Fate / open the demonbane

 

第22話 「推理…」

 

 

 

正門の前にたたずむ、凛たちは爆発的に増殖した影を見る。

 

「もう! いったいなんなのよ」

 

ガンドを影に撃ちながら、凛が苛立ちの声を上げる。

 

「さあな? それより他の連中が来たようだぞ、リン」

 

アーチャーの瞳には自分たちの方向に走ってくる士郎たちが映る。

そして、喋りながらも、次々に影を切り裂いていくアーチャー。

 

「逃げるぞ、凛!」

 

走りながら凛に忠告する士郎。

 

「ち、ちょっと! 説明しなさいよ」

 

追い抜いていった士郎に、抗議する凛。

 

「説明は後だ!」

 

「そのようだな」

 

士郎の後方に雪崩れのように押し押せてくる影が目に入る。

アーチャーは凛を素早く抱きかかえると、一目散に走り出す。

 

「ち、ちょっと! 何してんのよ、アーチャー!」

 

いきなり抱きかかえられた凛は、アーチャーに文句を言う。

 

「後ろを見たまえ」

 

その言葉に凛は後方を見る。

 

「な!」

 

「わかったか、リン」

 

「分かったけど、下ろしなさい!」

 

アーチャーに抱きかかえられているのが凛は恥ずかしいらしい。

 

「却下だ。 こちらの方が速い」

 

そのまま正門をくぐり抜ける。

そして、全員が外に出ると影は消え、追ってこなかった。

 

 

 

石段の下で、一息つく士郎たち。

 

「ふ〜、ひとまずは安心って言ったところか」

 

「そうですね、シロウ」

 

「士郎、本堂で何があったの? それになんで葛木先生がいる訳?」

 

この場にいる全員の思いを代弁する凛。

 

「一度家に戻ってから話そう、俺も状況を全部把握しているわけじゃないからな」

 

「そうですね、シロウ」

 

「……、わかったわ」

 

士郎たちの言葉に頷く凛。

 

「そうと決まればさっさと帰るぞ」

 

ランサーの言葉に全員が同意する。

一同は重い足取りで、家へと帰る。

 

 

 

「先輩! お帰りなさい!」

 

帰り着いた士郎を待っていたのは、桜の出迎えだった。

 

「桜、すまないが開いている部屋に布団を敷いてもらえるか?」

 

「あ、はい」

 

士郎が肩に葛木を担いでいるのに気がついた桜は、士郎の言われた通りに布団を敷きに行く。

今だ気絶している葛木を布団に寝かしつけると、士郎は皆の待つ居間へと向かう。

 

 

「早速だけど士郎、あの本堂で何があったの?」

 

士郎が居間に入ると真剣な顔をして、いきなり本題に切り込んでくる凛。

 

「ああ、俺とセイバーが本堂に入った時に、気絶していた葛木先生とキャスターがあの影に囲まれていてな、それを助けたんだがそのすぐ後に黄金の鎧を纏ったサーヴァントが現れたんだ」

 

「最後のサーヴァントですか?」

 

バゼットが問う。

 

「イヤ、アイツの言葉を聴いている限りじゃ、どうも前回のサーヴァントらしい」

 

「何ですって!」

 

「ちょっとリン、落ち着きなさいよ」

 

凛が立ち上がり大声を上げ、それをイリヤがたしなめる。

 

「う……、でも10年も経っているのにまだ現界してる……、待ってサーヴァントを召喚するのに聖杯が必要なだけで、それを維持するのに聖杯の補助が絶対に必要する訳じゃないんだから、多少不自由になるけど魔力供給がマスターから十分にあるなら可能性は……

 

反論を口にしようとした凛は途中で考え事をブツブツと呟き始める。

 

「続けるぞ。 そいつの攻撃をしのいで暫らく話したらそいつが居なくなって、そして一息付いた所にまたあの影が現れて葛木先生を庇ったキャスターがその影に飲み込まれて消えた。 その後は知っての通り、大量の影が溢れ出したって訳だ」

 

「……その謎のサーヴァント、あの影と何か関係があるのかしら?」

 

「まあ、十中八九関係ありだろうな。 そうじゃなきゃアイツが居る時には影が出なかった事に説明が付かない」

 

皆が沈黙する中、イリヤがセイバーに声をかける。

 

「そういえばセイバー、アナタそのサーヴァントと前回対峙したことがあるの?」

 

「……ええ、ありますよ」

 

苦い顔になるセイバー。

 

「だったら、そのサーヴァントの真名は分からない?」

 

「いえ、彼とは幾度か対峙したのですが真名を知ることは出来ませんでした」

 

そこに凛が割って入る。

 

「セイバー、そいつ宝具を一度も使わなかったの?」

 

真名がまったく分からないとなれば、相手は一度も宝具を使用していない筈と思う凛。

 

「いえ、逆なのです。 士郎は見たから分かっていると思いますが、彼は一度に数十の大量の宝具を使ったりするので、多すぎて判別が付かなかったのです」

 

「チョット何よそれ! そんなに多くの宝具を使う英雄なんか聞いたことがないわよ?」

 

「ええ、それは私も分かっているのですが、彼が放つのは真名こそは唱えていませんが確かに宝具で、それこそ古今東西の剣や槍、斧などの様々な物があり、私もキリツグも彼の真名を特定が出来なかったのです」

 

「……それ程の大量の宝具を使用するとなると厄介ですね」

 

バゼットが皆の思っている事を言葉にして呟く。

 

「アイツの真名なら大体の見当は付いているぞ」

 

それを士郎の一言が皆の沈黙をあっけなく壊す。

 

「それは本当ですかシロウ!」

 

セイバーは自分達が見当も付かなかったサーヴァントの正体が分かると思い身を乗り出す。

 

「ああ、まずあいつが使ったのは俺達が知ってる宝具であって宝具じゃない」

 

「どう言う事ですか?」

 

「アレは俺達の知っている宝具の原典になった物だ」

 

「何でそんな事分かるのよ?」

 

凛は最もな疑問をぶつける。

 

「それは、俺が『解析』したら、あの宝具には担い手の情報が無かったからだ。 そんな原典である武器を全て所有していると言う事は、その原典が他の英雄達が持つ前に居た人物って事だが、そうなると随分昔の英雄になる。 そんな中で条件に当てはまる英雄は、メソポタミアの英雄王、この世の全ての財を手に入れたとされているギルガメッシュ位だろう」

 

「さすが士郎だね。 だてに探偵助手をしてないよ。 まったく、九郎もこれ位とまでは言わないけど、もう少し推理する頭を身につけないから、助手に負けてる探偵だなって言われるんだから……

 

「さすがです、シロウ」

 

エンネアとセイバーが見事な推理を披露した士郎を褒める。

 

「もしそうなら、そいつ殆どのサーヴァントの天敵じゃない」

 

「そうだな、俺やそっちのバーサーカーに対しては対神宝具を使ったり、相手によって有利な武器を用意できるからな」

 

「そうなると、マスターを叩いたほうが効率的ですね」

 

「そうなんだが、前回呼び出した奴が現在もマスターを続けているとは限らないしな」

 

「だったら、教会に連絡して綺礼の奴に調べて貰っておくわ。 監督役なんだから、役に立ってもらわなくちゃ」

 

さらに話を進めようとした時に、隣の部屋で葛木を見ていた桜から声がかかる。

 

「先輩! 葛木先生が目を覚ましました」

 

 

 

 

 

【お楽しみにしてくださった皆様、半年以上お待たせしてすいません。 次は2月中には出す予定にしています。 Zero共々お楽しみ下さい】