Fate † 無双

 

第8話

 

 

「何だか……大変な事になってますね〜」

 

結局、軍議に関しては殆ど進まず、顔見せ程度で終わり、袁紹軍から各軍へと後で通達する事になった。

士郎と朱里が共に自陣へと戻る最中、朱里が心配そうに呟いた。

 

「連合を組んだって言っても見た感じ形だけって言うしかないな……。 まぁ、見た限りじゃな……あの面子、直ぐに手を取りあって一枚岩になる訳が無いし。 個々の軍としては兎も角、全軍としての機能は今のままじゃ碌に働かないよな……。 朱里は連合軍と董卓軍、どちらに分があると思う?」

 

士郎は朱里に現在の情報の分析を聞いてみる。

 

「如何なんでしょう? そもそも董卓軍自体、謎に包まれていますから。 勝てるか勝てないかの比較は……」

 

「そうだよな……。 はぁ〜、各地に董卓軍の噂が広まってから暫くして、洛陽の情報は全く入らなくなったもんな〜」

 

士郎の言葉通り、何度か洛陽に間者を放ち情報収集を試みたのだが、その間者は誰一人も戻って来ていない。

それは他の軍でも同じであった。

恐らく放った間者は全員が捕まったのだと考えられた。

 

(其処が少し奇妙なんだよな……。 其れだけの情報規制を何で最初の段階で行わなかったんだ?)

 

現在、洛陽からの人の移動はスッカリ途絶えていた。

その為、洛陽へ行った、又は洛陽からやって来る一般の民からの情報収集さえ出来なくなっていた。

つまり、洛陽では其れほどの規制が行われていると言う事だ。

しかし、其れならば何故、大陸全土に洛陽の暴政が伝えられたのか?

いくら董卓軍が洛陽を手中に治めたとは言え、ある程度の地盤が固まる前にその様な情報が大陸全土に流れてしまえば今回の様な大連合が成立すると予想出来なかった筈が無いのだ。

まぁ、その軍が無能なら話は別なのだが、洛陽を乗っ取ったとされる董卓軍が無能な筈が無い。

 

(情報規制が間に合わなかった可能性も無きにしも非ずだけど、大陸全土に広がるまで手を打たない筈も無いし……、可能性としてはかなり低いな……)

 

そう、士郎は情報の伝達の広さと速さに引っかかりを抱いていた。

意図的に広められた噂の様で……。

 

(まぁ、此処で考えても仕方が無いか。 水関(しすいかん)に行けば何か手掛かりが手に入るだろう)

 

士郎は気持ちを切り替えると朱里と会話を再開する。

 

「その所為で董卓軍の規模が全然分からないし……」

 

「そうです。 だから正直怖いです。 この戦いがこれから先、どうなっていくのか……」

 

「そうだな……」

 

敵の軍備、兵力等の情報が何も分かっていないのだ。

戦で必須である筈の情報が何も入らない現状では優秀な軍師である朱里とは言え、策の練りようが無い。

その為、朱里が不安になるのも当然の事と言えた。

 

「兎に角……、今は情報を収集する事に専念しないと危険ですね」

 

「朱里には負担を掛けるけど其れしか無いか……。 よろしく頼むな」

 

少し心苦しそうにしながら朱里に頼む士郎。

 

「はい♪ 喜んでです♪」

 

しかし、朱里は満面の笑みを浮かべながら頷いた。

その仕草を士郎は微笑まし思い――

 

(……負けられないな)

 

決心を顕にするのであった。

 

 

 

 

 

士郎達が軍議(名目だけで殆ど何も決まらなかったが)を終えて自陣へ戻ってくると、愛紗と鈴々が真っ先に出迎えた。

 

「お帰りなさいませ」

 

「おかえりなのだ♪」

 

「ああ、ただいま、愛紗、鈴々」

 

「お疲れ様です。 ……それで軍議の方は如何なったのですか?」

 

早速、軍議の内容を聞いて来る愛紗。

彼女も現在、どの様な状態なのか一刻も早く知りたい様だ。

しかし、士郎と朱里は苦笑を浮かべながら話すしかなかった。

 

「如何って言われてもな……」

 

「特に何もありませんでした……、としか言い様がないですねぇ〜……」

 

「にゃ? 如何言う事なのだ?」

 

鈴々は疑問を抱き、士郎に聞く。

 

「簡単に言うと曹操と袁紹が軍議の最中に喧嘩になってな、公孫賛が何とか仲裁しながら軍議を進めて行ってたんだけど、袁紹が好き勝手に色々と言い出して、皆が其れに付き合いきれなくて解散って事になった」

 

「何なのだ? 訳が分からないのだ」

 

まぁ、話だけ聞いたらそう思うのは当然の事で――

 

「部署とかは後で伝令が来て知らせるって事になってるけど……、軍議じゃ殆ど何も決まらなかったって事だな」

 

普通では、その様な事になるなど思う方が普通では無いのだ。

 

「簡単に言えばそうなりますね」

 

「なっ……ふざけた事をっ! それでは戦いようが無いではないか! 諸侯達は何を考えているのだ!」

 

生真面目な愛紗は、諸侯達の纏まりの無さに怒りを顕にする。

 

「すまん、愛紗。 まぁ、愛紗の怒る気持ちは分かるけど、今は俺達で出来る事をやって行こう」

 

士郎が愛紗を宥めると、我に帰った愛紗は直ぐに頭を下げる。

 

「も、申し訳ありません」

 

「取り敢えずは董卓軍の内情を探る為に間者を放ちたいんだけど……」

 

士郎は朱里を見る。

 

「はい! 足が速くて機転の利く人を何人か選んでいます。 直ぐにでも出て貰いましょう」

 

「間者は何処に放つ?」

 

愛紗は朱里に尋ねる。

 

「水関と虎牢関ですね。 ……砦の内部に侵入するのは難しいと思いますけど、高地より遠望する事は出来るでしょうから」

 

「何か分かれば良いんだけどねー」

 

「そうだな、鈴々。 朱里、物見には決して無理をするなと厳命しておいてくれ。 警戒が厳しいだろうから無事に帰ってくる方が重要だ」

 

「はい、ご主人様! キチンと伝えておきます」

 

朱里がそう返事した直後――

 

「失礼する!」

 

キビキビとした声が響くと同時に、士郎達の居る元へ厳つい軍装に身を包んだ3人組みがやって来た。

その内の1人は士郎が先程会った曹操だ。

 

「我が主、曹孟徳が関将軍に用があって参った。 関将軍はどこか!」

 

長い黒髪の女性が辺りに良く響く声で愛紗を呼びつける。

 

「な……いきなり乱入しておいて、人を呼びつけるなど無礼であろう!」

 

先程の軍議の一件の所為で腹を立てていた愛紗は猛然と言い返す。

 

「……お前は?」

 

黒髪の女性は呼びつけておいて如何やら愛紗の顔を知らなかった様だ。

 

「我が名は関羽! 衛宮が一の家臣にして幽州の青龍刀。 貴様にお前呼ばわりされる謂われはない!」

 

完全に喧嘩腰で言い返す愛紗。

 

「貴様だとっ!? この私を愚弄するか!?」

 

愛紗の物言いに頭に来た様で、怒りを顕にする。

如何やら短気らしい。

 

「やめなさい、春蘭(しゅんらん)

 

「あ……華琳(かりん)様……」

 

春蘭と呼ばれた女性は曹操の言葉で直ぐに大人くなり、辞を低くして曹操に道を譲る。

 

「初めまして、と言うべきね、関羽。 私の名前は曹孟徳。 いずれは天下を手に入れる者よ」

 

傲慢な、しかし少女に似合う笑みを浮かべ、自信に満ち溢れた顔で名乗りを上げた。

その立ち振舞いには王者の貫禄を感じさせるものが存在した。

 

「貴女の武名は私にまで聞こえているわ。 美しい黒髪をな靡かせながら青龍偃月刀を軽々と操り、庶人を助ける義の猛将」

 

その曹操が急に士郎達の自陣へやって来て愛紗を褒め始めた。

 

「素晴らしいわね。 その武技、その武力。 そして理想に殉じるその姿。 ……美しいわ」

 

怪しく愛紗を見る曹操の瞳に尋常じゃない雰囲気を感じ取る士郎。

そして、それは愛紗も同じの様であった。

 

「美しいなどと何を軟弱な──」

 

「美しいからこそ、人は生きていて価値があるの。 ブ男は存在する価値さえ無いわ」

 

チラッと士郎を見る曹操。

明らかに挑発していると感じた士郎。

 

(何だ一体?)

 

何故あからさまな挑発をされているのか分からない士郎。

 

「で、曹操。 態々俺達の陣にやって来た用事は何なんだ? 色々と忙しいんだけど」

 

曹操の挑発を流した士郎に対し、僅かに眉を顰める曹操。

 

(……手強いわね)

 

「そう、だったら手短に言うわね。 ……関羽。 貴女、私のモノにおなりなさい」

 

「──――っ!?」

 

思ってもいなかった事に衝撃を受ける愛紗。

 

「成程、この陣に来た理由は愛紗の引き抜きか」

 

「ええ、そうよ。 関羽、私のモノになれば貴女の理想は実現出来るわ。 こんな貧乏軍ではなく、私の持つ精兵を使ってね」

 

曹操は自慢げに話す。

 

「優秀な人材、充分な精兵と潤沢な軍資金。 この3つを自由に使って貴女の理想を実現させなさい。 私のモノになるのならば、それを許しましょう」

 

確かに士郎達の軍よりも遥かに曹操達の軍の方が軍として力がある。

 

「…………」

 

「どう? 悪い取引では無いと思うけれど?」

 

曹操が答えを促す様に愛紗へ問いかける。

答えは決まっているモノとして……。

 

「ふざけるなっ!」

 

愛紗は怒声を返事として返した。

 

「……っ!?」

 

その答えが予想外だったらしく、曹操は驚きで絶句してしまう。

 

「我が主は士郎様ただ一人! 貴様に頼らずとも我が理想は御主人様と共に実現してみせる!」

 

愛紗は士郎と共に進むとハッキリと宣言する。

その答えに士郎もまた愛紗と共に理想を実現させると思いを強めた。

 

「無礼なっ! 華琳様に何たる口の利き方だ!」

 

しかし、傍に居た黒髪の女性、夏候惇は主人を侮辱されたと、再び怒気を放つ。

その強さは先程の比では無い。

 

「我が真なる想いも推し量れず、愚弄したのはそちらではないか!」

 

「聞く耳もたん! 華琳様を愚弄する貴様を許しはしないっ!」

 

そう言って背中に背負っていた大剣を抜く夏候惇。

余程、主人を慕っているのであろう。

それは先程と違い、直ぐに剣を抜いた事から窺える。

 

「ほお……やるというのか? いつでもこい! 我が豪撃を受けられるのならばっ!」

 

夏候惇が抜剣したのを見て、愛紗も青竜偃月刀を構える。

それぞれお互いの得物を付きつけ、一触即発の状態となる。

そんな2人の間に士郎が割って入った。

 

「愛紗! 止めろ! 少し、頭を冷やせ! そっちもだ! 此処は俺達の陣営だ。 そんな中に約束も取り付けずに突如入ってきて剣を抜いた。 そんな事が周囲に知れ渡れば、自分の主の曹操の名に傷が付くのが分かっているか!」

 

士郎の言葉にハッとなる夏候惇。

如何やら少しは冷静になった様だ。

 

「こんな事が周囲に知れ渡ったら全軍の士気に関わる。 それが理解できたら得物を納めろ」

 

「……申し訳ありません」

 

士郎の言葉に納得した愛紗は悔しさを押し殺しながらも矛を納める。

 

「春蘭……」

 

「は……」

 

曹操の言葉で夏候惇も渋々といった表情で剣を納めた。

 

「………」

 

如何やら最悪の事体は回避する事が出来た様だ。

しかし、当然の事ながら周囲の兵達がざわめき始めていた。

曹操はそんな兵達を一瞥し――

 

「ここは引くわ。 けれど覚えていなさい。 私は1度欲しいと思ったモノは必ず手に入れる。 例えどんな手を使ったとしても」

 

ニヤリと笑いながら更に喋る曹操。

 

「それから、私のモノになったとしても、もう優しくはして上げないわ。 ふっふ、たっぷりと可愛がってあげる」

 

艶やかな声でそう宣言した後、曹操は士郎を睨み付ける。

 

「今はお前に預けて置くわ。 だけど覚えて置きなさい。 私は何としても関羽を自分のモノにするから。 それまで、精々お仲間ごっこを楽しんで置きなさい」

 

「無理だな。 関羽は『ごっこ』じゃなくて、本当に俺達の『仲間』だ。 渡す筈が無い」

 

「ご主人様……」

 

士郎の言葉に感動する愛紗。

 

「あらそう。 けれど、そんな決意に意味は無いわ。 だって私には天が付いているんだもの。 関羽が私のモノになるのは天に決められた事。 ふふ……」

 

余裕の笑みを浮かべる曹操。

 

「天か……。 だったら愛紗が俺達の仲間から居なくなる事は無いな」

 

士郎の方も余裕の笑みを浮かべる。

 

「……そう。 春蘭、秋蘭。 もう様は済んだわ。 帰ります」

 

「はっ!」

 

「御意……」

 

来た時と同じく、さも当然と言った足取りで陣を去って行く3人であった。

 

 

 

「何だと言うのだ、あやつはっ!」

 

曹操達が居なくなり、愛紗はそれまでの怒りを爆発させるように叫ぶ。

 

「まぁまぁ、落ち着け、愛紗」

 

何とか士郎が宥めようとするが――

 

「これが落ち着いてなどいられますかっ!」

 

無理であった。

 

「アレが曹操かー。 ちっこかったねー」

 

曹操の体型を鈴々は自分の事を棚に上げて言う。

 

「でも、全身を漂う覇気は尋常じゃありませんでした。 流石、英雄と讃えられるだけある、と言った所ですね〜」

 

曹操の覇気を感じ、朱里は実直な評価を下す。

しかし、愛紗は気に入らなかった。

 

「何をのんびりと評しているのだ! ああ、もう! 私が欲しいなどと気持ちが悪い!」

 

如何やら特殊な性癖は愛紗には無いようだ。

 

「気持ちは分からないでも無いけどな。 愛紗は綺麗だもんな」

 

士郎はそう言って愛紗に微笑み掛ける。

ボンと音を立てたかの様に顔を真っ赤にする愛紗。

 

「ご、ご主人様!」

 

士郎の言葉に動揺を隠せない愛紗。

其処に鈴々が割って入る。

 

「にゃー……、お兄ちゃん、鈴々は?」

 

「鈴々は可愛いよ」

 

「にゃは〜♪」

 

満面の笑みを浮かべる鈴々。

 

「あぅ〜……」

 

朱里の方も何か言いたそうにしている。

 

「朱里も可愛いよ」

 

「……えへへ♪」

 

朱里の方もご機嫌そうに笑みを浮かべる。

 

「おっ! 何だか楽しそうにやってんなー」

 

そんな中、底抜けに明るい声と共に、初めて見る少女が姿を現した。

 

「お主は誰だ? 如何して我が軍の陣地に居る?」

 

先程の事もあり、やや警戒する愛紗。

 

「愛紗。 さっきの今だから仕方が無いけど、そう言った態度になるな」

 

そんな愛紗に対し、優しく声を掛ける士郎。

 

「うっ……、すいません」

 

「?? 何かあったのか?」

 

少女は先程の件を知らない様子なので、曹操の関係者では無いようだ。

 

「何でも無いのだ! それよりお前、誰だー?」

 

鈴々が目の前の少女に問い掛ける。

 

「あたしか? あたしは馬超(ばちょう)ってんだ。 宜しく」

 

「鈴々は張飛なのだ! 宜しくなのだ!」

 

馬超の挨拶に鈴々も挨拶を返す。

 

「馬超? 馬超って言えば……」

 

(関羽達と同じく、晩年の劉備に仕えた猛将の1人だったよな……。 って事はこの子も俺達の仲間になる可能性が有るのか?)

 

「確か西涼(せいりょう)の領主、馬騰(ばとう)さんの娘さんに同じ名前の人が居た様な記憶があります」

 

すかさず答える朱里。

 

「そりゃあたしの事だ。 馬騰はあたしの父親さ」

 

「ほぉ、では貴女があの名高き錦馬超(きんばちょう)か」

 

馬超の名を聞き、愛紗は感嘆の声を上げる。

 

「貴女なんて言い方止めてくれ。 何だか体中が痒くなってくる。 馬超って呼んでくれよ」

 

「分かった。 ならそう呼ばせて貰おう。 私は関羽。 そして――」

 

「私は諸葛亮。 字は孔明です。 宜しくです♪」

 

「宜しくな♪」

 

「俺は衛宮士郎だ。 宜しくな、馬超」

 

「おぉーっ! アンタが天の御使いって奴か!」

 

「まぁ、そうなってるよ」

 

馬超はマジマジと士郎を見る。

 

「そっか。 アンタ、強そうだな」

 

馬超は士郎の身体を見て、大凡の力量を見当付ける。

 

「そうでも無いさ」

 

(あの人達に全然追いついていないし。 未だ自分の『書』を持って無いような半人前だ)

 

「そうなのか?」

 

士郎の物言いに疑問を浮かべる馬超に対し、愛紗が武勇伝を語り始める。

 

「そんな事は無い! ご主人様は素手で賊の3人をあっという間に打ち倒す程の武技を持ち、弓の腕前は大陸随一と言っても過言では無い」

 

「そうなのだ! お兄ちゃんの弓の腕前は凄いのだ!」

 

「そうですね。 それに、ご主人様は人の上に立つ者としての強さを持っています」

 

愛紗の言葉を鈴々と朱里が支持する。

 

「まぁ、身内贔屓があるだろうから話半分に受け取っておいてくれ」

 

苦笑を浮かべざるをえない士郎であった。

 

「成程ね〜。 あながち噂も間違いじゃ無いって事かな」

 

「勿論だとも! この方は我々のご主人様なのだからな!」

 

「はぁ〜、愛紗、それ位にして置いてくれ」

 

「あれぇ? 照れてんの?」

 

意地の悪そうな笑みを浮かべながら士郎に尋ねる馬超。

 

「あー……もう知らん」

 

「あははっ! ウソウソ! ウソだって!」

 

士郎の機嫌を察した馬超は前言を撤回する言葉を言うが――

 

「爆笑しながら言われてもな……。 信じろって言うのは普通は無理だぞ」

 

「そりゃそうか。 でもホント、別にからかって言ってる訳じゃないからさ」

 

「じゃあ、どんな心算なんだ?」

 

士郎の言葉に少し考えて馬超は口を開く。

 

「そうだな〜。 なんつーか……良い感じの主従で羨ましいなぁーって」

 

「そっか。 それはそうと、馬超は何で俺達の陣営に来たんだ?」

 

士郎は他の3人がスッカリ忘れてしまった疑問を聞く。

 

「ん? ああ、何か袁紹から伝令が来てさ、配置換えを全軍に伝えろってさ。 それを言いに来たんだ」

 

「配置換え? もう攻撃開始か?」

 

未だ董卓軍の情報は集まって居ない筈だ。

 

「そうみたいだな。 多分、関羽達は後曲に回されると思うぞ。 見た感じ兵隊も少なそうだし」

 

「むぅ。 我が軍の兵は皆、一騎当千の猛者ばかりであるものを……」

 

悔しそうに呟く愛紗。

 

「まぁ、この人数じゃ前曲に回されるのは避けるべきだろうな」

 

「後曲には後曲の戦いの方法がありますから。 愛紗さんに鈴々ちゃんが居れば、我が軍は大活躍間違い無しです♪」

 

「任せるのだ! そんで、馬超は何処に配置されてるのだ?」

 

鈴々が馬超に問い掛ける。

 

「あたし、と言うかあたしの父上は左翼に配置される事になったから、あたしもそっちだな」

 

「そっか。 一緒に戦えなくて残念なのだー」

 

そう言って肩を落とす鈴々。

 

「そうだな。 どうせなら武勇名高き関羽と張飛、それに天の御使い様と一緒に戦いたかったけど……。 ま、後曲からあたしの戦い振りを見といてくれよ」

 

明るく言い放つ馬超に愛紗が声を掛ける。

 

「ああ。 無事で居ろよ?」

 

「当然! こんなとこで死んでたまるかよ。 じゃあ、また後でな」

 

「ああ。 無事を祈ってる」

 

馬超は振り返らず、手を振って士郎に答えた。

 

「ありがとよ」

 

馬超を見送った後、士郎は3人に声を掛ける。

 

「さて、コッチも準備に取り掛かるぞ!」

 

「はい!」

「分かりました!」

「了解なのだ!」

 

愛紗と鈴々は各部隊に指示を出し、戦闘準備を整える。

その途中、朱里が機転を利かせ、連合軍の武器を大量に仕入れてきた(無断拝借とも言う)。

それを部隊に分け与え、少しだけとは言え武装の強化を果たす。

 

 

 

「秋蘭」

 

「何でしょうか、華琳様?」

 

自陣に戻った曹操は夏候淵(かこうえん)を呼ぶ。

 

「貴女があの天の御使いと言う男を見た感想を言って?」

 

何も喋らず、第三者的な立場で居させた夏候淵に、士郎を見て感じた事を言わせる曹操。

 

「武将として可也の力量を持っているのはまず間違いありません。 それは姉者と関羽が言い争っていた時でさえ、2人に意識を向けながらも此方の動向を注意していた事からも窺えます。そして、私が探りを入れているのも感づいている様子でした」

 

一旦、言葉を区切る夏候淵。

 

「其れだけならば普通の武将等と変わらないのでしょう。 しかしながら、何処か表現し辛い何かが僅かながら感じ取れました。 ……正直、得体が知れないとしか言い様がありません」

 

「そう、分かったわ。 貴女も戦の準備をして頂戴」

 

「御意」

 

夏候惇は曹操に頭を下げると戦の準備へと向かった。

 

(確か……衛宮。 『衛宮 士郎』だったわね。 ふふ、秋蘭も感じたと言う事は間違いじゃ無さそうね)

 

曹操の顔には先程、愛紗を誘った時と同じ笑みが浮かべられていた。

 

「面白くなりそうね……」

 

 

 

 

 

【ああ! 恋姫無双の一般ゲーム化決定しましたね! ホントはもっと速くこの話題を喋りたかったのに色々と忙しい所為で……。 うう、結構書いたのに話の方が余り進んで居ない……。 今回、色々と波乱の予感が! 次回は水関攻めだ! お楽しみに♪】

 


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