Fate / open the demonbane

 

第26話 「災難…」

 

 

 

士郎達3人は、とても困っていた。

それは、セイバーの服装であった。

 

「ねえ、セイバー。 アナタ、サーヴァントのクセに霊体化も出来ないの?」

 

セイバーは正規の英霊とは少々違う存在の為、霊体化が出来ないのだ。

イリヤはその事を知らなかったらしい。

士郎はその事を知ってはいたが、緊急事態のためにセイバーを完全武装の状態で呼び出してしまっていた。

 

「おい、イリヤ。 あんまりセイバーを責めるな」

 

イリヤをなだめる士郎。

 

「セイバー。 また、鎧の部分だけ実体化を解いてくれないか。 変わった服装だから結構注目を浴びると思うけど、鎧で街中を歩くよりはマシだからな」

 

「そうですね……」

 

バーサーカー戦の帰りの時と同じく、セイバーは鎧の実体化だけを解き、ドレス姿になる。

 

 

 

裏山を通り過ぎ、商店街に差し掛かった3人。

やはりと言うべきか、周囲の人から注目の的になっていた。

ドレス姿のセイバーにイリヤ。

この2人はかなりの美少女だ、この状況でこうならない筈が無かった。

 

(やっぱり、目立ってるな……)

 

イリヤは、あちらこちの店をキョロキョロと見回している。

セイバーはというと、気にしていない風にドンドン歩いていっている。

 

(知り合いに見つかる前にさっさと帰ろう!)

 

そう士郎が思った矢先、ある3人組が声を掛けてきた。

 

「あれ……? 衛宮君」

 

ほのぼのとした普通人、三枝 由紀香。

 

「お! ホントだ、衛宮じゃん!」

 

自称・冬木の黒豹こと、薪寺 楓。

 

「ふむ。 衛宮ではないか」

 

古風な喋り方をする、氷室 鐘。

 

(厄介な奴らに!)

 

由紀香は無害であるが、他の2人は何を非常に厄介であった。

楓は持ち前の無茶苦茶な理論で場を乱す。

そして、鐘は鋭い観察眼と、結構ずれる事のある推理力で色々と厄介ごとに突っ込んでくる。

 

「お、おう、三枝さんに氷室さんに蒔寺」

 

「あ、あたしだけ呼び捨てー!?」

 

1人だけ、呼び捨てにされた事に憤る楓。

 

「いや、さん付けするなって言ったのは薪寺だろ」

 

以前、楓をさん付けで読んでみたことがあったのだが、あまりに違和感がありすぎて、さん付けはしないということになった出来事があった。

 

「あ! そう言えば、そうだったな」

 

「ヤレヤレ、蒔の字。 自分で言い出した事を忘れているとは……」

 

肩をすくめる鐘。

 

「う、うっさいな! 別に少し忘れてたぐらい良いじゃんかよ!」

 

そんな鐘に抗議する楓を無視し、鐘は士郎に話しかける。

 

「この人達とはどう言った関係なんだ、衛宮? なにやら、学校の方で騒ぎになっていた事と関係があるのか?」

 

中々の突込みである。

そんな中、イリヤは1人前に出て、スカートの裾を優雅に上げて、一礼をする。

先程までの活発な少女のイメージとは違い、令嬢のイメージがピッタリであった。

 

「始めまして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと申します。 兄の御学友とお見受けしますが、どうぞよろしくお願いします」

 

ポカンとする由紀香と楓だったが、鐘は返事を返す。

 

「これはこれはご丁寧に。 私は氷室 鐘と言います。 しかし、衛宮の妹さんですか……」

 

鐘の言葉には何処と無く不穏そうな感じが混ざる。

 

「ええ、そうよ。 士郎は養子だから血は繋がってないんだけどね」

 

そんな事は気にせず、イリヤは何時もの言葉遣いに戻る。

 

「悪い、氷室! 急いでるんで、他の2人もじゃあな」

 

そう言うと、士郎はイリヤを抱きかかえ、脱兎の如く走り去っていった。

セイバーもそれに続く。

 

 

 

「ああ、行っちゃった」

 

士郎の後姿を見て、由紀香がポツリと言葉をこぼす。

 

「ふむ、残念だったな由紀香。 もう1人の女性について聞けなくて」

 

「え、ええ!」

 

驚きの声を上げる由紀香。

 

「まったく、衛宮のくせに生意気だぞ! 由紀っち、マッグに行くよ! やけ食いだ!」

 

「え、ええ!」

 

「気があうな、蒔寺。 付き合おう」

 

「ええ〜〜〜〜〜!?」

 

そんな2人に引きずられて行く由紀香。

夜に体重計に乗ったとき、なにやら落ち込んだとか、落ち込んでいないとか……。

 

 

 

「ふー、ただいま」

 

色々とあったが、ようやく士郎は家に帰り着くことが出来た。

ようやく、安息の時が訪れると思った矢先、そこには修羅が居た!

 

「お帰りなさい、先輩。 少し、遅かったですね」

 

「あら、遅かったのね士郎」

 

「………何をしていたんですか?」

 

「駄犬。 いつまで道草をくっているつもりですか?」

 

桜、凛、バゼット、カレン。

4人の背後からなにやら黒いものが見える。

 

「な、なんだ、皆して?」

 

なにやら4人が怒っているのは分かるが、その理由の見当の付かない士郎。

 

「先輩、こっちに来てください。 あ、イリヤさんには後で……」

 

桜がにっこりと笑うが目が怖い。

士郎とイリヤは物凄い寒気に襲われていた。

 

士郎が反転しようとするが――

 

「フィーシュ!」

 

それよりも早く、カレンが持つマグダラの聖骸布が士郎を捕らえる。

 

「さあ、士郎。 あちらの方でゆっくりとお話をしましょう。 誰が主人かを理解させる為に……」

 

「そうですね、カレン。 アナタも偶には良い事を言う」

 

2人とも、暗い笑顔を浮かべる。

 

「バゼット、偶には余計です」

 

 

 

士郎は引きずられながら、桜が指差した部屋に連れて行かれた。

そんな主人の危機だったが、周りの雰囲気に呑まれセイバーは動けずに居た。

一方、イリヤはその恐ろしさに、立ったまま気絶していた……。

 

それから1時間、部屋で何があったのか、士郎は決して語ろうとはしなかった。

 

 

 

 

 

【色々と実生活が忙しかったんですが、何とか更新しました! PS2版のFateもようやく発売となりました。 無双の方も今月中には更新する予定なので、お待ち下さい。 次回はナイアの事についての作戦会議が始まります。 その時、彼女はどう動くのか!? それでは次回のお楽しみに】