Fate / open the demonbane

 

第27話 「反転…」

 

 

 

士郎が女性陣から嫉妬からくる制裁から開放されて、ようやく会議が行われていた。

士郎は墓前であったナイアの事について皆に話した。

 

「………ふぅ〜ん。 あの顔無しが出てきたんだ……。 ちょっと厄介だね」

 

エンネアはナイアの事をよく知っている為に、それが以下に危険な事か熟知していた。

 

「ねえ士郎。 なんでそいつが邪神だって分かったの?」

 

普通に考えれば現代で邪神などに会うことなど在り得る筈が無いので、イリヤの疑問は尤もだった。

その問いに士郎は少し言いにくそうにしながらも口を開いた。

 

「まぁ、俺らは魔術師(マギウス)としてその眷属とかと戦ってるからな。 それにソイツは俺の師匠の仇敵なんだよ」

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ士郎! 外宇宙の邪神ですって! 何よ、それ! って言うか、アンタ達魔術師(マギウス)だったの!?」

 

余りの事を説明された為、凛はかなり驚いていた。

 

「うん、そうだよ。 と言っても、士郎は魔術師(マギウス)魔術師(メイガス)の兼任なんだけどね」

 

そう言ってエンネアは置いてあった紅茶に口をつける。

 

「へぇ? そ、それこそ何よ! そんなのあり得るわけ無いじゃない!」

 

「事実だよ。 全く、そんな些細な事でいちいち動揺しないでよね。 妹を見習ったら?」

 

エンネアは凛とは対照的に大人しい桜を指差す。

 

「えっ〜と、私の場合は驚きすぎて声が出てないだけなんですけど……」

 

おずおずと声を出す桜だが、その声は凛には届いていない。

 

「何ですって……」

 

場の雰囲気が歪もうとしたその時、士郎はエンネアと凛の間に割って入った。

 

「おい、落ち着けって。 エンネアもあんまりからかうな」

 

「……分かったわ」

 

「了解」

 

士郎の仲裁により2人の衝突は避けられた。

 

「ところで士郎、その邪神とやらの対策は有るのですか?」

 

「そうね、そんな『モノ』如何する心算、シロウ?」

 

バゼットとカレンが最もな質問をしてくる。

 

「いや、邪神って言っても今のアイツはかなり力が制限されてるから、大体セイバー達より少し上って位の力しか無いから倒すのはそれ程、難しい事じゃないぞ。 それよりも厄介なのはアイツと柳洞寺で出会った『影』が何らかの関わりが在るって事だ」

 

「そうだね。 顔無しの奴は直接手を出さないのを信条としてる節があるからね。 襲ってきたって言う『影』を利用しているって見るのが妥当だね」

 

士郎とエンネアはナイアに対する疑問点を挙げていく。

 

「……まあ、当面はあの『アーチャー』ともう1人のサーヴァントの発見に力を入れるしかないな。 アイツもそれを乗り越えないと現れないだろうし」

 

「そうですね……、妥当な案でしょう」

 

バゼットの肯定の言葉に皆は頷く。

 

「ところでさ士郎」

 

凛が何かを聞きたそうに、士郎に話しかける。

 

「ん? 何だ凛」

 

「士郎やエンネアが魔術師(マギウス)だってのはさっきの説明で分かったんだけど、『書』は何?」

 

「………普通そんな事聞くか?」

 

魔術師が自分の手の内を晒す事は普通しないものである。

 

「別に良いじゃない」

 

少し拗ねた様に呟く凛。

 

「はぁ〜〜〜、俺の『書』はつい最近書かれたばかりのだから世間じゃ全然知られて無い奴だぞ」

 

観念したように差し支えの無い事を士郎は喋る。

 

「エンネアの『無名祭祀書』のオリジナルだよ。 まあ、世界に6冊しかないって話だけど、他のが何冊残ってるかな?」

 

さらりと自分の『書』について喋るエンネア。

何も考えていないのか、知られてもたいして変わらないからなのか、おそらく後者だろう。

 

(士郎の最近書かれたって言う『書』は兎も角、エンネアの『書』は売ったら幾ら位になるかしら?)

 

何やら不穏な考えをする凛。

 

「あは♪ 凛、余計な事考えない方が良いよ」

 

凛の邪な思惑を感じ取ったのか、エンネアがスゴイ笑顔で凛に釘を刺す。

それを見た凛は、物凄い勢いで首を縦に振る。

 

「シロウ。 そろそろ夕食にしませんか?」

 

話が終わった頃合を見計らって、セイバーは士郎に夕食の催促をする。

 

「ああ、もうこんな時間か……。 急いで準備する。 桜にエンネア、手伝ってくれ」

 

「はい、先輩」

 

「分かったよ、士郎」

 

士郎が立ち上がるのに続いて桜とエンネアも立ち上がり、厨房へ行く。

 

 

 

 

 

それから2時間後、地獄が出現した。

 

事の始まりは夕食を待っていた居間からだった。

待っている間、暇だからとランサーが何処から仕入れてきたのか大量の酒を出し、その酒を他の連中にも分けた事が過ちだったのだが、この時点ではそれに気が付く者はいない。

始めはランサーのみだったのだが、1人で飲むのは味気なかったらしく、近くに居たアーチャーやバゼットを誘う。

2人はその誘いに乗りランサーと酌み交わす。

そこに、カレンがやって来て面白そうと半ば脅迫交じりに酒宴に参加する。

この時点では、少し五月蝿いが問題になるほどではなかったが、その後がいけなかった。

ランサー達の酒宴を面白そうに見ていたイリヤは自分も参加すると言い出したのだ。

ランサーも面白そうだと言ってそれを拒否しなった。

すると今まで静観していた者達も、その酒宴に付き合わされることになり、宴会ムードになった。

そこに夕食を作り終えた士郎達がやって来たのだが、そこで見たものはすっかり出来上がっている酔っ払い達であった。

その酔っ払い達に士郎達も強制的に酒宴に参加させられる事となるのだが……。

 

 

 

それから1時間が経過し、宴会ムードも最高に達していたその時、事件は起こった。

泥酔している程では無かったが、流石に強い酒を飲みっぱなしのランサーは立ち上がる際に少しふらついてしまう。

そこにアーチャーの肩が当たってしまい、テーブルに倒れこんでしまう。

その際、士郎の作った料理が倒れたランサーの下敷きになってしまった。

 

その変化に一番最初に反応したのはエンネアだった。

酔いの回ったイリヤ達が、面白がってウォッカを一気飲みにさせられて酔いつぶれていた士郎だったが、ある異変を起こしていた。

その士郎の異変を見た途端にその場から直ぐに離脱する。

隣に居た桜とイリヤは何事かと首を傾げる。

後になり、2人はこの時その場から離れていれば良かったと心底後悔する羽目となる。

 

次に士郎の変化に気が付いたのは凛だった。

凛はまず自分の目を疑った。

なぜなら赤髪である筈の士郎の髪が黒髪に見えたからである。

 

「やねー。 士郎の髪が黒く見えるなんて、結構、酔っちゃったみたいね」

 

その凛の言葉に、カレンが過剰な反応を見せる。

 

「何ですって!?」

 

その時、士郎の声が低く、重く、そして静かに響き渡った。

 

「お前ら、全員そこに座れ」

 

只の言葉の筈なのに、そこに含まれる強制力に従い、全員が座ってしまう。

 

「ああ♪ 黒士郎の降臨ですね。 私達は如何なるのでしょう♪」

 

言葉とは裏腹に何故か楽しそうなカレン。

 

「く、黒士郎って何よ」

 

今の士郎の状態の事を何か知っているらしいカレンに、凛は問い質そうとするのだが、邪魔が入る。

 

「そこ、何を喋ってる。 私語は禁止だ」

 

「YES!」

 

「さて、貴様ら……。 この世には連帯責任というものがあるのを知ってるか?」

 

黒士郎は、凄まじい笑みを浮かべながら辺りを見回した。

そして、全員がその笑みの凄まじさに思考を停止させてしまった。

 

 

 

 

 

覇道の執務室!

 

「ふう、ようやく本編での出番がやって来ましたね、執事長」

 

「その様でございます。 総帥」

 

「せて、これから不定期で登場するになりそうなこの執務室ですが、何をする予定なのかしら? 執事長」

 

「はい、総帥。 このコーナーは、某道場を参考にし、創られはしたのですが内容はBAD ENDではなく、作者の気まぐれで現れるようです」

 

「そう、では今回の内容は何かしら?」

 

「今回の内容は『黒士郎』についてだそうです」

 

「そう、分かりましたわ。 この『黒士郎』は分かると思いますが『士郎』が反転した姿です。 理不尽にあがらう為に作り出された人格ですわ。 普段は滅多な事では反転しないのですが、今回はお酒のせいで反転条件が緩んでいたようですね」

 

「ええ、元々彼が最初に姿を現したのは総帥との宴会が最初でした。(まあ、その為に作り出された人格ですから当然ですが) まさに彼は勇者でした。 あの状態の総帥すらも打ち倒すのですから! しかし、後に待ち構えていたのは彼による暴政でしたが……(五十歩百歩でしたね)」

 

「ふぅ〜兎も角、私達の間では彼を反転させるのはタブーとされています。 そして、それがあるからこそ、あの連中も必要以上に騒ぎを起こさなくなりましたし、彼が組織においてストッパーの役割をしているのです」

 

「それでは短い間でしたがお付き合いいただき有難う御座いました」

 

「執事長。 早く書類を終わらせて、次もこのコーナーを開きますよ!」

 

「かしこまりました。 総帥」

 

 

 

 

 

異世界でそんなやり取りがされている最中にも、黒士郎による『指導』と言う名の暴政がその場にいる全員に襲い掛かっていた。

次の日、その場に居た『ある1名』を除く全員が、士郎を反転させないように心から誓うのであった。

 

 

 

 

 

【士郎がなぜノーデンスのストッパー役になっているのか、その一端が明かされました! 次回はある事件が起こります。 内容は見てのお楽しみです】