Fate / open the demonbane

 

第21話 「撤退…」

 

 

 

突然目の前に現れた、赤い瞳を持つ黄金の鎧を着た騎士。

 

「さて、久しいなセイバー。 覚えているか、我が下した決定を」

 

親しげに目の前の騎士は喋る。

セイバーはその問いに答えず、黄金の騎士を睨みつける。

その迫力は、今までの戦闘のさいの比ではなかった。

 

「なんだその顔は、今だ覚悟ができていないというのか? アレから十年だぞ。 既に心を決めてもよい頃だが……、ああ、もっともそれは我だけの話なのか。 お前にとってはつい先日の話であった。 ……まったく、男を待たせるとはたわけた女だ」

 

愉快そうに目の前の騎士は笑う。

そのセイバーを見下す笑い方に、士郎は怒りを覚える。

 

「何故貴方が現界しているのですか! アーチャー!」

 

目の前に現れた黄金の騎士に、驚きの声を上げるセイバー。

 

「アイツのことを知っているのか、セイバー?」

 

士郎の問いに、こくんと頷くセイバー。

 

「ええ、彼は前回の聖杯戦争でアーチャーとして参加していました。 戦闘を行ったことはありますが、真名を特定することは出来ませんでした」

 

そんなやり取りを無視するかのように、アーチャーは話しかけてくる。

 

「何故も何もなかろう。 聖杯は我の物だ。 自らの持ち物を取りに来て何が悪い」

 

「ふざけた事を、貴方はそのような英雄ではない。 いや、そもそも」

 

「やめておけ。その先を口にしては、戦わざる得なくなるぞ騎士王よ。 ……いや、もとよりその心算であったが、興が削がれた。 再開を祝すにしては、此処はみすぼらしすぎるからな」

 

そう言って、アーチャーと呼ばれた男は士郎たちを歯牙にもかけず後ろを向く。

 

「いずれ会うぞセイバー。 あの時から我の決定は変わらぬ。 次に出向くまでに、心を決めておくがいい」 

 

男の姿が闇に消える。

そうすると辺りに張り詰めていた緊張は一気に解ける。

 

「ふ〜」

 

張り詰めていた緊張が解けたためか、自然とため息がもれる。

 

「大丈夫ですか? シロウ」

 

「ああ、問題ないよセイバー」

 

「そうですか」

 

その答えにホッとした様子のセイバー。

そして後ろの2人に、意識を向ける。

 

「何があったのか教えてくれるか、キャスター?」

 

「ええ『ドス』」

 

キャスターの胸を一つの影が貫く。

そのまま影はキャスターに絡みつき、キャスターを拘束する。

 

「な!」

 

あの騎士がこの場からいなくなった事で気を抜いてしまい、気配を察するのが遅れてしまう2人。

キャスターは、その影から脱出しようと試みるが、さらに影がキャスターを襲う。

キャスターを助けようとするが、下手をするとキャスターごと倒してしまう危険性があった。

 

「わ、私の、こ、事より、そ、宗一郎様を」

 

そういい残し、キャスターは影に飲まれ、姿を消した。

 

「離れるぞ、セイバー!」

 

素早く、目の前で気絶している葛木先生を肩に抱きかかえると、この場を脱出しようとする。

 

「はい」

 

セイバーも状況をいち早く理解し、この場から脱出する。

 

(くそ、アイツがいなくなった事で気を抜いた!)

 

本堂を素早く脱出すると、それを追いかけるかのように影が迫ってくる。

 

(このままじゃ追いつかれるな)

 

表には出さないが、士郎は焦っていた。

 

(冷静になれ、感情を理性で制御しろ)

 

士郎はそう自分に言い聞かせ、現在の状況を冷静に判断する。

 

(片手で使える武器で、こいつ等を一掃できる物は……)

 

瞬時に判断し、セイバーに呼びかける。

 

「セイバー! 少しでいい! こいつらの足止めを頼む!」

 

それは問いでありながら、セイバーなら出来るという確信に満ちていた。

 

「了解です。 シロウ!」

 

対するセイバーも出来るという自信に満ちた表情をする。

 

士郎の目の前に影が伸びるが、それを士郎は避けようとしない。

ザン。

そんな音と共に、影は切り捨てられる。

セイバーの斬撃が、士郎を守った。

 

投影開始(トレース・オン)

 

セイバーが影と対峙している隙をつき、士郎は精神を集中させる。

思い浮かべる剣は、士郎の師である、九郎の愛剣と呼べるもの。

 

『バルザイの偃月刀(えんげつとう)

 

ウルタールの賢者の名を冠する、剣にして杖。

その偃月刀を士郎は作り出す。

 

「セイバー! 伏せろ!」

 

セイバーに呼びかけると同時に、士郎は右手に持った偃月刀をブーメランのように投げる。

セイバーは士郎の声に従い、スグにその場に伏せると、その上を偃月刀が風切り音と共に通過する。

偃月刀は持ち主の意思に従い、影をものともせずに切り倒していく。

 

敵を一掃した偃月刀は士郎の方に戻ってくる。

それを士郎は右手で掴む。

 

「急いで皆と合流するぞ、セイバー」

 

「はい」

 

コクンと頷くセイバー。

 

2人は他の4人と合流するために再び走り出した。

 

 

 

 

 

【こんな展開になってきました。 キャスターファンの方々、スイマセン。 これでキャスターは暫らく登場しません……? ところでご質問です。 バルザイの偃月刀のランクはどれ位にしたら良いでしょうか? 私的にはBかC+辺りがいいと思いますが、アレはビルを簡単に切り裂くような物ですし、もっと上になるんでしょうか? ご意見を伺い決定したいと思います。 それと27日から1週年企画が有りますので、ぜひお楽しみ下さい】