Fate / open the demonbane

 

第24話 「厄日…」

 

 

 

士郎・一成・綾子の3人は、何故か生徒会室で昼食を取っていた。

 

「なあ、一成。 さっきの授業の時、葛木先生が何故か休みで自習だったんだけどさ、今朝言ってた事と何か関係があるのか?」

 

綾子は葛木の代わりに他の先生が自習の監督に来た事を思い出しながら、事情を知っているであろう一成に聞いてきた。

一成は腕を組んで少し考えた後、綾子の質問に答える。

 

「………宗一、いや葛木先生も昨日の晩に色々あったらしくてな、ここ暫らくの記憶が曖昧になっているらしい。 頭を強く打っているかも知れないと言う事で、病院に精密検査を受けに行っている。 婚約者の事は完全に覚えていないらしく、目の前で攫われたショックで記憶が混乱している可能性も否定できん。 早く彼女が見つかれば何か思い出す切欠になるかもしれん」

 

声を搾り出す様に喋る一成を見て、彼が相当今回の件に関して心を痛めているのが2人には伝わってきた。

 

(スマン! 一成)

(あの先生がね……、一成の奴随分と参ってるね……)

 

士郎は事情を知っている為、心の中で一成に謝り、綾子は目の前の生真面目な友人の事を心配していた。

 

「そうか……。 一成、こっちの方でも気にしとく」 

 

「そうだね。 何か手がかりが見つかったら連絡するよ」

 

「すまん。 恩にきる」

 

一成は2人に対し頭を下げる。

 

「チョット、頭を上げな」

 

「そうだぞ、一成。 頭を下げられる様な事じゃない、友人として当然の事だろ」

 

頭を下げる一成に対し、2人は顔を上げるように言う。

 

「う、うむ」

 

一成は顔を上げて、苦笑を浮かべる。

その時、予鈴が鳴り響く。

 

「もうかんな時間か……。 衛宮、そろそろ教室に戻るぞ」

 

「そうだな」

 

3人は昼食の片付けを終えると、自分達の教室へと戻って行った。

 

 

 

「それじゃあ、これで終わりね〜」

 

大河はそう言ってホームルームを終わらせ、一番先にニコニコ顔で出て行った。

 

「ふ〜……、やっと終わったか」

 

今日1日、肉体的疲労ではなく、精神的に疲労した士郎であった。

 

「おい、衛宮ー。 これから遊びに行こうぜー」

 

士郎は声が聞こえた方に振り向く。

 

「慎二か、悪い。 ここ暫らくは色々と予定が入ってて、遊びに行けそうも無い」

 

士郎は軽く頭を下げると、帰る準備を始める。

 

「おい、そんな事言わずに行こうぜ。 お前も合コンの頭数に入れてるんだからさ」

 

士郎の断りを余所に、慎二は説得しようとする。

 

「合コン?」

 

「たわけ! ダメに決まっておるだろう!」

 

そんな中、今日1日沈黙を保っていた一成が割り込んできた。

 

「なんだよ、柳洞。 俺は衛宮と話してるんだぜ、部外者は黙ってろよ」

 

割り込んできた一成を睨みつける慎二。

負けじと一成も睨み返す。

 

「何を言う、友人が悪友から悪の道に誘われているのを黙って見過ごすわけにはいかん! それに衛宮は先程用事があると言ったではないか、それを無視するなど許せるわけが無かろう」

 

喋る様子は今朝とは違い、完全復活を果たした一成。

 

「はん、さっきまで沈んでいた生徒会長様とは思えないお言葉だね。 友人同士の会話に割り込んでくるなよな、まったく。 それに、衛宮も最後まで聞けば行く気になるさ。 そう言う訳だから、さっさと帰れよ」

 

慎二と一成の言い合いがドンドン激化していく。

まだ、教室に残っていた生徒達はそれを面白そうに眺めていて、士郎は頭を抱えた。

 

「おい、2人共」

 

罵り合いになってきたので、士郎が2人を止めに入ろうとした時、教室の前のドアが勢いよく開いた。

そして、士郎が知っていてここに居る筈のない人物が現れた。

 

「あ! おに〜ちゃ〜ん! み〜つけた〜!」

 

イリヤがそう言いながら、士郎に向かって飛びついて来た。

 

「な!」

 

士郎は避ける訳にもいかず、イリヤを抱き止める。

その光景を見ていた教室の全員が驚いた。

 

「「「「「お兄ちゃん?!」」」」」

 

ど、どう言う事だ! え、衛宮! せ、説明しろ!

 

お、おい、こんな可愛い子どこで捕まえたんだよ?! 犯罪を犯したのかよ?!

 

間近で見ていた一成と慎二の2人の驚きぶりは他の連中の比ではなかった。

 

「イ、イリヤ! 何で学校に来てるんだよ?!」

 

「え〜、シロウに早く会いたかったんだもん……」

 

行き成りな事に動転している士郎に対し、イリヤは可愛らしく頬を膨らませる。

そんな士郎の肩を一成と慎二がつかみ、自分達の方に顔を振り向かせる。

 

「「だから、説明しろ!」」

 

「あ〜、悪い。 明日話す!」

 

士郎はそう言うと、イリヤを抱き直すと一気に駆け出した。

 

「「「「「に、逃げた!」」」」」

 

あっという間の事で、士郎以外は全く反応が出来なかった。

 

 

 

「ああ〜〜〜もう、今日は厄日だー!!」

 

イリヤを抱きかかえながら、士郎は学校を走り去った。

イリヤは士郎にお姫様抱っこをされ、頬を赤く染めていた。

一般生徒がそれを見てどう思うかは、人それぞれ。

士郎が自分がどんなに恥ずかしい事を人前で気が付くのは何時か……?

 

 

 

 

 

【厄日の士郎! 彼の不運はまだまだ続く? 次回は……お楽しみに】