「ほ〜、やっぱり士郎の中と外じゃ全然感覚が違うな」

 

「そんなに違うのですか?」

 

「本体の中に住んでいる奴が言うんだから、そうなのだろう」

 

実は今まさに大停電の始まる三分ほど前なのだが、暢気に話しているのはチビアンリ、チビ刹那、チビ士郎、である。

何故「式」である彼らが居るのかというと、話は約30分程前に遡る

 

 

 

side 士郎

 

師匠とカレンの突然の訪問というイレギュラーが在ったが、作戦会議は意外と早く終わった。残る問題は、連絡方法だけなのだが携帯を使えば何とか成るだろう

 

「連絡は携帯を使えば何とか成るだろう」

 

俺は思った事をそのまま口にすると、刹那が

 

「いえ、携帯よりも良い物が有ります」

 

と言い、符を取り出した。

何でもこの符を使えば小さい自分が作れるらしく、作り出した本人と繋がって居る為、会話も出来ると言うので渡された。

最初に桜咲がお手本として作り出したのだが、驚く事に術者本人が操るだけでなく自立した物だった。俺が驚いていると桜咲が作り出した分身? この場合は「式」が俺の目の前に飛んで来て、ペコリと頭をさげ

 

「どうも始めまして、私の事はチビ刹那と及びください」

 

と自己紹介してきた。

驚く俺を余所に師匠とカレンはお茶を啜っているが、意識しない事にする。続いて龍宮さん、長瀬、が自分の「式」を作り出したのだが(長瀬は結構手こずっていた)なんと言うか、どれもカワイイ・・・・・・俺が三人の「式」を見ていると

 

「あら、次はどの娘を襲うか品定めでもしてるの?」

 

「うっさい黙れ極悪シスター!!」

 

とカレンにチャチャを入れられたので返したが、距離を取るな!! 三人娘!! 

 

「次は、士郎殿の番で御座るよ」

 

と長瀬に言われたので、魔力を込めて見たんだが・・・なんか違うのが出てきた。

ソレの体には至る所に不思議な刺青がして有り、その表情は「遣り遂げた!!」といった感じだがソレが纏う雰囲気は俺の知っている物で・・・

 

「もしかして、アンリ?」

 

俺がそう言うと

 

「おう」

 

と答えた・・・・・・何で出られるの?!

 

「あー悪いとは思ったんだが、偶には外に出たいな〜と思って色々とやってたら出れた」

 

「色々って・・・まあ良いけど、俺の中にあるアンリ・マユは如何なってるんだ? 俺の中に残ってるのを感じるんだが。それに姿と口調が違うのは何で?」

 

「俺は意識体だから力の殆どは全部士郎の中に有るぞ。ああ、心配はない士郎が負の感情に身を任せない限り暴走する事は無いし、大体俺は士郎の一部みたいな物だから制御出切る筈だ。(ある思いを持って居なければだけどな)姿とかが違うのはアレだ、コレが俺本来の物だからなんだけど・・・アレだろ士郎は俺の恩人な訳だし、礼儀正しくしとこうかな〜と思ってな姿も口調も変えたんだけどよく考えてみたら偽りの俺より素の俺を見せないといけない気がしてな。」

 

「これでも気ぃ使ってんだぜ〜」と言って頬を掻いた。照れているのだろう。それは嬉しいんだが、桜咲達に何て言おう

 

「士郎ソレは、彼方ですか? もしかして今の姿も、偽りの物とは言いませんよね?」

 

と鋭い指摘を受けた。マズイ言い訳が思いつかないと心の中で焦っているとアンリが

 

「それはないぜ、お嬢ちゃん自己紹介しとくが俺は衛宮士郎じゃない。そうだな・・・アンリって呼んでくれや、住処は士郎の中だ。多分、この中では一番士郎と付き合いが長い」

 

と言ってフォローしてくれたので

 

「まあそういう事だ」

 

と頷いて置いた。別に嘘を付いている訳でもないしな、桜咲は「そうですか」と言い納得してくれたようだ。

俺は桜咲からもう一枚符を貰い、次こそ自分の「式」を作り出したが・・・・・・自分で思うのも何だがアイツに似すぎ・・・ご丁寧に格好まで同じだし、事実だから文句言えないけど・・・

時間を確認すると大停電まで後十数分だったので師匠とカレンにこれから仕事が有る事を伝えた。

 

「仕事ならば仕方ないな、ワシ達も御暇するとしよう」

 

と言い立ち上がったがカレンが

 

「ゼルレッチ翁アレを渡すの忘れていますよ」

 

と言った。すると師匠が「おお忘れておった」と言い懐から水晶玉・・・・・・みたいな宝石を取り出した。

 

「士郎、何処でも良いからコレを部屋に置いて置け」

 

「なんですかコレは?」

 

と俺が聞くと

 

「お前の世界をリアルタイムで見るための魔具だ。宝石剣の亜種と思えば良い、説明してもお前は理解出来そうに無いしな。因みに録画、再生、巻き戻し、早送り機能付じゃ。もっともコレはワシ達の世界にあるコレと同じ物に伝えるだけだから使えんが」

 

師匠、そんな凄い事サラリと言われても何もいえないのですが

 

「それではな、その内また来る」

 

「士郎、ウサギは寂しいと死んでしまうのよ? 偶には戻って来なさい子供達も会いたがってるから、解かった? 私達の狼さん」

 

と言って二人は帰って行った。・・・また来るのか? あの人は・・・俺がそう思っていると声を掛けられた

 

「衛宮先生」

 

「なんだい龍宮さん?」

 

「その龍宮さんと言うのを止めてくれないか? 私たちは今日限りかも知れないが仕事を一緒にする仲間なのだから名前で呼んで欲しい」

 

と言った。その発言に賛成する様に

 

「「それもそう(でござるな)ですね」」

 

と言いったので、お互い名前で呼ぶ事になった。俺に拒否権は無いらしい・・・どうして俺の周りに居る女性は強い人が多いのだろうか、俺は少し悔しくなったので聞いてみた。

 

「なあ龍・・じゃなくて真名、どうして名前で呼び合うんだ? 別に名字でも良いと思うんだが」

 

真名は

 

「そうだな・・・・・・信用・信頼の意味を込めてかな? 私は先生の強さを知らないが、刹那達から聞いている。あの二人は彼方の強さを認めている。自分では敵わないとね…だったら私も認めようと思って」

 

と言った。参った、そんな意味が込められて入ると成ると反論できない。俺はそう思い、もう一度寝室に入り小さな箱と装飾品(ブレスレット・イヤリング・ネックレス)を取ってきた。信頼には信頼で信用には信用で返さないとな

 

「やるよ」

 

俺はそう言い、小箱とイヤリングを真名に渡した。真名は小箱を開け中身を取り出し取り出した物を凝視した。

 

「これは・・・・」

 

「俺にもまだ言えない事が色々と有ってな、ソレの名前は「クルークニス」祝福儀礼を済ませた銀弾に牧草地(光)のルーンに大鹿(守護)のルーンを刻んである。いざって時に使ってくれ、それとコレはお守りみたいな物だ」

 

と言い刹那にはブレスレット、楓にはネックレス、真名にはイヤリングを渡した。ブレスレットには勇気・勝利を意味する戦士のルーン、ネックレスには保護・忍耐力を意味する大鹿のルーン、イヤリングには力を与えると共に洞察力を得る太陽のルーンを刻んである。俺の渡した装飾品に共通するのは肉体的治癒力を上げる水のルーンが刻んであること因みに俺が三人に渡した物は「イーグル・アイ」の裏の新商品だったりする。

 

「良いんですか? こんな高価そうな物を」

 

「良いんだよ」

 

俺はそう言って師匠が届けてくれた聖骸布のコートを羽織、外に出た。

 

 

回想終了

 

 

「アンリ外に出れて嬉しいのは解かるが、少し静かにしてくれ」

 

俺は楽しそうにチビ刹那・チビ士郎と喋っているチビアンリに言うチビアンリは「え〜〜」と言いながらも静かにしてくれた。時計の針が八時を刺したと同時に、全員が自分の「式」に意識を繋げる。

 

「士郎、彼方の「式」を此方に回してください」

 

チビ刹那を介して刹那が言う、

 

「もう向かわしている。時期に其方に着く筈だから着いたら連絡してくれ、それでは作戦開始」

 

俺はそう言い、魔帆良郊外の森に向かって走り出した。

 

 

 

 

Side out

 

時は数分前に遡る。誰も居ない学園長室に一つの影が現れる、影は周りを見回す様な仕草を見せ学園長の机・・・正確には机の上に有る魔道書に向かって手を伸ばし何かを呟く、するとガラスが割れるような音が微かに響き魔道書から黒い炎・・・いや紫炎と言った方が正確だろう。紫炎は獣の様な姿を取り影を睨み付けるが影は笑いながら言う。

 

「如何した炎の魔獣よ腹が空いているのだろう? 魔力が枯渇しかけているのだろう? ならば喰らえ、餌は用意した。己が本能で探し出せ、此処には良質の魔力を持つ者が沢山入るぞ? さあ、探し出せ!! そして喰らえ!! 封印される前の力を取り戻せ!! 力を取り込み新たに生まれろ!! 私が新たなるお前を祝福しよう」

 

影がそう言うと炎の獣は風の様にその場から消えた、魔道書と共に・・・・・・影はそれを確認すると

 

「クククッ苦悩する奴の顔が見れないのは残念だが…しかたない、宴の準備は整った・・・・・・新たに生まれ変わる炎の獣に、神の祝福があらんことを……アーメン」

 

そう言い残し、消えた。

 

 

 

魔帆良郊外の森

 

普段から人が寄り付かない場所に彼等は集まっていた。彼等が五人一組になり四つの組に別れ別々に用意をしていた時、異変は起こった。

最初に気付いたのは誰かかは分からない。ソレは最初からそこに居たかの様に、彼らを見ていた。彼らの中の一人……チームリーダーと思われる者が言った。

 

「誰かその犬を追い払え、我々が今から取り掛かる作戦はあの方に取って重要な物なのだぞ。作戦中に遠吠えでも上げられて集中が乱れてはたまらん」

 

男の言葉に従い、一人が犬に近づき犬ではなく犬の近くに石を投げた。石を投げた者以外の者は一人動いたのを見て、さっさと自分の作業に移っていた。

彼らは知らない。既に自分達は逃げ道を絶たれている事を・・・・・・

数分後、大量の遠吠えと共に悲鳴が上がった。後に残ったのは人型に焼け焦げた地面と、大量の後と肉の焦げた臭いそして・・・僅かに残った禍々しい魔力の残滓のみ。漆黒の夜空に月が昇り、星が輝く、これから始まる宴を祝福する様に・・・・・

 

 

 

 

 

あとがき

 

お久しぶりです? BINです。腹が痛い・・・物理的にも精神的にも・・・・まぁ、何時もの事なんですけどね♪

次回も遅くなりそうです。頭の悪い学生を許してくださいozu

 

レポートが間に合わねぇ・・・