Fate / open the demonbane

 

第15話 「騒動…」

 

 

 

ココにはいない筈の人物が、俺の目の前に居る。

 

「何故ココにいるんだ、カレン?」

 

俺は目の前の、修道服を着たシスターを見据えた。

 

カレンは、くすんだ金色の瞳でこちらのほうを見据える。

 

「いえ、貴方に会いに来たのですが? 迷惑でしたか?」

 

「いや、そういうことを言っているんじゃないんだが」

 

そこに、バゼットが割って入ってきた。

 

「そうです、貴女は仮にもシスターでしょう。 教会のほうに寝泊りすればいいでしょうが!」

 

「あら、久しぶりねバゼット。 貴女がこっちにきているとは思わなかったわ(まさか『暴君』が来ているなんて予想外だったわ)」

 

「しらじらしい、どうせ貴女の事ですから一通りの下調べはしているはずです」

 

「ええ、一応の調査はしましたが、それがどうかしましたか?」

 

「いったい、何が目的なのですか!」

 

「簡単なことです。 今回の聖杯戦争の監督役である言峰 綺礼の監視。 それと同時に衛宮 士郎の監視とヘッドハンティングを、第一司祭経由で命令されました」

 

さらりと重大なことを言う、カレン。

しかし、あの人俺の勧誘まだあきらめて居なかったんだ。

は〜〜〜、いい加減しつこいよな。

俺も『アイツ』もいい迷惑だよ。

 

 

「「「なんですって!」」」

 

「ちょっと、アンタ。 要するに教会からの回し者って事」

 

凛がカレンに食って掛かる。

 

「ええ、まことに遺憾ながら、そう認識してもらってもかまいません」

 

「で、でも監督役の監視もあるなら、教会に泊まったほうが良いんじゃないですか?」

 

そう、桜がカレンに提案する。

 

「いえ、彼には教会から、不審に思われているところが多々ありますので、直接監視するのは危険なのです。 直接の戦闘力は代行者であった彼には遠く及ばないでしょう。 その点、士郎はよほどの事がない限り自分から敵対することがありません」

 

「ふ〜ん、はっきりものを言うのね。 でも士郎は私のよ」

 

おいおい、いつからだ、イリヤ。

 

「かまいませんよ。 (恋に)多少の障害はつきものですから」

 

「士郎はうちのメンバーだよ。 それにエンネアがいるから移るわけ無いじゃん」

 

「しかし士郎は『カレ』の後継者候補の1人でもあります。 それに士郎自身の戦闘力、技術力もあの人としてはどうしても確保しておきたいのでしょう」

 

「ふ〜ん、あの性悪司祭だったら考えそうなことか。 まあ、面白いからこれはこれでいいか」

 

この状況を楽しまないでくれ、エンネア。

 

「ああもう、埒が明かないわ。 士郎たちとは知り合いみたいだけど、私たちは貴女の事を知らないから、自己紹介位してくれないかしら」

 

俺とバゼット、それにエンネアを除く面々が、うんうんと頷く。

 

「そうですね。 しばらく同じ屋根の下で顔を合わせるのですから、それ位はいいでしょう」

 

立ち上がり、カレンは自己紹介を開始する。

 

「カレン・オルテンシア。 教会所属のエクソシストです」

 

カレンの自己紹介は短かった。

 

「そ、それだけ?」

 

「ええ、十分でしょう」

 

「んなわけあるか! なんか士郎とも結構仲のいい知り合いみたいだったし、そこんとこ詳しく話しなさい!」

 

「調べ通りの性格ですね、遠坂 凛。 私がそのような事を話す義務はありません」

 

そういってカレンは、凛の耳元に近寄る。

 

(それとも、好きな人の周りの交友関係を把握したいのですか?)

 

「な!」

 

いきなり、大声を上げる凛。

 

「少しは声を小さくしてください」

 

何事もなかったかのように、座ってお茶を飲んでいるカレン。

 

「あんた、知り合いのいやな奴にそっくりだわ」

 

「そうですか。 まあ、誰とは聞きませんが。ところで士郎、先ほどの提案はどうするのですか?」

 

カレンが、俺にいきなり話題をふる。

その所為で、皆思い出したように俺に詰め寄ってきた。

 

「もちろん士郎は、私と一緒に寝るんだよね」

 

イリヤが、俺の左腕に抱きつきながらそう言う。

 

「エンネアとだもんね」

 

エンネアも張り合うように俺の右腕に抱きついてくる。

 

「シロウ、そんなことは認められません!」

「そうです、先輩!」

「そうよ!」

 

セイバーたちが、イリヤたちを引き剥がす。

 

「では、私と一緒ということにしましょう」

 

すかさずカレンが割り込んでくるが、バゼットに止められる。

 

「貴女はまだ、ココに泊まると決まった訳ではないでしょうが!」

 

「そんなことは無いわ、私と士郎の仲ですもの、泊まるのに何の支障もないわ。 そうでしょう」

 

上目でこちらの方を見つめてくる、カレン。

 

「いやまあ、藤ねえに対する説得があるからな、できるだけ遠慮してほしいんだが」

 

カレンが微笑む。

あの微笑みは、前に一度見たことがある。

悪魔の笑みだ。

カレンが俺の耳元でささやく。

 

(そうですか。 では、まことに遺憾ですがあの事を、一年前の冬の)

 

俺はカレンの口を慌ててふさぐ。

なんて事を言おうとするんだよ、このシスターは!

 

「わかった、泊まってもいい。 だけどイリヤとエンネアと一緒で部屋は離れの方だ」

 

「まあいいでしょう」

(おいおい、チャンスはあります。 『暴君』の方は、自分に利益があると分かれば手を組んでくれるでしょうし)

 

慌てた俺を見て、クスクスと笑うカレン。

 

「はあ、士郎。 やはり君は甘いです」

 

ため息をつくバゼット。

 

「む〜〜〜、分かったわ士郎。 でも、寝る前までは一緒にいてもいいでしょう」

 

頬を膨らませながら、抗議するイリヤ。

 

「ああ、いいぞ、イリヤ」

 

イリヤの頭を撫でながら、そう答える。

すると、周りから幾つかの視線が感じられた。

 

(別に羨ましくないわよ)

(はう、先輩〜)

(シロウ……。 いえ別に私は)

(士郎。 貴方は鈍すぎます)

(…………。 は! い、いけません)

(やっぱり、調教が必要ね)

(もう、士郎のニブチン)

 

ゾクリと悪寒が走る。

何か別の話題を出せと、俺の本能が警告する。

 

「ああ、3人とも離れの部屋に案内するからついてきてくれ」

 

「うん」

「ええ、わかりました」

「OKだよ」

 

3人とも素直に俺の後をついてくる。

ふ〜〜〜、助かったのか?

 

 

 

 

 

【次回、再びトラの光臨か!5人のサーヴァントを味方につけて、どうなる聖杯戦争!その時『暴君』は!】