我思う、故に我在り。 第二話 『二人』

 

森の中、まるで滑る様に駆け抜ける3つの影。

2つの影から逃げるように先頭を走るのは、人一人分位の大きさは有ろうかと言うぐらいの金色の犬。

追う影の1つ、まるで西部劇から抜け出してきたかのようなカウボーイ風の女性が叫ぶ。  

 

「くっそー!チョロチョロ動き回りやがって、さっきから一発も当たりゃしない!」  

 

そう言いながら、右手に持つリボルバーのリロードを開始する。

シリンダーから、薬莢が飛び出し、空になったシリンダーに弾丸を流し込む。

常人の慣れている者でも、26秒以上掛かるリロードを、走っているはずの彼女は・・・数秒でやってのける。

その動きは、普通の人が見たら、シリンダーから薬莢が飛んだと思ったときには、リロードが終わっていた・・・といえばお解りになるだろう。

もう一つの影、まるで戦国時代から抜け出してきたかのような女性武者が、目を細めて忠告する。  

 

「あの賊、甘く見ない方がいい・・・あの動き・・・もしかすると。」  

 

それは、如何なる歩行術なのか・・・まったく、鎧の騒がしい音を立てずに走り続ける、女武者。

両手を、太刀に添え、いつでも居合いが出来る体制で敵を睨みつける。

まるで対極な得物を持ち、まるで違う時代から来たような姿をした・・・二人。

この追う『二人』こそ、『乱闘』騒ぎを起こしていた張本人。  

 

カウボーイの格好をした女性、名はアイリ・オーキンス。

数多の銃器に精通し、銃撃以外にも銃を使用した接近戦闘を得意としている。  

 

武者の女性、名は雲行・奈雲。

剣、槍を使った様々な武術を得意としている。  

 

二人とも、半人前の魔術師に雇われた武術の師匠であり、善き護衛であるのだが・・・・  

 

「おぉ、いいこと思いついた!」  

 

アイリが、指をパチッと弾いてみせる。

・・・大体、こう言うときとんでもない事を言うのだ、この女は。と、思いながら、なにを?と尋ねるロゼ。  

 

「この獲物を、殺った方がさっきの勝負の勝者ってことを思いついた!と言うか、決めた!」  

 

「はぁ〜なにを言い出すかと思えば・・・これは、遊びではない。取り逃がした場合、主殿に危険が及ぶ可能性があるのだぞ。」  

 

「おやおやぁ〜そんなこと言ってぇ〜武人の奈雲様は、自分が負けることが怖いのかしらぁ?」  

 

呆れ顔のロゼに、あらか様に挑発するアイリ。

その言葉に、奈雲の表情が変わる。  

 

「・・・なにを言っている・・・私がお前に負けるはずが無い。」  

 

怒りが染み出したような声で答えが返るのを聞いて、扱い易いねぇ、奈雲は。と思いながら、シシシッと笑うアイリ。  

 

「じゃ、決まりだな。と、言うか、勝負始まってるから。」  

 

にこやかに言うや否や、即座に獲物に標準を着けて引き金を絞る。  

 

――――――ガン!! ガァン!!   撃ち放た弾丸が、獲物を貫こうとした瞬間・・・  

 

――――――ギャン! ガキン!   一振りの太刀によって、弾き飛ばされる。  

 

「つっ〜〜!邪魔するんじゃねぇ!奈雲!」   「ふんっ!そんな事だろうと思っていた!」  

 

奈雲は、悔しがるアイリに、そう言い放って太刀を振るう。  

 

「はっ!」  

 

太刀が獲物を捕らえようとした瞬間・・・・  

 

――――――ガン! ガァン!   

――――――ギン! ガキィーン!  

 

太刀の側面に弾丸が食い込み、切っ先が反れ地面に突き刺さる。  

 

「なっ!!――――アイリィ!」  

 

奈雲が叫びながら睨みつけるがどこ吹く風。  

 

「撃った所に、剣が振り下ろされただけですわぁ?」  

 

口に手を当てて、おほほほ〜とワザとらしく微笑んでみせるアイリ。

左手にはしっかり、大型拳銃『S&W モデル3 スコフィールド・カスタム』を持っている・・・要は、弾く気満々だったと言うことだ。

そんなアイリに奈雲は、肩をワナワナ震わせていたが、不意に振るが止まる。  

 

「・・・ふ・ふふふ。それでは、仕方がないな。」  

 

アイリは、あれぇ〜テッキリ、もっと言い返してくると思ったんだけど。と首を傾げる。

表情を確認しようにも、斜め前を走っているため確認できない。  

 

「何をしている。早く、賊を倒すぞ。」  

 

「あ、あぁ・・・」  

 

首を傾げるアイリを他所に、太刀を、獲物目掛けて振り下ろす。

太刀は、弧を描き横薙ぎに振り切られ・・・・  

 

――――――ガキン!!  

 

・・・・鈍い金属音が響き渡る。

奈雲の太刀は、アイリの右手に持った銃、『エンフィールドNo2・カスタム』で受け止められていた。

アイリは、剣戟に耐えながら叫ぶ。  

 

「痛っ〜〜〜!て、てめぇ〜!、何しやがる!!」  

 

・・・・・・振り切られた先は、獲物ではなくアイリの顔面だった。

奈雲は、黒い笑みを浮かべながら・・・さらに太刀に力を込め。  

 

「あぁ、すまない。汗で滑ってしまったあぁぁぁぁ!」

 

「そう言いながら、なぜ押し切ろうとするーー!!」  

 

すでに、獲物・・・『侵入者』のことは、頭に無く。ついには、剣と銃の鍔競り合いから、大乱闘へと突入していく。

自己中心的な性格+真面目で怒りやすい性格=騒動が起きないわけが無い・・・・・・・と。

『二人』〜あとがき〜

第二話です。なんか、一話みたいな自己紹介に!!煤i ̄ロ ̄;

もっと、よく練り直したほうがいいんでしょうか・・・・orz

銃の解説(知らない人のために)

 

S&W No.3(S&W モデル3 スコフィールド)

 米国の有名拳銃メーカー、スミス・アンド・ウェッソン社製のシングルアクション式リボルバー拳銃。通称「アメリカン・モデル」。

 南北戦争が終了した1870年に開発された。S&Wの特徴である金属薬莢と中折れ式装填を採用。但し他のモデルとは異なりトップ・ブレーク方式を採用しているとの事。なお、中折れ式とは銃身を前に折ると、空薬莢が全て弾き出されるタイプであり、実に26秒で再装填が可能となっている(ちなみに、コルトSAAだと排莢するだけで同じくらいの時間が掛かった)。

 S&W社としては珍しい大口径拳銃であったが、大口径拳銃好きのアメリカ陸軍は南北戦争終了に伴う軍縮の真っ最中で、僅か1000挺のみの納入で終わってしまった。却って外国政府の方がこの拳銃に注目し、特にロシア帝国のアレクセイ大公はこれを気に入り、ロシア用に幾つかの改良を施した「ラッシャン・モデル」を開発させ、16万〜25万挺を購入した。その他にもトルコや日本等で制式拳銃として採用された。

 日本での制式採用は明治七(1874)年、制式名称は「壱番型元折式拳銃」。明治二十六(1893)年に国産の二十六年式拳銃が登場するまで士官や砲兵の護身用に使用された。

口径:44口径(約11.2o)

全長:34.3p

重量:1.330g

装弾数:6  

 

エンフィールドNo.2

エンフィールドNo.2(Enfield No.2)は、1927年にイギリスで開発された中折れ式ダブルアクションリボルバー。

.38S&W弾を使用するものと、.38S&W弾を独自改良した.380エンフィールド弾という実包を使用するものがある

正式名称 Enfield No.2

全長 260mm

重量 765g

口径 .38S&W.380エンフィールド

装弾数 6

作動方式 ダブルアクション/シングルアクション

製造国 イギリス

製造 RSAF