Fate / open the demonbane

 

第6話 「再会…」

 

 

 

気配を殺しながら結界をくぐり抜け俺の目に入ってきたものは、赤い槍を使う男とそれに協力しながら相対する長身長髪の女性と白と黒の双剣を使う男だった。

 

「ランサー、やりなさい」

 

「分かってるよ」

 

ランサーは赤い槍を繰り出す速度を上げながら、長身の女性のほうを追い詰めて行く。

 

「アーチャー。 ライダーの援護をお願い」

 

「了解した」

 

アーチャーと呼ばれた男が、赤い槍を白と黒の双剣で起動そらしライダーと呼ばれた女性をかばう。

 

(ちぃ、やっぱりか。 2対1でやってるってことは)

 

「だれですか!」

 

女性の声が聞こえてくる。

 

(な! 気づかれた。 気づかれないと思って油断しすぎたか。)

 

その声に他のマスターらしき人影もこちらに注意を向ける。

 

(どうする、出て行くか?)

 

こちらがなかなか出てこない事に不審をいだいたのか女性がもう一度声を上げる。

 

「どうしのです、早く出て来なさい」

 

戦っていたサーヴァント達も警戒しているのか戦闘を一時中断しているようだった。

 

(出て行くしかないのか。 しかし、サーヴァントが3人もいるとなるときついな)

 

俺は決心を固め隠れていた木の影から姿を現す。

 

「士郎!」

「先輩!」

「士郎!」

 

声をかけられた人物を見て驚いた。

 

「凛に桜。 それにバゼットまで!」

 

(凛や桜はともかく。 まさか、バゼットまで参加しているのか)

 

「ちょっと、士「まってください、士郎。 なぜ貴方ががここにいるのです」

 

凛の声をさえぎり話しかけてくるバゼット。

その間にサーヴァントたちは自分のマスターの傍につく。

 

「え〜っと、ここは俺の実家があるんですよ」

 

「な!」

 

純粋に驚きの表情を作るバゼット。

 

「うかつでした、下調べが足りませんでしたね」

 

「ちょっと待ちなさい! あんた達知り合いなの? それに士郎なんであんたがここにいるのよ!」

 

もっともな疑問をぶつけてくる凛。

 

その問いに俺が返答するより先にバゼットさんが答えた。

 

「はい、そうですが。 この土地の管理者とあろう者が、住んでいる魔術師の事について知らないのですか?」

 

「な、何よ」

 

バツの悪そうな返事を返す凛。

それと同時にランサーがバゼットさんに問う。

 

「おい、マスター。 この坊主と知り合いか?」

 

「はい、ランサー。 士郎はノーデンス所属の魔術師でちょっとした知り合いです」

 

「な! な! な! なんですって!」

 

「え〜っと、すいません。 ノーデンスってなんなんですか?」

 

驚愕の表情を浮かべている凛に対し、ノーデンスの事を知らない桜が聞いてくる。

俺は、アーチャーが一瞬浮かべた驚きの表情を見逃さなかった。

 

(なぜだ、なぜアーチャーが驚きの表情を浮かべた?)

 

続く話に俺はその疑問を一時保留にすることにした。

 

「ふむ、知らないのですか。 まあ、無理もありませんね。 あそこは設立して日もそれほどたってはいないし、協会所属でもありませんしね。 それに噂に聞こえてくる情報も信じられないものが多く、信じていない魔術師が大半をしめています」

 

(まあそうだろう、うちは少数だが、師匠でもある九朗兄さんを筆頭にや他の連中も非常識ぞろいだからな……、はあ〜〜〜)

 

「あそこは3年ほど前にアメリカに拠点を置き活動を開始して。 少数精鋭で様々な魔術もしくはそれに類する事件、トラブル等を解決したりしています。 一番有名なのは、あの青崎姉妹の姉妹喧嘩を周りに被害を出すことなく、仲裁したという奴ですね」

 

(ああ、あれか……。 た い へ ん だ っ た な〜〜〜)

 

思い出しただけでも疲れるような仕事だったよ、あれは。

あんな仕事を回してきやがって、ちくしょう。

 

「「な! なんですって!!」」

 

大声を張り上げて、ずいぶんと驚いている凛と桜。

まあ、当たり前か。

 

「そして、他の仕事中に私と何度か共闘したこともありますしね」

 

同意を求めてくる、バゼット。

 

「そうですね」

 

「ふ〜ん、なるほど。おい坊主はマスターか?」

 

そうランサーの問いに周囲の視線が集まる。

 

「いや、俺はマスターじゃないぞ」

 

その答えに凛と桜がほっと安堵の表情を浮かべた。

 

「ではなぜここにきたのですか?」

 

バゼットが確信をつく質問をしてくる。

それに反応して再び2人の顔がこわばる。

 

「え〜っと、3人とも今回の聖杯戦争おりて、俺に協力してくれない?」

 

「なぜ?」

「なんでよ?」

「どうしてですか?」

 

3人が3人とも聞き返してくる。

俺はどう説明したらよいのか困る。

 

「いやな、こんなことしても聖杯は手に入らないぞ」

 

「だから!なんでよ!」

 

大声を張り上げながら問い詰めに来る凛。

すべてを教えるかどうか迷う。

 

(まあ、この3人なら良いか)

 

「…わかった、理由を説明する。 今回、俺が動いたのは大聖杯の破壊の任務を受けたからだ」

 

「大聖杯のですか? 先輩」

 

「ああ、事の始まりは第3回の聖杯戦争の時、アインツベルン家が反則侵し8人目のサーヴァント『アヴェンジャー』<アンリ・マユ>を召喚したことから始まった。」

 

「ち、ちょっと待ちなさい! アンリ・マユってあのアンリ・マユ? 神霊クラスを召喚するなんっていくら聖杯でも不可能よ!」

 

「ああ、正真正銘の神様ならな。 しかしここで言うアンリ・マユは唯の人間だ」

 

「「え?」」

 

黙って聞いているバゼットに対し首をかしげる凛と桜。

 

「<アンリ・マユ>こいつは唯の村人だったんだが、同じ村人から自分たちが善であり悪を消し去るための生贄として『この世の全ての悪』に祭り上げられたんだ。 この事により<アンリ・マユ>に祭り上げられたこの青年は反英雄となったんだ」

 

「なるほど」

 

「もちろん、唯の村人だった<アンリ・マユ>はすぐに脱落した。 しかし、それが全ての始まりだった。 聖杯の真偽はともかくあれは人の願望器だ、脱落した<アンリ・マユ>が聖杯に入ったとき、<アンリ・マユ>として祭り上げられた彼の願いを叶えてしまい。 彼に<アンリ・マユ>『この世の全ての悪』としてふさわしい力を与えてしまったんだ」

 

「「そんな」」

 

「第4回の聖杯戦争では完全ではないにしても出現し、ここをこんな風にしてしまったんだ」

 

そう言いながら、殆ど何も無い公園を見渡す。

 

「だから、俺は大聖杯の破壊をしなくちゃならないんだ」

 

「そうですか…、私は協会から聖杯を手に入れて来いといわれているのですが、聖杯が手に入らないというのならばこれは労力の無駄遣いです。 しかしながら、士郎には借りがあるので協力をしましょう」

 

「ふん、この冬木の管理者としてはそんなもの見過ごせないし協力してあげるわ、士郎」

 

「そうです、先輩」

 

3人とよい返事をくれてホッとする俺。

 

「やれやれ」

「サクラがそういうなら従いましょう」

 

それに同意を示すアーチャーとライダー。

 

「おい、バゼット。 俺は強い奴らと戦うために召喚にこたえたんだぞ」

 

ランサーがパゼットにくいつく。

 

「だったら、俺がセイバーを召喚するから、一度1対1で勝負するってのはどうだ?」

 

ランサーがこっちを向く。

 

「あ〜、坊主できるのか?」

 

「ああ、なんなら今から召喚して見せようか?」

 

少し考え込むランサー。

 

「やってみろ、セイバーを召喚できたらその話に乗ってやる」

 

「ちょっ「わかった。 『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には白き王 大十字 九朗。 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 閉じよ。 繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する。 セット。 告げる。 告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。 誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。 汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!』」

 

魔力が集まりそれが魔方陣を描く。

そして膨大な魔力が魔方陣より噴出し、それとともに光が満ち溢れだす。

 

「問おう・・・」

 

噴出した光の後に、銀の鎧と蒼の衣を着た小柄な金髪の少女が立っていた。

 

「貴方が私のマスターか?」

 

「ああ、そうだセイバー」

 

俺の手に浮かび上がっている令呪を確認すると、少女が一瞬動きを止める。

 

「確認しました。 サーヴァント・セイバー参上しました」

 

「はっはは、こりゃあ すげえなあ。 いいぜ、坊主。協力してやるよ」

 

嬉しそうに声を上げて笑う、ランサー。

 

「マスター、下がってください。 ここにいるサーヴァントを排除します」

 

そういって身構えるセイバー。

 

「まて、セイバー。 あいつらとは協力関係だ」

 

「な! ……わ、分かりました」

 

そういって構えをとくセイバー。

ちょうどその時、あの少女の声が聞こえてきた。

 

「ふ〜ん、お兄ちゃん 見〜つけた」

 

 

 

【次回、4人のサーヴァントとあの大英雄が激突する。 その後に…】