Fate / open the demonbane

 

第14話 「婚約者?…」

 

 

 

ふ〜、やっと帰り着いた。

もう辺りは、すっかり暗くなっていて辺りに人影はなかった。

 

「ただいま」

 

そういって、玄関をくぐると凛たちの出迎えがあった。

 

「ちょっと士郎。 アナタに聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」

 

出迎えの一声が、なぜかおかしい?

 

「な、なんだ?」

 

ちょうどその時、飛び出してくる人影があった。

 

「シ・ロ・ウ!」

 

その抱きついてきた人物は、本来ココにはいないはずの人物だった。

 

「エ、エンネア!」

 

「そうだよ、お帰り士郎」

 

無邪気に笑う、エンネア。

その後ろでは、凛たちがものすごい形相で睨んでいたが、今は全然気にならなかった。

 

「ちょっと士郎。 聞きたい」

 

俺は、その言葉をさえぎる。

 

「悪い、後で話す。 エンネアやイリヤと一緒に居間の方で待っていてくれ」

 

「「わかった(わ)、シロウ」」

 

そう言うと、電話の置いてある所に走りはじめた。

 

「え? イリヤ? ってなんでアンタがココにいるのよ!」

 

「もう少し、静かに出来ないのかしらリン?セイバーのいくわよ」

 

「ちょっと、どうなってんのよー!」

 

ただ、凛の叫びが聞こえてきた。

 

 

 

 

俺は、受話器のあるところにたどり着くと、なじみの番号に高速で掛けた。

 

数回のコール音の後に、聞きなれた声が聞こえてきた。

 

『はい、こちら大十字』

 

「なにやってんだ!九郎兄!!」

 

『そ、その声、士郎か?』

 

「士郎か? じゃない! なんで、こっちにエンネアが来ているんだよ!」

 

『いや、それをこの前、知らせようとしたんだが、途中でアルの奴が邪魔して切れただろう?』

 

あの時か。

ちっ、掛け直しておけばよかった。

 

「でも、2日もあったんだ、また掛けられたはずだろう!」

 

『いや、アルたちがエンネアに買収されていたらしく、ことごとく邪魔された』

 

「九郎兄さん……。 アル姉・さ・んにかわって下さい」

 

自分の声がさめていくのが分かる。

 

『あ、ああ。 ち、ちょっと待ってろ』

 

しばらくして、電話の相手がかわった。

 

『こちら、大十字探偵事務所じゃが』

 

「こんばんわ、アル姉・さ・ん」

 

『し、士郎。 ど、どうした。そんな怖い声を出して……』

 

「エンネアがこっちに来ています。 何か弁明は?」

 

『いやな、あやつが、き、協力すれば妾の事を『お姉ちゃん』と、呼ぶと言うものだから、つい……。 妾が悪かった、許してくれ』

 

その言葉に、俺は用意していた言葉を告げる。

 

「今度、そっちに言ったとき、デザート一週間抜きです」

 

『う、ううう……』

 

「こっちも色々と忙しいので、この話はまた今度」

 

『ちょっと、ま』

 

アル姉が何か言おうとする前に電話を切る。

まったく、これからどうしようか?

そう考えながら、居間へと歩き出す。

 

 

 

居間の前まで、たどり着く。

はあ〜、なんて説明しようか……

 

「入るぞ」

 

そう言って戸を開けると、異様な空間だった。

 

凛と桜、セイバーとイリヤ、そしてエンネアを中心に異様なまでに高まった気配を感じる。

 

「士郎、とりあえず、アナタからの説明をお願いするわ、婚約者なんでしょ?」

 

「は?」

 

って、今、凛はなんて言った?

あわてて、エンネアに小声で話しかける。

 

(エンネア……。 凛たちに何って説明したんだ?)

 

(ん〜と。 大十字 エンネア、士郎の師匠の大十字 九郎の義妹でシロウの婚約者って事かな?)

 

「はぁ〜、アル姉さんと組んでからかいに来たのか?」

 

まったく、いつもいつも冗談に巻き込まれる身にもなってくれ。

とっとと誤解を解かないとな。

 

「へ〜士郎。 アルねえさんって誰の事?」

 

少し聞こえていたのか、凛がアル姉さんについて聞いてくる。

 

「ああ、俺の師匠である九郎兄さんの恋人だよ」

 

「「「「アル義姉さん(ですか)……」」」」

 

(あのエンネアって子のお兄さんの恋人をそんな風に呼んでいるって事は、婚約者ってのは本当って事!)

(せ、先輩、そんな〜)

(シロウ、アナタという人は!)

(まあいいわ、チャンスはまだ幾らでもあるんだし)

 

ゾックと一瞬寒気が俺を襲う。

 

「ちょっと、士郎こっちに来てもらいませんか?」

 

怖い笑顔で俺に言ってくる凛。

後ろに何を隠している!

 

「い、いったいどうしたんだ?」

 

「大丈夫ですよ、先輩」

 

後ろから黒い影を出しながら、笑顔で微笑む桜。

いや、俺のやった短剣を構えないでくれ。

 

「大丈夫ですよ、シロウ」

 

セ、セイバー、笑いながら完全武装しないでくれるかな。

 

「すぐに終わるわ、シロウ」

 

何がですか! イリヤさん!

 

「ちょっと、エンネア! 見ていないで何とかしてくれ!」

 

「ん〜、いってらっしゃい士郎。 エンネアは待ってるからね」

 

笑顔で、手を振るな!

 

そして、俺は4人に引きづられて隣の部屋に連れて行かれました……。

 

 

 

隣の部屋で、ボロボロになった俺は改めてエンネアの紹介をすることにする。

 

「こっちは大十字 エンネア。 聞いたかもしれないが俺の師匠の九郎さんの義妹で職場の仲間だ! それに大体バゼットもエンネアの事は知ってるだろう」

 

「知ってはいますが、プライベートについてまでは詳しくありませんからね」

 

バゼットは面白そうな笑みを浮かべる。

狙ってやったな。

 

「あはははは、そうならそうと、早く言ってくれれば良いじゃない…」

 

「そ、そうですよ。 先輩」

 

「その通りです。 シロウ」

 

乾いた笑いで誤魔化そうとする凛たち。

 

「聞く前に手を出したのはあなた達じゃない」

 

「な、何言ってんのよ、イリヤ! アンタも同罪でしょう!」

 

「何を言ってるの? 私はシロウに一切手を出してはいないわ」

 

ああ、直接手を出さずに、視線と言葉で追い込もうとしていたな。

 

「うっ! そ、そういえば、何でアンタがココにいるのよ!」

 

「なんでって、自分の家にいるのに、リンの許可がいるわけがないじゃない」

 

「は? 自分の家って?」

 

「ああ、イリヤは親父の実の娘なんだよ」

 

「へ?」 

「え?」

 

驚く、凛と桜。

 

「だから、イリヤは切継の娘で、俺の義理の妹って事になるな」

 

「「な!」」

 

「「んだって!」」

 

大声で叫ぶ、二人。

 

「もう少し声を抑えてくれ」

 

「そうよ、みっともない」

 

「いったいどういうことよ!」

 

慌てる凛。

 

「なにがだ?」

 

「イリヤが妹だって事!」

 

「そのまんまだぞ、親父の実の娘で俺の義妹だ」

 

「そうよ、キリツグは、私の父親よ。 まあ、絶縁状態だったけどね」

 

「士郎」

 

「なんだエンネア?」

 

「イリヤはココに泊まるの?」

 

かわいらしく首を傾げるエンネア。

 

「ああ、離れの方に部屋を用意するつもりだけど?」

 

「ええ〜〜私、シロウと一緒の部屋に寝る〜」

 

「「「な!」」」

 

「だめ、士郎と一緒の部屋はエンネアだよ」

 

「そうですね、私としても士郎と同じ部屋を希望します」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

ココにいないはずの人物の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

【次回、更なる修羅場が?】