Fate / open the demonbane

 

第9話 「正義…」

 

 

 

「誰だ!」

 

私のいる屋上にいきなり気配を感じた。

 

「おい、誰だは無いだろう」

 

「小僧。 貴様か、いったいこんな時間に何の様だ?」

 

屋根に上ってきた士郎に問いかける。

 

「いやな、お前と話をしようとおもってね。 ココとは違う世界で英霊となった『衛宮 士郎』とな」

 

「な!」

 

(何故その事を!)

 

いきなりの答えに驚愕の表情を作ってしまう。

 

「何故、って顔をしているな。 幾つか理由は有るぞ。 お前がランサー戦で使った『干将』『獏耶』の夫婦剣は本物ではなっかった。 つまり、偽者だ。 これだけではお前がその時点で作り出したかわからないから、俺に結びつくのは弱いが、体術面で俺に似通った動きをしていたし、なにより『あれ』がこの『世界』のものじゃないと一瞬で『解析』した。 そんな事、『剣』に特化していないと分かる筈が無い」

 

この『衛宮 士郎』は油断できない。

 

「ふむ、確かに私はココとは違う世界で英霊となった。 その私に何の話があるのだ?」

 

『衛宮 士郎』に対し、警戒心を強める。

 

「ああ、ちょっとな。 あんたは、『正義の味方』を目指したのか?」

 

その言葉に、私は呆然となる。

 

(こいつは、『正義の味方』を目指してはいないのか!)

 

「貴様! 『正義の味方』になる。 それが、キリツグとの約束ではなかったのか?」

 

「いや、俺が、それを目指すと口にしようとした時に、親父に止められた。 俺に自分の『幸せ』を見つけるように言われた」

 

(そうか! それが、この世界の始めの分岐点か!)

 

「ならば貴様は、『正義の味方』になるのをあきらめたのか」

 

「いや、違うぞ」

 

「なんだと!」

 

思っていた返事と違う答えに驚く。

 

「俺は、『正義の味方』だ!」

 

「何を言う! 『正義の味方』とは、唯の掃除屋に過ぎん」

 

そうだ、私は人の為に戦い、戦い抜き。

そして『世界』契約し、死してなお戦い続けその答えにたどり着いた。

そこには、何の理想も無く、唯人が滅びぬよう狂った世界を掃除するそれだけだ。

 

「都合のいい『正義の味方』など有り得ない。 それは唯の現実には無い理想にすぎん」

 

「違うな、アーチャー。 『正義の味方』は確かにいるぞ。 たとえそれがどれほど小さな、少ないものだとしてもな」

 

「『衛宮 士郎』貴様が『正義の味方』だという理由はなんだ」

 

「理由なんて無いさ」

 

「何!」

 

「逆に聞くが、『正義の味方』となる条件はなんだ」

 

「それは……」

 

考えた事が無かった、あの頃ただ『正義の味方』を目指すだけの生活を送っていたから。

 

「『正義の味方』はなるんじゃない、ただ自覚すればいいんだ」

 

「なんだと…」

 

「俺の師匠は本当に『正義の味方』だ。 普通に笑い、普通に泣く唯の人間だ。 思ったよ俺は、『正義の味方』は特別なものじゃない、誰にでもあり誰もが忘れているものだってな。 あの人は、後味悪いから、そんな理由でこの世の理不尽に対抗していき『世界』を救った。 人として戦い抜いた」

 

「ならば貴様は、『正義の味方』等ではない、それらに憧れる唯の『欠陥品』だ!」

 

そうだ! 『衛宮 士郎』は欠陥品だ、あの火災のあった時から。

 

「いや違う! 憧れた、それは事実だ。 だがな、そこに感じた心は、思いは本物だ! それを曲げることは誰にもできないし、させはしない」

 

(なんだ! なんなのだ! この苛立ちは!)

 

「アーチャーもう一度言う、俺は『正義の味方』だ。 俺はそう思い、そう進む。 自分の感じた『幸せ』と共に」

 

「『幸せ』だと」

 

「そうだ、自分を『幸せ』にできないのなら他人を本当に『幸せ』することはできない。 お前はそれが分かっているから苛立っているんだ」

 

(違う! この『衛宮 士郎』は自己が欠けてはいない。 確固たる個を持っている!)

 

「アーチャー、お前は間違っていなく、そして決定的に間違っている。 …その答えを自分で見つけろ」

 

「待て!」

 

静止のまもなく奴は屋根から飛び降りた。

 

(『間違っていなく、そして決定的に間違っている』いったいなんだと言うのだ!)

 

その思いの問いは誰にも伝わらず、答えは返ってこない。

 

 

 

 

 

(ふう〜。 まあ、あれぐらいでよかったかな)

 

あいつは、師匠と会わなかったらああなっていた見本だ、だからこそ認められない。

あの、『欠陥』を。

 

(まあ、自己嫌悪なのかもな)

 

そう思いながら、自分の寝床へと向かって行く。

 

 

 

【次回、ほえるタイガーの巻きへ……?】