「衛宮先生、マスターを頼みます。」

 

私は、そう言った。自然に出た言葉だった。

 

何故、その様な言葉がでたのか? その回答を私は知らない。

 

何故、マスターの事を他人に任せられたのだろうか? 回答 衛宮先生はマスターに危害を加えないから。 保障など無い、だけど確信できる。

 

マスターは助かるのか? 回答 不明、少なくとも私はマスターを助ける為の術を知らない。

 

衛宮先生はマスターを助ける事が出来るのか? 回答 不明、しかし、衛宮先生なら助けてくれると思う・・・・・・違う、コレは答えでは無い。

 

イィィィィィィィィィィ

 

私は悪魔に肉薄しながら考えてみた。 しかし考えの回答、私自身が出した答えは確実な物では無く。不確実な物だった

 

 

「ドウシた「オート・マタ(自動人形)」? ソノヨウナカおヲして、アルジノコトデモシンぱイしテイルノカ? シンパイスルナ、オマエのアルジはシヌ。ワタシのノロイハニンゲン、シンそ、カンケイナクハタラクカラナァ。トキガタテバシヌ、イクラマリょクデレジストシヨウガまリョクはユウゲん。ムゲンではナイのダカラ」

 

と悪魔が言う。

 

私は、攻撃の速度を速めた。

 

イィィィィィィィィィィィィ

 

ドリルの回転数を上げる。

 

一つ、二つと悪魔の体に傷が増える。しかし、少しすればその傷も悪魔の体から出る炎によって塞がれ、消える。

 

本来ならばこの攻撃も、悪魔の魔力障壁によって届く事は無かっただろう。衛宮先生に感謝だ。 

 

「ドウシタ「オート・マタ」イクラオマエのコウゲキがトドコウガ、カスりキズテイドデハコロセンゾ? オマエノアルじとオナジデ、オマエモナニモデキズニオワルか? アアァ、マチガエタオマエはオマエのアルじトチガッテワタシヲキズツケルコトガデキタカ。ナニモデキナイあルジトチガッテナァ」

 

うるさい

 

「コウゲきガタンチョウニナッテキタぞ? アルジノコトデオコッタか? タマシイをモタヌ「オート・マタ」フゼいが」

 

うるさい

 

何故だろうか?

 

悪魔の顔を見たくない

 

悪魔の声を聞きたくない

 

悪魔がマスターの事を口にするのが気に入らない

 

マスターを傷つけた悪魔が許せない

 

悪魔の存在を認めたくない

 

悪魔の全てが・・・声が・・・顔が・・・悪魔を構成する全ての要素が気に入らない!!

 

「名も無き悪魔、彼方が言う「怒り」と言う言葉が正しく合っているのならば、私は怒っているのでしょう。私の思考は、彼方の全てが気に入らない」

 

「ホエルナ、ニンギョウ。マルデキサマが、ワタシヲホロボストイッテいルヨウニキコエルゾ」

 

「肯定します」

 

『スレイプニル』衛宮先生が作ってくれた、私の専用兵器。その真価は魔力を大量に消費する事で得られる、突進力にある。『スレイプニル』起動時に予め保存されていたデータによれば、宝石に蓄えられた魔力の九割を消費する事により、その突進力は得られる。

 

キィィィィィィィィィィィィィィィィィ

 

さらに、衛宮先生は『スレイプニル』が私の所に移動する時、宝石一個分の魔力を使ってしまうと言っていたが、半分以上が残っていた。衛宮先生が改良してくれたのか、距離が近かった為に残っていたのか、唯の計算ミスか、理由は解からないが幸運だったとしか言いようが無い。準備は整った私が悪魔を倒せなくても良い、悪魔の魔力の波長と魔力放出量の強い場所の解析は行っている。既に後はタイミングだけ

 

「コウテイすルダト・・・・・・クッ・・・クカカカカカカカカカカッ、カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!! ドウやラ、アルジがムノウダトソのジュウシャもムノウラシイ・・・ニンギョウごトキがズニノルデナイワ!!」

 

悪魔の体から黒犬が飛び出した。

 

ゴリュ

 

邪魔な黒犬をドリルで薙ぎ払う。悪魔はまだ動けない様だ

 

魔力回路――――――――― 問題無し、

 

宝石残存魔力量――――――――――― 一、二番フル、三番六割強

 

動力部残存魔力――――――――― マスターからの供給が極少の為、三番から魔力を供給。

 

体に纏った魔力を消し、ドリルの先端に集中する。

 

ブースターオン

 

目標、悪魔の左脇腹・右胸から強い魔力を確認。

 

解析結果、周囲の魔力と検証。

 

検証結果、右胸、魔力の波長に一致が見られず目標から削除。左脇腹、魔力の波長一致、核の可能性大。

 

第一番の宝石に回路接続、接続完了。

 

「『疾く―――――(スレイ―――)

 

ィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!

 

―――――――――駆ける者(プニル)』!! 」

 

『スレイプニル』を発動した瞬間、私は悪魔の目の前に居た。魔力の螺旋が悪魔を貫く、

 

ザアァァァァァァァァァァァァ!!

 

止まる為にドリルを地面に当て、スピードを緩めて私は振り返りる。かなり地面が抉れてしまったが如何にでもなるだろう、私はそう思い悪魔を見た。悪魔の体は、左胸の中間から左胴体の殆どが無かった。

 

悪魔が動く気配は無い、念の為に悪魔の体を解析する。コレは・・・・・・移動!! 左脇腹に在った筈の魔力の反応が、今は頭に在る。私は直ぐに『スレイプニル』を再起動させようとしたが、左腕・肩の魔力回路がエラーを起こしたので『スレイプニル』をパージし、再装着する。

 

パシュ

 

何かが抜ける様な音と共に装甲が外れる。私は横に移動し、悪魔に向かって走る。既に起動コードは入力した。

 

ガチャン!!

 

背にあったブースターが右足の裏に、腕を包んでいた装甲が右足の膝から下を包み、手首から先にあったドリルが右膝に装着される。

 

第二番宝石に回路接続、接続完了。

 

動力部より魔力放出、稼動の為に第三番宝石から魔力を供給。第三番宝石の魔力残量、四割弱へ。

 

私はブースターを点火させ、跳ぶ。

 

ギシリ

 

体が軋む。私は手を伸ばし悪魔の頭を掴み、引き寄せる

 

バシュッ

 

風船が破裂するかのように、悪魔の首から上が無くなる。私はその勢いのまま衛宮先生達の方へと、地面を削りながら転がる。衛宮先生に知らせなければ、悪魔の■■は常に■■しており、体は■■の■でしかないと、私は周囲が結界の様なもので包まれるのを察知しながら、ノイズが走る頭で考えた。

 

 

 

 

Side 士郎

 

振り向くと其処にはアンリが居た。俺が声を掛けようとすると

 

「何やってんだ!! この大馬鹿が!!」

 

ペチン

 

と頭を叩かれた。・・・いや別に痛いという訳ではないんだけど。

 

「なんでさ」

 

「なんでさっじゃねぇーー!! お前、自分が何やってたか分かってんのか! 「俺」なんかに引き摺られやがって」

 

いや、そう言われると言い返す事が何もないんだが

 

「はぁ〜もういいや。同じ事を二度もやる様な奴じゃないし、俺の力も少し扱えるようになったみたいだから良いか。(どの道、切欠がなけりゃあ使える様にならなかったかもしれないし)」

 

「アンリの力?」

 

俺が聞くとアンリが説明し始めた

 

「そう俺の力、士郎の左手から左肩まで俺と同じような模様が浮き出てるだろ? それは俺の力をちょこっと使えるようになった証みたいなもんだ。」

 

アンリの<この世全ての悪>の力、俺はその力を身を持って体験している。

 

「今は呪の無効化位かな? まあ、当たり前の事だがこの世全ての悪を越える様な呪は無理だぞ? あるってんなら見てみたいけど」

 

「そうか」

 

怖い、自分の中に在る力が怖い。俺はその思いを一端仕舞い込み茶々丸の方えと顔を向けた。目に入ってきたのは地面を転がってくる茶々丸だった。俺は直ぐに茶々丸を受け止め、大雑把に全体を見た。茶々丸の損傷は酷いものだった、所々に罅が入っておりボロボロだった。この様子だと回路の損傷も在るだろう、俺は回路の損傷具合を確かめようと『解析』しようとした時、茶々丸が俺の服を掴んだ。

 

「茶々丸、大丈夫か?」

 

俺が聞くと

 

「大丈夫とは言い難いですが、大丈夫です。スリープモードに入ればある程度は事故修復プログラムが修復してくれますが、魔力回路の方は取り替えなければなりません。それよりも、衛宮先生アレの本体は常に移動しています。それと、右胸にアレとは違う魔力を感知しました。」

 

「そうか」

 

俺は一言そう言い茶々丸を寝かせた。

 

「ネギ、アスナ、二人を見ててくれ。それと茶々丸」

 

「何でしょうか」

 

「明日は回路のそう取替えだ。しばらくは動けないからな覚悟しておけ」

 

「はい」

 

視界の端に見えた茶々丸の顔は微笑んでいる様に見えた。

 

「ツギハ、オマエかニンゲン」

 

悪魔が笑う、自分の勝利を疑わぬまま、嘲りを浮かべた顔で

 

俺は何も言わずに剣を探す。剣は直ぐに見つかった、後は抜くだけ

 

「投影・開始」

 

俺は呪と共に走り出す。右手には、美しい褐色の剣

 

炎の呪には、氷の祝福だろ? 

 

俺は、俺の後ろで闘っている少女に心の中で問うた。