Fate † 無双
第9話
「前曲は魏と呉の軍勢がお取りなさい。 左翼は涼州連合が。 右翼は伯珪さん。 本陣として後曲に袁家の軍勢と、貧乏で戦力としての価値が低い衛宮軍を配置しますわ」
洛陽を目指すのに避けては通れない水関を落とす為、袁紹は本陣にて各軍への指示を伝令兵達に伝える。
「まずは前曲を前へ。 それに続いて右翼、左翼ともに前進しなさい。 圧倒的な兵数を持って水関を威圧しますわ!」
伝令兵達は袁紹の言葉を一語一句、記憶する。
「さぁ! 水関を突破しますわよ!」
袁紹の命令を速やかに伝える為、伝令兵達は一気に各陣営の元へと走り出した。
そして、連合軍は行軍を開始し、いよいよ連合軍VS董卓軍の戦いの火蓋が切って落とされる。
士郎達は袁紹からの伝令が伝えられると、後曲として袁紹軍の本陣の近くを行軍していた。
暫くすると、峡谷の途中に行軍を邪魔す為に高々と築かれた石垣の壁が見え始めた。
「あれが水関か」
聳え立つ要塞を見て、ポツリと呟く士郎。
「そうです。 あれこそが王都洛陽を防衛する為に造られた要塞です」
大軍で王都へ行く為にはこの峡谷を進むしか無く、そこに築かれた強固な要塞が水関であった。
「要害である水関を正面から攻めるのは、愚策中の愚策だと思うのですが……」
要塞は攻め入る敵の進行を食い止める為に築かれるのだから、愛紗の意見は至極当然だった。
まぁ、子供でも分かるような事なのだが。
しかし、現在の連合軍の総大将である袁紹は愚策中の愚策である正面突破を伝えてきたのだ。
「愛紗さんの言う通りだと思います。 けど……袁紹さんが策を弄するようにも思えませんから、おそらく全軍が整列し次第、突撃の命令が出されると思います」
「正面突破だと例え勝っても被害が大きくなるな。 此方は遠征軍だから物資の補給にも制限がるし、水関の次には虎牢関を攻めないといけないから余り損害は出せないってのに。 朱里、敵は篭城してくる可能性が高いと思うか?」
「はい、ご主人様の言う通りで、連合軍の最大の弱点は補給がですから、敵軍が水関に篭城してくる可能性は高いです。 攻略に時間を掛け過ぎると次の虎牢関の攻略に支障が出てくるのは目に見えてますから」
「うーん……袁紹はバカなのだ」
鈴々にも馬鹿呼ばわりされる袁紹であった。
「身も蓋も無いな、鈴々」
「ホントの事なのだ」
士郎が窘めたのだが、続く鈴々の言葉に誰も反論できなかった。
「……まぁ、総大将の命令だから従わないといけないんだよなぁ〜」
正直従いたく無い命令だと顔に出ていた。
「さすがに怠業するわけにもいきませんからね」
「しかし、無策のまま突撃などしようものなら、被害がどれほどになるか……」
「全くです。 私達は後曲に配置されていますから、まだマシだとは思うのですけど……」
1人の伝令が士郎達の元へ走ってやって来た。
「伝令です!」
「応っ! その場で報告せよ!」
愛紗の言葉に兵士は直立し、報告を始める。
「はっ! 敵軍を率いる将が判明しました! 将軍は華雄! 副官は李粛、胡軫、趙岑の三名!」
「ご苦労。 後方に下がって暫し休め」
愛紗は急いでやって来た兵士を労う。
「はっ!」
「朱里、敵の将軍の特徴は?」
「はい。 華雄将軍は武技に優れた豪傑で、好戦的な武将です」
朱里から華雄の特徴を聞き、少し考え込む士郎。
「……朱里、その好戦的な武将が水関で篭城する可能性はどれ位だ?」
「そうですね。 華雄将軍が噂通りの人物なら水関にずっと篭っている可能性は低いです」
「じゃあ、奇襲を掛けて来る可能性は」
士郎の言葉にハッとなる朱里。
「! 十分にありえます」
「愛紗、後方を警戒していてくれ」
「分かりました。 ご主人様」
士郎の命を受け、愛紗は直ぐに後方の警戒を強めるように指示を出す。
愛紗の指示が衛宮軍に行き亘って暫くした時、銅鑼の音が響き渡る。
士郎達の元に兵がやって来る。
「董卓軍の伏兵が我が軍の後方より現れました。 旗より敵将は華雄将軍です!」
「分かった」
愛紗は息を吸い込み、辺りに響く大声を出す。
「全軍反転! 我が軍はこれより突撃してくる敵を迎撃する!」
「「「応っ!」」」
兵士達も愛紗の声に応え、大声を上げ辺りの空気を響かせる。
「わぁ〜。 お兄ちゃんの言った通りになったのだ」
「まぁ、予想出来て良かったよ」
「そうですね。 不意を討たれれば如何しても兵は混乱しますから、前以て奇襲の可能性を考慮できたのは大きいです」
朱里の言った通り、兵士達は予め奇襲の可能性を教えられていたので、奇襲による混乱が最小限に押さえられていた。
「それではご主人様、行って参ります」
「行って来るのだ。 お兄ちゃん」
「2人と無茶はするなよ。 華雄の軍も奇襲が失敗したとなれば撤退する筈だ」
「そうです。 今は袁紹軍も混乱していますが暫くしたら立て直す筈です」
華雄は一万八千の軍を引き連れてきているが、これだけでは袁紹達の全軍とまともに張り合うには少ない。
ゆえに士郎は奇襲による混乱に乗じて袁紹の首を取り、連合軍を混乱させるのが華雄の目的だと推測し、その推測は見事に当たっていた。
「分かりました」
「分かったのだ。 そんなに心配しなくても大丈夫なのだ」
2人は士郎の気遣いに心嬉しく思いながら兵を率いて前線に出る。
「全軍! 我に続け!」
「皆! 迎撃開始なのだっ!」
「「「応っ〜〜〜!」」」
「駄目です! 華雄将軍! 衛宮軍の抵抗が激しく、突破出来ません」
「高が寄せ集めの軍に何故梃子摺る!」
華雄は奇襲が上手くいったと袁紹軍に突撃するように命令していた。
その間に一軍が割り込んできたが五千ばかりの兵だった為、力尽くで突破出来るだろうと陣形も定めずに突撃したのだ。
そんな力押しの戦法に衛宮軍は黄巾党との戦いの慣れきっていたのと、奇襲による混乱が皆無の為、適切に華雄達の軍に対処する事が出来た。
これがきちんとした陣形を組んでの攻撃だったのならば華雄の兵も正規兵で三倍以上の戦力差が有るのだから、衛宮軍ももっと危機に陥っただろう。
「華雄将軍! 袁紹軍が反転! 此方に向かってきます!」
兵士の1人が慌てて華雄に袁紹軍が立て直したのを告げる。
「ちぃ! 押し切れなかったか。 ……全軍転進! 水関に戻るぞ!」
思わぬ伏兵に、自分の策が上手くいかなかったのを歯噛みしながら、華雄は残った兵士達に撤退を宣言する。
「衛宮軍か、覚えていろ!」
「逃がさんっ!」
今まさに撤退しようとしていた華雄に愛紗の一撃が襲い掛かる。
「なっ!」
それを華雄は咄嗟に防御し、辺りに鈍い金属音が響く。
「はぁ!」
愛紗は更に力を込め、強引に青竜刀を振り払う。
「ぬっ!」
華雄は吹き飛ばされながらも体勢を立て直し、綺麗に着地する。
華雄は自分を吹き飛ばした人物を睨み付ける。
「その青竜刀。 お前が噂の関羽とやらか」
「いかにも」
「姉者ーーーーっ!」
そこに鈴々が駆けつける。
「その矛は……。 張飛」
「そうなのだ!」
「華雄将軍よ、尋常に私と立ち合え!」
華雄は一対一ならば負ける気など無いが二対一の構図では自分の不利が明白なのを理解していた。
「ふん。 いくら名が高まっているとは言え、寡兵の将を討って何になる。 ……疾く退くぞ!」
「待て!」
そう言って駆けだそうとする華雄に、それを追おうとする愛紗。
「!」
しかし、駆けだそうとする華雄の足元に矢が突き刺さり、足を止めてしまう。
「お兄ちゃん!」
「悪いがアンタを逃がすわけにはいかない」
何時の間に現れたのか、弓を番えた士郎が華雄を狙って立っていた。
「何者だっ!」
華雄は突如現れた士郎を睨み付ける。
「啄県の太守を務めている衛宮と言えば分かるかな」
「ふん。 大将、自らのお出ましとわな」
「それはそっちも同じだろう。 さて、大人しく縄に付いて欲しいんだけど」
「その様な事、断じて断る!」
華雄は更に強く殺気を込めて士郎を睨み付け、士郎に襲い掛かるが。
「させん!」
愛紗の青竜偃月刀が華雄の突進して来る戦斧を払い。
「させないのだ!」
鈴々の振るう蛇矛が華雄の身体に叩きこまれる。
「ぐはっ!」
無防備な状態で鈴々の一撃をまともに喰らった華雄は意識を繋ぐ事が出来なかった。
こうして意識を失った華雄は捕らえられ、その報告が水関にいる董卓軍の兵士達に伝わり、兵士達の士気ががた落ちした。
兵士達の士気が落ち込んだのと、指揮する将の不在で水関の攻略は被害が出たものの、それから暫くして士郎達の元に水関攻略の報が届けられた。
【今回のFate†無双が遅くなってすいません。 2月中に出す予定でしたが少しずれました。 文量も過去最低です。(はぁ〜〜〜) 次回は軍議から虎牢関、それに呂布までいけたら!と思っていますが……(いけるか?ゲーム化も気になってるのに) それでは読んでくれている皆さんに感謝を】
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