Fate / open the demonbane
第18話 「写真…」
「先輩たち、行ってしまいましたね」
桜がため息をつく。
現在、バーサーカーとライダーは外に出て、警戒中なので部屋にいるのは、桜とイリヤにカレンとエンネアを含める4人だけだ。
「そうね」
「まあ、あのメンバーなら早々に遅れをとることはないでしょう」
イリヤとカレンが紅茶を飲みながら呟く。
「まあ、そうだね」
「ところでエンネアさん」
「エンネアでいいよ、桜」
「じゃあ、エンネア。 義兄さんの大十字 九郎さんですか? その人の事、教えてもらいませんか?」
興味津々な態度の桜に、しっかりと聞き耳を立てているイリヤ。
「ん〜〜〜、九郎の事?」
「はい」
「一言で言うと、お人よしの正義の味方」
「お人よしの正義の味方ですか?」
「ふ〜ん、どんな風に?」
「ただ、理不尽だっていう理由だけで戦うんだよ、ホント九郎はお人よし」
机の上においてある、士郎の手作りのプリンを一口食べる。
(うん94点、腕を上げたね、士郎)
「そうなんですか」
「それと、周りからは、かなりロリコン呼ばわりされたりもしているね」
「ロ、ロリコンですか?」
桜は冷や汗をかきながら尋ねてくる。
「うん!」
「そうなんだ」
なにごともないような口調だったが、イリヤの紅茶を飲む手も微かに震えている。
「まあ、ホントの所は違うんだけど」
「そうなんですか。 そうですよね、先輩の師匠なんですから」
ほっと息をつく桜。
そこに、沈黙していたカレンが言葉を挟む。
「彼の場合、単純に守備範囲が広いので、その中に見かけはイリヤスフィール位の少女も入っているというだけです」
その言葉に、桜とイリヤの2人は固まる。
「そうだね、見かけは10歳ぐらいから年上のお姉さんにも手を出したりしているしね」
そう言って、紅茶を飲む。
「九郎は自然と人を惹きつけるし、士郎と違って恋愛にそれほど鈍感じゃないからね。 結構もてるんだよ」
「まあ、否定はしません」
いち早く再起動した、桜が話題を変えようと別の話題をふってきた。
「ところで、九郎さんの写真なんかは無いんですか?」
「ん〜、エンネアは持ってきてない」
「それなら私が、駄犬もとい士郎から、うばったのではなく貰った写真がありますが、見ますか?」
「は、はい」
そう言うと、カレンは自分のトランクから、1枚の写真を取り出した。
「どんな人なんでしょうか」
「私も見る」
桜とイリヤは、カレンから手渡された写真を見たとたんに固まった。
「エ、エンネア。 九郎って男性だよね……」
写真を見ながら、イリヤが恐る恐る聞いてくる。
「当たり前じゃん、九郎は男だよ」
「ま、負けました」
「う、うそ」
愕然となる2人から、写真を取って見るとそこには、九郎の女装した姿が映っていた。
フリルのドレスに身を包んで化粧をほどこした、九郎は控えめに言っても、ものすごい美人の女性に見える。
というか、この写真がまだ存在しているって、九郎が知ったらどうなるだろう?
「カレン、相変わらず悪趣味だね。 九郎の女装姿を見たら大抵の女性は自身を失うよ」
「しかし、女装姿の写真しか、私は彼の写真を持っていませんから」
相変わらずというか、なんというか……。
「お〜い、2人とも戻って来い〜」
「「はっ!」」
「気がついた?」
「こ、これホントに男性なんですか?」
「うん、その写真を始めてみた人は、大抵そういうね」
「なんと言うか、すごいわね」
震える声で喋る、桜とイリヤ。
「ん〜、他に聞きたいことある?」
「ねえ、エンネア。 シロウから聞いたんだけど、エンネアは上級幹部の1人なんだって?」
「そうだよ」
別に知られても困らないので、イリヤの話を肯定する。
「それに、もう1つ。 シロウの実力でも、幹部の中じゃ大体中間ぐらいって聞いたんだけど本当?」
「え?」
桜の顔に、驚きの表情が浮かぶ。
「ふ〜ん、士郎そんな事、言ったんだ」
「そうよ」
「まあ、間違っていないんじゃないかな。 士郎自身の戦闘能力なら」
「そ、そうなんですか?」
「まあ、あそこの連中があまりにも非常識すぎるだけでしょうけど」
「カレンの言うことも否定できないけど、士郎もまだ修行中だしね。 まだまだ伸びる余地はあるよ」
(でも、本気になった士郎なら、かなりの所まで行くだろうけどね)
「へくしゅん」
「シロウ、大丈夫ですか?」
俺を心配そうに見る、セイバー。
「ああ、大丈夫だセイバー。 大方、家で俺の話をしているんだろう」
「馬鹿ね、士郎。 いまどきそんな漫画みたいなことあるわけ無いじゃない」
凛が突っ込んでくる。
「いえ、彼女たちが家にいるなら、高確率で、士郎の話をしていると思いますが?」
「う! まあ、そうかもね」
冗談で言ったつもりだったんだが、ありえそうな話だった。
「さて、おしゃべりはそれ位にしておきたまえ、凛。 もう、私たちの接近に気付かれているはずだ」
アーチャーの一言が、ここにいる全員の気を引き締めなおす。
俺たちは、柳洞寺の正門に続く、階段の前まで来ていた。
「そうね」
俺は、階段の上にある柳洞寺を見つめていた。
【次回、セイバーたちが柳洞寺に突入!】