Fate / open the demonbane

 

第10話 「虎…」

 

 

 

今日はいつもより早く起きた。

なんせ9人分の食事を用意しなくちゃならないからだ。

 

自分の部屋の寝床から起きると、洗面所に向かい顔を洗う。

 

そして台所に向かうと、もう桜がいた。

 

「あ!おはようございます。先輩」

 

ニコニコと笑いながら挨拶してくる桜。

 

「ああ、おはよう。 桜、凛の奴はまだか?」

 

「ええ姉さん朝に弱いですから。 それより先輩、今日はいつもより早いですね」

 

「まあな、それより藤ねえには昨日言ってた通りに説明するから口裏合わせよろしくな」

 

「はい!」

 

俺と桜は朝食の準備を再開する。

 

 

 

そして朝食の時間になりいつものようにトラの声が響くのが聞こえた。

 

「おはよ! 士郎。 お腹すいたよ」

 

そういって自分の席に座る藤ねえ。

 

「少し待ってろ。 ほら、セイバー、ランサー飯だ」

 

今日は大人数なので普段使わない机を引っ張り出しつなげていた。

そして、席についていた2人にご飯をつぐ。

 

「おう、サンキュウな」

 

「ありがとうございます、シロウ」

 

「うんうん、士郎。お姉ちゃんにもご飯頂戴」

 

そういって、藤ねえは目の前においてあった自分の茶碗を差し出してくる。

 

「ああ、いつも道理に大盛りか?」

 

「うん、士郎の作るご飯は美味しいから」

 

「そうですね、これほどの腕前とは……」

 

感心するセイバーに同意する藤ねえ。

 

「うんうん、わかってるじゃない……」

 

トラの叫びを察知した俺たち3人。

 

「おい、みんな耳をふさげ」

 

いそいでそれに従うが、1人だけ遅れた奴がいた。

 

「何でこんなに人がいっぱい!!」

 

背後にトラが見える。

 

(くっ、なんだこりゃ……)

 

まともに喰らったランサーが倒れるのを俺は確認した。

 

「おい、藤ねえ説明するから落ち着け」

 

耳をふさいでいたはずなのにまだ頭がガンガンしている。

 

「士郎、お姉ちゃんは遠坂さんたちはともかく見知らぬ女性を3人もいっぺんに連れ込むような子に育てた覚えはないよ」

 

「俺も育てられた覚えは無いな、ともかく遠坂たちがココにいるのは家の改修工事で1ヶ月ばかりココに泊まる事になったから、そして、その手伝いに来た親戚筋のアーチャーさんと、ライダーさんも一緒だ」

 

「はじめまして、私はアーチャーと言う。 こちらのライダーともどもこちらにしばらくの間厄介になることになった。 昨今は人情というものが無くなってきていたと思っていたが、ココの家主には感謝している」

 

こういわれると基本的に義理堅い藤ねえは納得するとわかりきっている。

 

「う〜ん遠坂さんたちの事はわかったけど、そっちの3人については」

 

「ああ、それについては私から説明します」

 

藤ねえに説明を始めるバゼット。

 

「私は元々この家の持ち主であったキリツグ氏とは知り合いでして、近くに寄ったらぜひ遊びに来いと言われていたのですが仕事のほうが忙しくこちらの方に中々来れる時間が作れなかったのです。 そして、キリツグ氏は連絡については、ずぼらな事が多くて、私がキリツグ氏が亡くなったと聞いたが2年ほど前になります。 一度は線香でも上げようと思い仕事が一段落ついたので、前々から日本に興味を持っていたこの2人を一緒に連れて来日したしだいです。 そして、3人もホテルで泊まりながら観光するのはお金がかかります。 だから、まだ部屋は空いていると士郎君が言ってくれたので、ご好意に甘えて3人ともご厄介になることにしました」

 

「うう〜〜〜」

 

ん? 一気に説明したのでトラの頭はまだ完全に理解していない様子だった。

 

「う〜ん、まあ切嗣さんの知り合いなら、まあいいか」

 

やはりトラを説得するには一気にたたみ掛けるに限る。

 

「それじゃあ、朝飯を再開するか」

 

藤ねえの飯をついで、何事も無かったかのように朝食が再開された。

 

ただ、気絶していたランサーがほっておかれたことは言うまでもない。

 

 

 

朝食の後片付けを終えて、藤ねえが帰ったのを確認すると、皆を居間に集めた。

 

「じゃあ、あらためて今後の方針を決めようか」

 

「そうね、まあこっちには4人もサーヴァントがいるんだしね、ただあのバーサーカーは要注意ね」

 

「そうですね、あのバーサーカーに関しては何か対策を立てないといけませんね、何かあてはありますか士郎君?」

 

「う〜ん、手が無いってことは無いですけど……、それ師匠に止められているんですよ」

 

「なんでよ、士郎」

 

食いついてくる凛

 

「まあ、俺の使う魔術は結構特殊な部類に入って、体にかかる負担が半端じゃないんだよ」

 

(まあ、投影なんかは比較的自由に出来るけど、『あれ』は今の状態ではきついのは事実だしな)

 

「大丈夫なんですか先輩!」

 

「まあ、時間を置けば大丈夫だ桜。 だから皆には仕えそうなアイテムを幾つか渡しておくよ」

 

「え! タダで!」

 

目を輝かせる凛。

 

(タダでもらえると思って目を輝かせやがって)

 

「ああ、ちょっと待っててくれ取ってくるから」

 

「ええ、早くね!」

 

 

 

士郎君が出て行くのを私は確認した。

 

「ふむ、しかし士郎の概念武装ですか……」

 

「え? どうかしたんですか」

 

「いや、なに彼の作ったとされる概念武装は協会のほうにノーデンス経由で少し入ってきていてるのですが、どれも一級品ばかりなんですよ」

 

「へ〜、そうなんですか」

 

「何、アイツそんなにすごいの?」

 

「ええ、言っていたと思いますが、士郎はあの年でノーデンスの幹部を務めるほどの実力者です。 戦闘についてはもちろんの事、技術者としても高いレベルを誇っている。 まあ、あそこにはそれよりも高いレベルの技術者がいるらしいですが……ホントにあそこは魔窟と言ってもいいぐらいなところです」

 

「ねえ、ところでさ士郎の作った概念武装っていくら位で取引されているの?」

 

目の色を変えてリンが聞いてくる。

 

(売り払うつもりですか……)

 

「まあ、ピンからキリまでありますが平均して30万前後、高いものになると100万を超えるものも多くあります(まあ、アメリカを拠点としているのでドルですけど)」

 

「へ〜、結構お買い得なのね」

 

「凄いんですね……」

 

妹のほうは純粋に驚いているが、姉の方は打算が働いているのが丸わかりだ。

 

「そうですね、値段と性能と比較すると良心的に設定してあります」

 

(あれだけの代物なら2,3倍の値段でも取引は成立するはずです)

 

そう言うとちょうど士郎君が帰ってきた。

 

 

 

「おい、両手が塞がっているんだ開けてくれ」

 

「わかりました、シロウ」

 

目の前の戸をあけてくれたセイバー。

 

「ありがとな、セイバー」

 

「いえ、とうぜんの事です」

 

「それで、どんなのを持ってきたの士郎?」

 

持って来た箱から目当ての品を取り出す。

 

「まずはバゼットにはルーンの増幅媒介である、この宝石を3つほど、これは中にルーン文字を込めるとその効果を大体平均2〜3倍ぐらいに増幅させる。 一度つかったら中の文字は消えるけど、また利用することが出来る。 まあ、使用し終わってから、大体1時間ぐらいの間隔をあけないといけない」

 

「ふむ、まあ護身用や攻撃用として使えますし、なかなか使い勝手がよさそうですね。 礼を言います」

 

受け取った宝石をまじまじと見つめるバゼット。

 

「桜には、この短剣だ。 銘は『ディス』」

 

「これは、どんな効果があるんですか?」

 

「それは架空元素を操るときの補助だ。 それなら同じ魔術を使っても魔力の消費量も半分ぐらいですむし、効果もだいたい1.5倍位上がるのは確認済みだ」

 

「で、私には士郎?」

 

乗り出してくる凛。

 

「ん〜、凛にこれを渡すのは少し危ないと思うんだが」

 

「なんでよ!」

 

(いや、オマエ時々ポカやるからな)

 

「まあいいさ、これだ」

 

そういって凛の目の前に虹色に輝く直径が10p程の宝石を取り出す。

 

「へ〜おっきいわね」

 

「まあな、宝石剣の簡易版みたいなもんだ。 さすがに次元を切り裂くなんて事は出来ないが、平行世界から魔力を取ってくる事位だと出来ると思うぞ。 まあ、簡易版だからまだ強度の方にも問題があって10回前後使ってしまうと壊れちまうはずだ。 これなら凛の使う宝石魔術の役に立つはず、ってどうした凛? 黙りこんで」

 

「なんですって!!」

 

いきなり大声を張り上げる凛。

 

「簡易版とはいえ宝石剣よ! 我が家の悲願なのよ! それをあっさりと出して士郎あんた何者よ!」

 

「ん〜、いやさ俺はあの爺さんから実物を見せてもらったことがあるし、これは共同作業で作り上げたものだからな」

 

(まあ、実際は『銀鍵守護神機関』の応用でもあるし、あのキチガイ……性格はともかく能力だけは間違いなく天才だしな)

 

「だれよそれ!」

 

「まあ、俺と同じノーデンスの幹部でね……こっちは技術者一本の専門家だ」

 

「噂には聞いていましたが、やはりノーデンスの幹部クラスの面々は常識はずれのようですね」

 

うう、バゼットにあのキチガイと同レベルに位置づけられて落ち込んでしまう。

 

「まあ、後は防御用のタリスマンなんかだ……」

 

そういって箱の中物色し始めている凛を皆が見つめる。

 

「な、なによ…」

 

「はあ〜、もういいよ」

 

俺がそういったら、物色を再開する凛。

 

「リン、なんてマネを……」

 

誰かのサーヴァントがこぼしていた愚痴を俺は忘れることにした。

 

 

 

 

 

【物色を始める凛のせいで話が進まない、次回は方針を決めることが出来るのか!】