Fate / open the demonbane

 

第2話 「始まり…」

 

 

 

「……う、うん…」

 

朝日の光によって俺の目が覚める。

 

「あちゃ〜、また土蔵で寝ていたか」

 

俺は2年前、この冬木市に帰って来てからは、部屋ではなくこの土蔵を寝床にすることが大半だった。

 

(しっかしまあ〜、鍛錬が終わって疲れているっていっても土蔵で寝るのは少しまずいか)

 

「はあ〜、やっぱりまだまだだな」

 

素早く起き上がると、自分の頬を叩く。

 

「よし、朝食の準備でもするか」

 

土蔵から出て扉を閉めると、真っ直ぐに洗面所に向かう。

 

 

 

顔を洗い終わると一度自分の部屋に戻り、素早く着替えを済ませる。

着替え終わると台所に向かい、冷蔵庫を開け

 

(さてと、朝食はご飯に、豆腐の味噌汁にとおっと鮭がまだ残っているから焼くか。 えっと、それに卵焼きにとろろ、なすの漬物で良いか)

 

冷蔵庫から材料を取り出し朝食の準備にかかる。

 

(さあってと、トラ達が着く前に作っちまうか)

 

 

 

朝食の準備があと少しで終わろうとした時に

 

「おっはよーーー!! し〜ろう、お姉ちゃんおなかすいたよ、ご飯まだ?」

 

朝早くからハイテンションなトラが着いたようだった。

 

「先輩、お邪魔します」

 

「おい、士郎じゃまするぞ」

 

桜に綾子を一緒に来たようだった。

 

(凛の奴、来てないのか?)

 

「わかった、もうすぐメシができるから居間で待っててくれ」

 

そう言って、残りをしあげる。

 

「「わかった」」

 

トラと綾子の返事が返ってきた。

少しして、あわてた桜が台所に入ってきた。

 

「せ、先輩すいません、こんなに遅くなちゃって」

 

確かに桜はいつもより30分以上遅れてきていた。

 

「桜、気にするな。 どうせ凛の奴が寝惚けて何かやっちまったんだろう」

 

後輩の遠坂 桜は、よく家に料理の勉強をしに来る。

朝早くからいつも頑張ってメキメキと料理の腕を上げている。

ここだけの話、この1年ですっかりと大人っぽくなってきて少し困っている。

そして、桜の姉である遠坂 凛は凄く朝が弱い。

それでいつも妹である桜が苦労している。

 

「えっと、まあいつものうっかりで〜」

 

言葉を濁しているのだろうが、桜 何気にひどいことを言ってるぞ。

 

「それで、凛は今日こないのか?」

 

基本的に凛の奴は優等生で通ってるが遺伝子的に抜けている所が多々ある。

今回も、そのうっかりでなんかやっちまったんだろう。

 

「ええ、今日は姉さん学校を休むそうです」

 

まあ、あんまり追求することじゃあないだろう。

 

「まあいいさ、さっさと席について朝飯にするぞ」

 

「はい!」

 

そういって、2人で今日の朝食を運ぶ。

 

 

 

(ふ〜)

 

夜中、姉さんが召喚の時間を間違えたせいで、今日は遅刻してしまった。

私がライダーの召喚を先にして置いて本当に助かったが、先輩と2人っきりで料理をする時間を削られてしまって大損害だ。

 

「あ、先輩これは私が運びます」

 

先輩にそう言うと振り向いて

 

「ああ、頼む」

 

衛宮 士郎 私より1つ年上の先輩で弓道部の副主将でもある。

弓道部随一の弓の達人で人望も厚いのだが、バイトがあったりするから主将等はやらないと言っていたが、周りがそれを許すはずも無く、とりあえず副主将で落ち着いたのである。

主将の綾子先輩は、先輩に弓で勝つことが今年の目標らしい。

 

「桜、こっちを持っていってくれないか」

 

先輩の声で振り向く。

 

「はい」

 

先輩は、もてる。

アメリカ帰りということで入学当時、持ち前の赤毛と相成ってかなり目立っていたそうだ。

運動神経、学力、人柄等が、かなり良いというのが1ヶ月ぐらいで広まってしまったが、一番の外因はあの事件だろう。

 

私が中学の試験休みの時に姉さんに会いに高校へ言ったときのこと、ちょうどその時、学校に不審者が入りこんでいて私は人質にされてしまった。

人目が多すぎてこの土地のセカンドオーナーとしては、魔術が使えず、姉さんも一緒に捕まってしまった。

そんな中で私たち姉妹を救ってくれたのが、先輩だった。

弓道の弓を使って犯人の気をそらし、単独で乗りこんできったのだ。

 

(はあ〜、あの時の先輩 本当にかっこ好かったな〜)

 

あの時からだろう、私が先輩を気になりだしたのは、それでいつの間にか先輩の事を好きになってしまっていた。

姉さんも、先輩の事を好きなのだが、これだけは絶対に負けられない。

だけど、先輩はかなり鈍感らしく自分が持てているのに気づいていない。

 

「お〜い、桜 いい加減に席に着け」

 

綾子先輩の声ではっとする。

先輩がこちらを見ていた、はずかしい。

 

「おい、桜 大丈夫か?」

 

心配そうな声で聞いてくる。

 

「あ! はい! 大丈夫です」

 

「そうか、気をつけろよ」

 

私は先輩心配ないと微笑だ。

 

「はい、ありがとうございます」

 

その声に納得したらしい。

 

「わかった、それじゃあ いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

 

 

珍しく藤ねえが、朝食中に新聞なんかを広げてる。

 

「藤村先生、食事中に新聞読むのはお行儀悪いですよ」

 

「そうだぞ、藤ねえ」

 

「ん〜」

 

話を聞いていないのか、から返事をするだけだった。

 

(ふ〜ん、なんかあるな)

 

こういう時の俺の予感はよく当たる。

 

「おい、桜。 醤油とってくれないか?」

 

「はいどうぞ、とろろにかけるんですか?」

 

桜から醤油を受け取る。

 

「ああ、やっぱ、とろろには醤油だろ」

 

醤油さしをとろろにかけようとして、その動きを止めた。

ピク、と俺の行動に反応する藤ねえ。

 

(やっぱり)

 

「そういや、藤ねえまだ醤油をかけてないな。 レディーファーストって言うしな、俺がかけるぞ」

 

「え?」

 

藤ねえが行動するより早く、とろろに醤油さしの中身をかける。

 

「うわ〜〜〜!!」

 

あわてて新聞を投げ捨て、大声をあげる藤ねえ。

 

「なな、何ってことするのよ、士郎!!」

 

「何って、醤油かけただけだろ、藤ねえ

 

藤ねえのところのアクセントを強くする。

 

「うう〜」

 

「どうしたんですか、藤村先生?」

 

桜が藤ねえを見て首をかしげる。

 

「つまりだ、その醤油さしに入ってるなは、醤油じゃあないと言うことだよ、桜。 しかしまあ、良く気付いたね、士郎」

 

「まあな。 藤ねえの態度もおかしかったし、何かいやな予感がしたんだよ(そうしなきゃ、解析してまで確かめなかったしな)」

 

「それで、何を入れたんですか、藤村先生?」

 

食べ物を粗末にしたからなのか桜はかなりの威圧感をもってしゃべる。【鈍感野郎】

 

「激甘ソース」

 

桜の迫力のせいか、小声のトラが1匹。

 

「ちゃんと、残さず食えよ!」

 

トラに死刑宣告を渡す。

 

「ええ〜、そんな殺生な」

 

「た べ ろ よ !」

 

「ハ、ハイ!」

 

言って、とろろをかきこむ藤ねえ。

 

「ウウ〜〜、おいしくないよ〜〜士郎」

 

凄い顔をしながら食べる藤ねえをほおっておいて、俺たちは美味しい朝食を再開する。

 

 

 

朝食のかたずけを終えて、みんなで外に出ると

 

「う〜、3人とも朝練、頑張ってね〜」

 

1人家の中に戻ろうとする藤ねえの首根っこをつかむ。

 

「おい、あんたも学校だろうが!」

 

「うう〜、気分が悪いんだもの、お姉ちゃん今日休む〜」

 

駄々をこねる藤ねえにきついボディーブロウをお見舞いする。

小声で、

 

「ライガの爺さんに言うぞ」

 

「ええ!! それは駄目、またおこずかい減らされちゃうよ〜」

 

(まだ、このトラ。 この年でこずかいなんてまだもらってたんかい!)

 

相変わらずといえば、相変わらずだった。

 

「それじゃあ、行くな」

 

藤ねえがしぶしぶとうなずく。

 

「うん、わかったよ〜。 士郎のいじめっ子

 

「何か、いったか?」

 

「うんうん」

 

藤ねえが高速で首を振る。

そして、俺たち4人は学校へと向かった。

 

こうして戦争前日の朝が始まった。

 

 

 

【次回、士郎の学校生活!】