Fate / open the demonbane
第19話 「突入…」
俺たちは、柳洞寺の階段をのぼり、もうすぐ、正門に差し掛かる。
「皆、気をつけろよ」
全員が頷く。
そうして、俺たちは正門をくぐり、柳洞寺に乗り込んだ。
「何これ!」
中に入ると、凛の声が響いた。
「ふむ、これはまたかなり溜め込んだな」
アーチャーの指摘通り、柳洞寺の中にはかなりの魔力が充満していた。
「シロウ? どうかしましたか?」
セイバーが心配そうに俺に尋ねる。
「いや、マスターとサーヴァントが3組で来たのにも関わらず、殆ど素通りで通してまだ何も仕掛けてこないのが少し不思議に思った」
「そうですね。 このような芸当ができるなら、自分の陣地に入られるまでに、何かしらの防護策を張り巡らせているはずです」
バゼットも同じことを思っていたようだ。
「考えすぎじゃない2人共? これだけ戦力が充実しているから、下手に手を出さずに逃げたのかもよ?」
「リン、それは短絡的思考と言うものだ」
「なにがよ! アーチャー」
凛の剣幕にも全く堪えず、アーチャーは皮肉げな笑みを浮かべる。
「いいかね、リン。 もし、逃げたとするのならば、ここに蓄えてある莫大な魔力をそのままにしている訳がないだろう」
「あ!」
凛は口に手を当てて、しまったと言う顔を作る。
「そ、それじゃあ、アンタはどうだと思ってるのよ」
凛はアーチャーに、食って掛かる。
「ふむ、断定はできないが、この場合考えられるのは3つ。 1つ目はこの状況が敵の罠である場合。 2つ目はすでに倒されてしまっていた場合。 3つ目は想定外の事が起きて、こちらを対処する余裕がない場合だ」
そうアーチャーが言ったとき、それは現れた。
全員が、いきなり現れたその気配に臨戦態勢を取る。
「なんだありゃ?」
そこに、黒い影が出現した。
「胸糞悪いな」
ランサーはその影に向かい悪態をつく。
「なんですか?」
セイバーも影が何だか分かっていない様子だが、それでも臨戦態勢を解かない。
「ふむ、君たちはアレが何なのか知らないのか? まあ、アレはどちらかと言うと、我々守護者側処理するものだからな、星側に近い君たちが知らないのも無理はない」
「アーチャー。 アンタ、アレが何なのか知っているの?」
「まあな、だとするとおそらくキャスターもこれに狙われているはずだ。 これは我々にとっては天敵に近い存在だからな」
本堂の方に、気配が感じられる。
「ちぃ、セイバー本堂の方だ!」
そう言って、俺は本堂の方に走り出す。
「はい!」
セイバーも後を続く。
「ふむ、ここは私とリンで食い止める。 君たちは小僧を追え。 それとアレには触れると無事にはすまん。 気をつけたまえ」
「そうか。 そっちこそ、しくじるんじゃねえぞ」
ランサーとバゼットも後を追ってくる。
「ふむ、行ったか」
「アーチャー。 アンタね」
勝手に行動を決めたためか、リンが小言を言ってくる。
「リン、小言は後だ。 まずはこいつ等を退治することに専念した方がいい」
「ええ、そうね。 いくわよ、アーチャー」
「了解だ。 マスター」
無尽蔵に出てくる影に目掛けて、リンは宝石を掲げて魔術を放つ。
「Es laBt frei. Eilesalve----!」
小僧から渡された宝石から黄金の光が放たれる。
その威力は凄まじく、目の前の影を全て薙ぎ払っていた。
「す、凄いわね、コレ」
宝石をマジマジと見つめながらそう呟くリン。
それもそうだろう、なにせ辺り一面が何も無くなってしまったのだから。
「やりすぎだ、リン。 君はもう少し周りの状況と言うものを考えてだな」
しかし、薙ぎ払ったはずの影は、再び出現した。
「ふ〜、リン。 それの使用は極力控えてくれ。 いつ壊れるかも分からないのだろう? それにマスターの攻撃に巻き込まれたとあってはたまらん」
「うっ〜! わかったわよ、アーチャー」
「では、私の方も」
弓と矢を瞬時に投影し、それを影にめがけて放つ。
しかし、影は矢が刺さったことなど気にしないかのように、活動を続ける。
だが、それを気にせず矢を他の影にも放ち続ける。
「ちょっとアーチャー効いていないじゃない!」
それを見た、凛がヒステリーを起こす。
「壊れし幻想」
そのスペルを合図に、投影された矢は一斉に爆発する。
「これでいいか? マスター」
皮肉げな笑みを浮かべながら凛の方に顔を向ける。
一瞬きょとんとした顔をするが、凛は表情を引き締めなおす。
「ええ、次行くわよ。 アーチャー」
そう言って、凛の瞳は新たに出現した影に向けられた。
【次回、本堂の方に向かった士郎達の行方は?】