

 

「急ぐ」

 

そう言うとタバサは落とされた竜騎兵達の事へと向かう。

 

「そうね。 ダーリンに頼まれた事をキッチリとやっちゃいましょう」

 

キュルケ達はそう言うと気を失っていたり、怪我をして満足に動けなくなった竜騎兵達の武装を解除し、拘束してゆく。

 

「あっちの方は大丈夫かしら?」

 

あらかた拘束し終えたキュルケは空を心配そうに見上げる。

 

「大丈夫」

 

「それもそうね」

 

 

 

ルイズは光る『祈祷書』のページを捲る。

其処には古代のルーン文字が書かれていた。

勉強熱心であったルイズは古代語を理解でき、書かれた文を目で追い始める。

 

序文。

これより我が知りし真理をこの書に記す。 この世の全ての物質は、小さな粒より為る。 四の系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化しせしめる呪文なり。 その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為る。

神は我に更なる力を与えられた。 四の系統が影響を与えし小さな粒は、さらに小さな粒より為る。 神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。 我が系統はさらなる小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化しせしめる呪文なり。 四にあらざれば零。 零すなわちこれ『虚無』。 我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。

 

「虚無の系統…。 やっぱり、本物の祈祷書だわ」

 

 

 

遂に始祖の祈祷書を読めたルイズ。

しかし、状況は悪化の一途を辿っていた。

ラ・ロシェールの上空に停まっていた巨大戦艦がゼロ戦を目掛けて動き出したのだ。

 

「相棒、親玉が来やがったぜ。 幾ら雑魚を落としても、アレを如何にかしなくちゃ話になんねえ」

 

「そうだな」

 

士郎は戦艦に一気に近づき、その船体を隅々まで見回す。

 

「相棒、幾ら何でも戦力が違い過ぎるぜ」

 

「分かってるけど、コレを如何にかしなくちゃならないんだろ」

 

そう言って巨大戦艦の『解析』を続けながら、敵の艦隊の砲撃を回避する。

 

「はぁ〜、やっぱり相棒は無茶苦茶だね」

 

言葉の中に何処か喜んだ感じを含ませるデルフ。

 

「ちぃ」

 

大砲が放たれる瞬間、士郎はゼロ戦を急降下させる。

熟練された砲撃の前に中々近づけないでいた。

 

 

 

後ろの座席で『始祖の祈祷書』を読み耽っているルイズに外の轟音などは聞こえず、祈祷書の文字を追うばかりであった。

 

これを読みし者は、我の行いと理想と目標を受け継ぐものなり。 またそのための力をにないしものなり。 『虚無』を扱うものは心せよ。 志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。 『虚無』は強力なり。 また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。 詠唱者は注意せよ。 時として『虚無』はその強力により命を削る。 したがって我はこの書の読み手を選ぶ。 たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。 えらばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。 されば、この書は開かれん。

 

ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ

 

以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。

初歩の初歩の初歩。 『エクスプロージョン(爆発)』

 

その後に古代語の呪文が続いていた。

ルイズはそれを読み終え、呆然と呟く。

 

「……読む為に指輪を嵌めないといけない注意書きが指輪を嵌めないと見れないなんて、ねえ、始祖ブリミル。 アンタ相当抜けてんじゃないの?」

 

もし士郎がコレを知ったら確実に思っただろう。

 

『うっかりだ』と。

 

ルイズは少し呆れていたが、ハッとなった。

 

(やっぱりこの祈祷書が読めるって事は、私は虚無の担い手。 いつも呪文を唱えて爆発していたのも、この『虚無』)

 

ルイズは記されていた呪文を頭の中で反芻する。

すると、昔から聞いていた子守唄のように懐かしさを感じる。

そして、自分のすべき事を見つけた。

 

(やれる!)

 

ルイズはゴソゴソと前に出ようと乗り出す。

 

「おい! 危ないぞルイズ。 って前が見えないから早く退け!」

 

ルイズは器用に身体をくねらせながら、機材と座席の隙間を通り、士郎の開いた足の間にチョコンと座った。

 

「ねぇ、シロウ。 アンタの言った事、正しかったみたい」

 

「何が!」

 

迫り来る砲弾や散弾の嵐を回避するのに集中している為、切迫感が感じられる声で聞き返す士郎。

 

「私、虚無の担い手だって。 シロウ、あの巨大戦艦にこのひこうきってのを近づけて。 私が何とかするから」

 

「分かった。 激しく動くから、しっかり捉まってろよ」

 

ルイズの言葉に何か感じ取った士郎は、ゼロ戦急上昇させる。

今までの情報収集で左右や下に大砲は積んであるが上空にはそれが無く、死角になっているのが分かっていた。

ルイズが風防を開け、2人に猛烈な風が当たる。

 

「シロウ! 上で暫くグルグル回って」

 

ルイズはそう言うと古代ルーンの呪文を唱え始める。

ゼロ戦が巨大戦艦の上を取り、上空を旋回し始めた時にそれはやって来た。

今までの火竜ではなく、風竜を操る竜騎兵だった。

 

 

 

風竜に乗っていたワルドはニヤリと笑みを浮かべる。

火竜が次々に落とされていると言う報告を受け、真正面からぶつかったのでは勝ち目が薄いと感じていおり、虚を付くために上空の雲に隠れていたのだ。

ゼロ戦の遥か上空からの虚を付いたアタック。

急降下する中で、桃色がかったブロンドと赤毛が見えた事で、あの『竜』を操っている人物の見当をつけるワルド。

今は義手になっている失った左腕の恨みと更に呪文に力を込める。

そして、接触の間際ワルドは取ったと思った。

が、急に出現した何かに風竜の羽が貫かれて、バランスを崩してしまう。

その隙を逃さず、ゼロ戦はワルドの風竜に狙いを付け銃弾を浴びせる。

火竜よりも鱗の薄い風竜は悲鳴を上げながら落ちていった。

 

 

 

(危なかった)

 

不意を付いた真上からの攻撃に何とか反応できた士郎であった。

 

(ギリギリ『投影』が間に合ったから良かったけど、ホントに危機一髪のタイミングだ)

 

そんな邪魔物にも気付かず、ルイズは古代ルーンの長い詠唱を続け、それを完済させた。

その瞬間、ルイズはその己の呪文の威力を正しく理解した。

全てを巻き込む、己が視界に映る全ての人を。

そして選択する。

何を壊すのかを。

 

 

 

キュルケは、タバサは、アンリエッタは、その戦場に居た兵士達は伝説の再現を見た。

トリステイン軍を劣勢に、敗北までに追い込んでいた戦艦。

その上空に光の玉が現れた。

それはまるで小型の太陽の様な光を放ち、大きさを増していった。

その光の強さが増し、その場に居た人々は目を瞑る。

そして、光が収まった後に見えた光景は、巨艦『レキシントン』号を筆頭にしたアルビオンの艦隊が炎上し、墜落していく様だった。

 

 

 

アンリエッタはその信じられない光景に呆然としていた。

静寂に静まり返った戦場。

誰もが目にした光景を信じられずにいるのであった。

そんな中、1番に我に帰ったのは枢機卿のマザリーニであった。

彼は上空を飛んでいる士郎達の乗る『ゼロ戦』見つけ、大声で叫んだ。

 

「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! 伝説のフェニックスによって!」

 

そう言ってマザリーニは巧みな話術によって兵士達の士気を奮い立たせていく。

 

「全軍突撃ッ! 王軍ッ! 我に続けッ!」

 

そしてアンリエッタの号令で軍の士気は最高潮に達した。

自分達の艦隊が急に落とされたアルビオン軍は浮き足立っており、士気を向上させたトリステイン軍に押されていく。

こうして、トリステイン軍はアルビオン軍を打ち破り、タルブでの戦はトリステインが勝利を納める事になった。

 

 

 

 

 

【何とか更新しましたが、ホントに忙しい毎日だ! 試験中だし。 漸くルイズが虚無を扱えるように為りましたから、これからオリジナルの話も入れていきますよ! 他の作品も楽しみにして下さいね!】

 


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