「俺はね大悪人なんだ」

 

俺と同じ名前の兄ちゃんはそう言った。

 

でもソレは嘘だと思った。だって兄ちゃんの背中は

 

今まで見てきたどんな大人よりも

 

今まで見てきたどんな魔法使いよりも

 

大きくて、カッコよかったから

 

 

 

 

 

第十六話

 

 

「自己投影・開始(トレース・オン)」

 

魔術回路に二十七の撃鉄を落とし魔力を流す

 

―――剣の丘より聖人・聖者の使用したとされる武器武具を検索

 

―――該当数件、該当する物の中から聖ジョージの剣・アスカロンを選択

 

―――憑依経験開始、同時に聖ジョージの信仰心に同調開始

 

―――憑依経験完了、信仰心の同調完了

 

今此処に己すら騙し、聖人の力を模倣し尽くす

 

「自己投影・完了(トレース・オフ)」

 

「我、十字ノ使徒也」

 

Side out

 

 

士郎は怪物に向かいながら詠唱を始めた

 

私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。

我が手を逃れうる者は一人もいない我が目の届かぬ者は一人もいない

士郎は怪物の前に立つと腹の付け根を掴み壁に押し当てる。紡がれる力ある言葉・・・詠唱は終わらない

 

打ち砕かれよ。

敗れた者、老いた者を私が招く。

私に委ね、私に学び、私に従え。

休息を。

唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、

私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる

手足を凍らされ動けない怪物は、如何にかして動こうと唯一動かせる頭を動かす

 

装うなかれ。

許しには報復を、信頼には裏切りを、

希望には絶望を、光あるものには闇を、

生あるものには暗い死を

 

士郎は壁に押さえ込んでる怪物を削りながら歩く

 

休息は私の手に。

貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。

永遠の命は、死の中でこそ与えられる。

―――許しはここに。受肉した私が誓う

 

「―――“この(キリエ)()()憐れみ(レイソン)”」

 

その場に光が満ち溢れた。

その光は神々しく何よりも強烈、エヴァンジェリンは顔を顰め思った。

 

(コレが魔法ではない奇跡だと? 魔力は感じるが、詠唱がラテン語では無い。まさか・・・・な魔法では無い奇跡「魔術」とでも言うのか? それこそ人が生み出した幻想にすぎん。それよりも、コレほどの力を使える者が百年以上前に居なかったのは幸運だったな。コレを喰らったら真祖といえども跡形も無く浄化されてしまう。・・・・何所で習得したのか問いたださねば!!)

 

光が消えると其処に在ったのは、怪物を削った時に残った壁の汚れと何かを呟き子供達の方へ駆け出した男の姿だった。

 

 

Side 士郎

 

怪物を浄化し終わった後、俺は三人の下へ走った。

 

三人、凛と士郎は涙を必死に堪え

 

桜は涙を流しながら「ごめんなさい」と吐いていた

 

俺は子猫を見てから手を当て、さらに視る。そして分かったのは子猫達が持って数時間、もしくは今すぐにでも事切れるということだった。俺は子猫達を心配し俺の後ろに控えていた茶々丸と、茶々丸に着いてきたエヴァに聞く。

 

「茶々丸、エヴァ、幻想種いや悪魔の物でも良い。体の一部を持っているか?」

 

「幻想種? ペガサスや天然の竜種の事か? 残念ながらそんな物は持って無いぞ」

 

「・・・・・・・・有ります。たしか『別荘』に悪魔の羽が一対保管されている筈です」

 

茶々丸の言葉に反応したのはエヴァだった

 

「悪魔の羽?・・・・・・ああ、そう云えば昔むかつく悪魔を氷付けにして記念に羽だけチャチャゼロに切らせて採っておいたのが有ったな。で? それをどうするんだ?」

 

俺にそう聞いてくるエヴァに

 

「何、エヴァには悪いが使わせて貰うだけだ。その代わり俺の知る魔法薬のレシピをやる、血行促進に美肌効果も有って不味くない奴だ」

 

と言った。俺は子猫達二匹を抱き上げ聞く

 

「処で『別荘』までどれ位の距離が有るんだ?」

 

俺の問いに茶々丸が答える

 

「『別荘』は家に有ります。『別荘』とは此処とは時間の流れが違い、此方の三時間が一日になり、魔力(マナ)も豊富な為今のマスターも魔法薬の補助無しで魔法が使える場所です。一日しか居れませんが」

 

一日か・・・ソレだけ在れば十分だ

 

「分かった。今からエヴァの家に行くが、良いかな?」

 

「構わん。元々お前とは魔法薬に付いて話す約束だったしな(美肌効果・・・・)」

 

「それじゃ行こ「兄ちゃん」ん?」

 

士郎が涙を堪えながら俺の服を掴み言う

 

「助け・・・・られ・・るのか・・・本・・当に・・助・・け・られるの・・か」

 

凛が続く

 

「大・・丈夫・な・・の? 」

 

桜が嗚咽交じりに言う

 

「おねっ・・がい・・します・・そのっ・・子・達を助け・・て・ください!!」

 

俺はしゃがんで三人に言う

 

「ああ、助ける。助けて上げるから、士郎君、君はこの子達を助けて上げる報酬として強くなれ。そして大事な人だけ護れる用に成りなさい、そして余裕があったら他の人を護りなさい。もし君が大事な人を切り捨てたり、犠牲にするという選択をするのなら君は『千の呪文』を越える前に『マギステル(正義の)マギ(味方)に成る前に君の望む正義の味方には成れないという事を覚えておきなさい

 

次に凛の目を見て言う

 

「凛ちゃん、君は士郎君が無茶をしない様にしても大丈夫な様に、もっと魔法を学びなさい。知識を溜め込み活用しなさい」

 

最後に桜の頭を空いている手で撫でながら言う

 

「桜ちゃん、君はお姉ちゃんと士郎君を支えて上げなさい。二人が無茶をしたら怒って上げなさい。二人にいっぱい甘えなさい。そして常に心を強く持ちなさい」

 

俺は三人にそう言い、茶々丸に言う

 

「急ぐぞ茶々丸!! エヴァを抱えろ「強化開始(トレース・オン)」」

 

「マスター失礼します」

 

「仕方ない」

 

俺は体を強化し、茶々丸はエヴァを抱いて最高速度でエヴァの家へと向かった。

 

Side エヴァ

 

家へと向かっている間、私は先ほど士郎が言った

 

「大事な人を切り捨てたり、犠牲にするという選択」

 

という言葉を何故あの少年に言ったのかが気になり聞いた

 

「おい、士郎」

 

「なんだ、エヴァ」

 

そうかえす士郎は、かなり速い速度で走っている。うむ・・・普通の魔法使いが使う身体強化とは違う術を使っている様だ。最初は「氣」を使った身体強化かと思ったが、僅かだが魔力を感じるので違うと私は判断する。

 

「先程の言葉の意味がよく分からん。説明しろ」

 

士郎が「ギル」と吐いたが、意味が分からないので無視する事にする。士郎は、少し考える様にして軽く目を瞑って言った。

 

「あの子は「千の呪文」を超えると言っただろ? 彼の英雄譚は俺も聞いている(タカミチから)どれも、多くの人を救った素晴らしい物だ。だから言ったんだよ。彼が絶望する前に・・・・独りにならないように」

 

私は士郎の言葉の意味が分かった

 

「成る程そういう事か。ククク・・士郎お前は酷い奴なのか、ただのお節介なのか良く分からない奴だな。しかし、正しい。正しいが故に厳しく、酷いな。あのガキがその意味を解るまでどれ程の時間が掛るか判らないし、解る事が出来ないかもしれないというのに」

 

「解らなければ、あの子はその程度の器しか無かったというだけだ。それに俺の言った言葉を覚えてくれていたら、あの子が折れる事は無い。何故なら」

 

士郎は何かを言おうとして止めた。目の前には私の家が在る。茶々丸は私を下ろし士郎を誘導するようにドアを開け『別荘』へと向かった。

 

 

 

Side out

 

士郎は茶々丸の後に続き家に入り、一度子猫達を『視』てから後から入ってきたエヴァンジェリンに連れられ奥へと進む。そして、そこに在ったにはミニチュアの家を水晶に入れた様な物。

茶々丸が口を開く

 

「衛宮先生、これが『別荘』です。触れれば中に入れます。」

 

士郎はそう言った茶々丸に子猫達を渡し、言う。

 

「『此方』の時間で三十分ほどしたら子猫達と一緒に来てくれ、それまでに完成させている。後、状態が悪化したら時間など気にせず入って来い。それじゃあエヴァ、着いてきてくれ」

 

士郎が水晶に触れると部屋に光が満ち、士郎ごと消える。エヴァンジェリンは士郎が『転移』したのを確認すると、自分も水晶に触れ転移した。

誰もいない部屋に茶々丸の声が響いた。

 

「衛宮先生、どうかこの子達を救ってください」

 

 

 

 

side『別荘』

 

「どうした、時間が無いんじゃ無いのか?」

 

エヴァンジェリンの言葉で士郎は一度瞬きをし、言った。

 

「いや、流石に驚いた。」

 

士郎の言葉を聞き、エヴァンジェリンは「フン」と鼻を鳴らし「着いて来い」と言いハウスに歩いていった。士郎は慌ててエヴァンジェリンの後を追う。

ハウスの中は以外にも広く、食料も豊富にあり、風呂もあると言うエヴァンジェリンの説明を聞きながら陣を敷くのに適した場所を探していた。

エヴァンジェリンは、士郎に「羽を取ってくる」と言い奥へと消えていった。

士郎は、スーツの上着を脱ぎ裏ポケットか小振りのルビーを六個取り出し魔力で溶かしながら陣を書き始めた。

陣に込める意味は『変質』『固定』『保存』『同化』『吸収』『安定』『定着』七つの意味を持つ陣を内に、『収集』『選別』『排出』『流転』の意味を持つ陣を外に刻み込む。

総ての陣を把握し、陣が打ち消し合う事の無い様に術式を構築し、己が血を持って足らなくなった宝石の代用とし、己が頭に構築された精密な陣を己が持つ総ての魔道の知識を使い書き上げる。

士郎は陣を書き上げると軽く息を吐き、魔力を流し起動させる。士郎の生まれた世界の魔術師達が見れば、確実に大魔術の部類に分類されるであろうその「魔法陣」はその効果を発揮しだす。

最初に『別荘』のマナが著しく低下した。次に魔法の中央に混じりっけのない純粋な魔力が集まり、四散する事無く留まり密度を上げていく。そして、士郎の後ろにアカイアクマにも匹敵するほどの「殺す笑み」を浮かべたエヴァンジェリンが立っていた。

 

「説明してもらうぞ、衛宮士郎?」

 

士郎は血の足りない頭で思った。

 

ゴッド、この間言った事は取り消しますから助けてください。

 

 

 

Side 茶々丸

 

私が衛宮先生の指定した時間通りに『別荘』の中に入ると、そこには

 

虚空を見上げ何かをブツブツと小声で言っている、衛宮先生と

 

僅かに汗を掻いて「如何したものか」という顔をしているマスターが居た。

 

・・・・・・取り合えず、衛宮先生に帰ってきてもらわなければ

 

「衛宮先生」

 

違うんです先生・・・もう一週間もまともに寝てないんです。だから今晩は堪忍してくだ・・・・「破壊」しないで〜!!

 

声を掛けても帰ってくる気配が無いので、私は子猫達を一度マスターに預け拳を握り

 

「衛宮先生起きてください」

 

ゴメス!!

 

シェイクシェイク、ブレインミキサーだー♪ 

 

「藤ねぇ!! 2×歳にもなってその格好は止めろ!!」

 

衛宮帰還。どうやらワンダーランドに逝ってたらしい、私は敢えてツッコまず話しかける。

 

「衛宮先生、子猫達を連れてきました。」

 

「ん・・・あ・・・解った。陣の中央に横にしてきてくれ、横にしたら『悪魔の羽』を被せて戻って来てくれ。それとエヴァ」

 

「何だ」

 

衛宮先生はマスターの方を向くが、マスターは何故か目を合わせようとはしない。どうやら罪悪感が少々在るようだ。

 

「ちょっと、血を分けてくれ」

 

と言い。自分の親指の腹を噛み切る。マスターも『血』という言葉を聞き、衛宮先生が何を仕様としているのかを理解したのか不敵に笑いマスターは「高いぞ?」と言い。親指の腹を噛み切った。

衛宮先生は、まだ自分の手の中に有る『羽』に『血』を付ける。マスターも衛宮先生と同じ様に『血』を付ける。そして私の抱いている子猫達にも付け、袖のボタンを千切り取りボタン裏に付けてある宝石(小さすぎて売りにも出せない屑宝石)を取り『羽』と『子猫』に付ける。

私は『羽』を受け取ると、衛宮先生の指示した通りに子猫を横たえ戻る。衛宮先生はソレを確認すると陣の一部に手をあて、言葉を紡ぐ。

 

 

Side out

 

「同調開始(トレース・オン)」

 

始動キーは使い慣れた言葉。陣に魔力を奔らせ詠唱が始まる。

 

告げる

我は総ての闇を秘める者

我は無限が一の光を貫く者

 

陣が唸りを上げ、淡い紅の光を放ち、純白の魔力が二つに別れる。

 

我は常世総ての世界が半身

 

我は常世総ての光纏めし剣が鞘にして、門の守護者

 

『羽』が『変質』し始める。『子猫』の体が『羽』と『同化』し始める。

しかし、『子猫』の体は『変質』する事なく元の形を保ったまま『固定』されている。

 

誓いは此処に

我は汝らが死を掃う者

我は汝らが生を与える者

 

『変質』した『羽』は『子猫』の傷を埋める様に『同化』し

残りは全て『子猫』の体に『吸収』される

其々が持つ『力』は『子猫』を『変質』する事無く元の姿を残したまま『保存』される

 

死の対価は此処に

汝らが旧き死を

命の対価は此処に

我らが命の通貨を

 

『子猫』の体が『力』に耐え切れず脈動する

二つに分かれた純白の魔力が『子猫』の体を魂を包み、形を変えず『変質』し『力』が『安定』する。

 

この意、この理に従うならば答えよ

我は汝らを庇護する者

我は汝らに新しき死を命じる者

悪には悪を、善には善を

死には死を、生には生を

報酬には対価を

我は汝らを供とする者

旧き死を差し出し、新たに生まれよ魔性のモノよ

 

 

詠唱が終わった瞬間。問いに答える用に、陣の全てに亀裂が奔り甲高い音を発てて砕け散った。陣を作成するのに用いた宝石が、血液が、春に咲き刹那の間に散ってしまう桜の花の用に舞い上がり、落ちてゆく。

その、なんと美しい事か。幻想的という言葉は、この為に在る様な言葉だとエヴァンジェリンは思った。

茶々丸は、陣が砕けたのと同時に駆け出し子猫達の無事を確認し優しく抱き上げた。すると、今まで虫の息同然だった子猫達がか細く鳴いた。茶々丸は振り向き士郎に言った。

 

「ありがとう御座います。衛宮先生」

 

士郎は、難しい顔をして言った。

 

「礼には及ばん。生徒が困っている時に助けるのは教師として当たり前の事だ。それにまだ遣る事が残っている。エヴァ、他にこの『別荘』と同じ物は有るか? 後、宝石も幾つか貰えると嬉しい」

 

士郎の言葉にエヴァンジェリンは考え込む様に、指を顎にあて数秒してから「有るぞ」と言った。

 

「幾つだ」

 

士郎の質問にエヴァンジェリンは簡潔に答え、疑問を提示した

 

「『此処』を合わせて十は有る筈だ。コレばかり探してみないと分からん。宝石の方は適当に捜せ、他の『別荘』を探すのには貴様に手伝って貰うつもりだしその時に一緒に探せば良いだろう。さて、次は私の問いに答えてもらうぞ、士郎? その猫達を『使い魔』にするのは成功した。成功したのに何故『別荘』が要る」

 

「確かに『使い魔』にする事は成功した。しかし、生きる為の方法を教えていないし時間も無い。俺やエヴァの魔力は無限ではないし、『此処』を出ると俺は大丈夫だがエヴァは封印状態に戻って魔力も激減する。コレはこの子達の為でも有るし、エヴァの為でも有るんだよ」

 

士郎は最後に「ごめんな」と言い。エヴァンジェリンは顔を薄紅に染めて「さっさと着いて来い」と早口に言い、倉庫に向かった。

発見した『別荘』は十三個、内使える物は九個。後の五個は整備をしなければ使えない物が見つかり、士郎はエヴァンジェリンと『別荘』整備を行い。残った時間で『別荘』の改造を行った。茶々丸は寝てしまった子猫達の様子を見ながら士郎とエヴァンジェリンを眺め、自分のメモリーに保存し誰にも聞こえない程の小さな声で言った。

 

「衛宮先生・・・貴方はこの子達だけではなく、マスターも救ってくれています。だから・・・もう一度言います、貴方は「当たり前の事だ」と言うかも知れませんがもう一度言います。ありがとう御座います、衛宮先生」

 

茶々丸はそう言い。二人と二匹を眺め続けた、誰にも知られず『微笑み』ながら。

そして、『別荘』での一日が過ぎ『元の世界』の三時間後に戻った三人と二匹は急ピッチで新たな陣を敷き『別荘』の全てを連結し茶々丸と二匹の子猫は、直に『別荘』に入りエヴァンジェリンと士郎は数回言葉を交わしエヴァンジェリンは別荘に、士郎は自分の部屋へと向かった。お互い最後に言った言葉は

 

「やっぱり俺も残った方が良いんじゃないのか?」

 

と言う心配そうな士郎の言葉と

 

「大丈夫だと何度も言っているではないか!! 私は最強最悪の悪い魔法使い『闇の福音(ダーク・エヴァンジェリン)』だ!! マナの吸収の仕方ぐらい教えられる!!」

 

という、自信と少しばかりの怒りを含んだエヴァンジェリンの言葉。士郎はもう少し食い下がろうとしたが、これ以上は得策では無いと思い自分の部屋がある寮へと向かった。

士郎は寮に帰る途中、普通なら飛んでいる筈の無い鳥に向かい言った。

 

「俺の大切な物に手を出してみろ、この世に生まれた事を後悔させてやる」

 

そして木の枝に止まり此方を視ていた鳥を睨みつけ、二本の黒鍵を投影し投げつけた。残ったのは空から落ちてくる紙屑と、木の枝に引っかかり弱い風にヒラヒラと揺れる紙屑。士郎は携帯を取り出し連絡を入れると再び歩き始めた。

 

此の時、世界に一人の不幸な人間が誕生した。

 

それは、彼の怒りに触れた者。

 

それは、彼を『戦う者』に成る為の理由を作ってしまった者。

 

それは、彼と彼の『協力者』の利害を一致させ『彼等』を動かす原因を作ってしまった者。

 

今、誕生してしまった不幸な人間は知らない。知る筈も無い。『彼等』は魔帆良において、共に『最強』であるという事を