Fate / open the demonbane

 

第20話 「影…」

 

 

 

本堂に向かって走っていると、後ろの方から派手な音が響いた。

 

「派手にやっているな、凛たち」

 

「そうですね。 士郎、私たちも急ぎましょう」

 

先に進もうとしたとたんに、セイバーから制止の声がかかる。

 

「シロウ! 止まってください!」

 

目の前には、無数の影が出現していた。

 

「これはまた、ずいぶんと歓迎されてるな」

 

ランサーは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「ここは、俺らが引き受ける。 お前たちはさっさと先に進め!」

 

「ランサーの言うとおりです。 士郎、貴方達は先に進んでこの状況を打破して下さい」

 

そう言うと、バゼットも戦闘態勢に入る。

 

「分かった、くれぐれも無理はするなよ」

 

俺は2人をおいて先に進む。

 

「行くぞセイバー。 さっさとこの事態を収めたい」

 

「はい!」

 

投影開始(トレース・オン)

 

金剛杵(ヴァジュラ)

 

投影した宝具を、目の前の敵に放つ。

 

開放されし幻想(オープン・ザ・ファンタズム)

 

それにより、真名を唱えられた宝具は敵の中心で炸裂して、目の前を阻んでいた影を一掃した。

開いた道を、俺とセイバーは進む。

 

 

 

「なんというか……、相変わらずですね、士郎は」

 

「おいおい、バゼット。 ぼさっとしていないで、次が来たぞ」

 

ランサーの瞳は、新たに出現した影を見ている。

 

「いささか厄介ですね。 しかし、この程度で私たちを如何こう出来るはずがありませんが」

 

「まあ、そりゃそうだ」

 

ランサーは影を槍でなぎ払う。

 

「刺突よりは、こっちの方が効率がいいな」

 

「ランサー! 離れなさい」

 

ランサーの死角を突いて、迫る影が見える。

そして、真横からの一撃が、ランサーに迫る。

その一撃を、ランサーは後ろに飛ぶことによって難なく回避する。

 

「はっ! あんなトロくさいのに俺が捕まるかよ」

 

「きりがないですね……」

 

倒しても、倒しても現れる影。

いったい誰が操っているのだろうか?

敵の数がわからない以上、無闇に宝具を使うことができない。

 

「おらー!」

 

ランサーは槍でなぎ払い、影を倒しているが、新たに出現する影のほうが多い。

 

「ランサー! どきなさい!」

 

私の言葉と同時に、その場を飛びのくランサー。

そこに、士郎から貰ったルーン石を投げつける。

そして、その場にいた数十の影たちが炎に包まれる。

 

(アンザス)でこの威力ですか……」

 

轟々と燃え盛る炎を見つめながら呟く。

 

「おうおう、すげえな」

 

ランサーの言うとおりだ、本来なら(アンザス)はこれほどの威力を持った炎ではない。

 

正門近くで、また大きな爆発が起きる。

 

「ランサー! こちらも負けてはいられません。 気を引き締めなさい」

 

「了解だ、マスター」

 

 

 

 

「ここか!」

 

俺とセイバーは、影の包囲網を抜けて、本堂に乗り込んだ。

そこには、一人横倒れている男と、その男を守るように影に立ちはだかっている女性がいた。

 

「あら、セイバーのマスター。 見ての通り今は取り込み中よ」

 

軽口を叩きながら、襲い来る影に光弾を浴びせる。

 

「キャスターか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「いったいどうなっている?」

 

「さあ? 私が知りたいくらいだわ」

 

こちらの問いかけに、本当に知らなさそうに肩をすくめるキャスター。

 

「そうか……。 !後ろだ、キャスター!」

 

キャスターの後ろに影が出現して、男に絡みつく。

アレではキャスターは攻撃できないはずだ。

 

「宗一郎様から離れなさい!」

 

(暗闇で顔がわからなかったけど、葛城先生なのか!)

 

キャスターは一本の短刀を取り出すと、それを葛城先生に絡みついた影に突き刺す。

 

破壊すべき全ての符(ルール・ブレイカー)

 

短刀に突き刺された影は、跡形もなく消え去る。

 

(おいおい、魔術を強制キャンセルさせる宝具だと! かなり厄介な代物だ)

 

「ひとまず礼を言うわ、セイバーのマスター」

 

「い」

 

キャスターに返答しようとしたその時、本堂のさらに奥の闇から多数の剣や槍が飛来する。

 

「「な!」」

「シロウ!」

 

すぐさまセイバーが何本かの剣を叩き落し、俺はすぐに後ろに飛びのく。

キャスターは葛城先生を連れて転移したらしく、俺たちの横にいたが、咄嗟に転移したためか、キャスターは肩で息をしている。

 

「ふむ、雑種。 我が攻撃したのだ、潔く死ね」

 

剣達が飛んできた方から、黄金の騎士が現れた。

 

 

 

 

 

【ついに、あの方の登場です! これからキャスター達との関係はどうなる? 士郎達はこの場をどう切り抜けるか! 乞うご期待】