赤い魔術師と魔法使い 第6話
夢を見ている。赤い世界、助けを求める声。そして、黒い、黒い太陽。太陽から流れ出る黒い泥が町を、人を、そして、俺を侵食する。ああ・・・これは夢だ、俺の覚えている一番古い記憶、俺が衛宮 士郎ではなく■■ 士郎だった頃の最初で最後の記憶・・・・・・
「シ・・・さ・・」
「起き・・・だ・さい」
ネギの声が聞こえ俺の意識が覚醒する。そして、最後に見たのは今にも泣きそうな顔をして「よかった」と言っている親父・・・切嗣の顔だった
「シロウさん、シロウさん!!」
「いつっ・・ネギ大丈夫だったか他の人達は」
「大丈夫ですよ。シロウさんは大丈夫なんですか? ボクたちは落ちてすぐに気がついたんですけど、シロウさんはこのかさんを抱いたまま倒れていたのでビックリしましたよ。長瀬さんが「気絶しているだけ」と言ってくれなかったらボク・・ボク・・・・」
しまった、ネギを泣かせてしまった。
「だっ大丈夫だぞネギ、ほっほらこのとおり」
俺はネギを安心させるために、体を動かす
「ホントですか」
心配いそうに俺を見るネギ、まだまだ未熟だな俺は・・・・・
「ホントだよネギ。それより此処は何処なんだ?」
ネギはゆっくりと話ながら他の人達のこと連れて行ってくれた。ここは、地底図書室という所で、魔法の本は手に入らなかったから時間ぎりぎりまで全員で勉強をするらしい
と俺に言った。
「ちょっと衛宮君、大丈夫なの!?」
神楽坂が心配そうに聞いてきた。「大丈夫」と笑いながら答えたら「よかった〜」と佐々木さんが言ってくれた。すると近衛さんが泣きながら
「衛宮君、ありがとな〜うちのこと庇ってくれてホントにありがとな〜」
と言って抱きついてきた、うれしかった助けられた事が俺は俺のなりたい者に少し近づけたような気がするから
「友達を助けるのは当たり前の事だろ。それより皆は勉強するんだろ? だったら俺が飯を作ってやるよ」
「ほんと〜!!」や「此処にいる間は美味しいご飯が食べれるアル〜」や「得したでござるな〜」と喜んでくれた。さて何を作ろうか・・・俺は食料が置いてあるという場所に向かった。俺が料理を作っている最中に近衛さんが来て「うちも手伝うな〜」と手伝ってくれた俺達の料理は好評だった
夜
時間帯的にはもう夜中だろう、隣を見ればネギ達が寝ているのが見える。俺は皆を起こさないように移動し自己鍛錬を始める。
「投影開始(トレース・オン)」
両手に干将莫耶出す。思い浮かべるは最強の自分、戦う相手は赤い騎士、剣を振るう・振るう。奴の干将を自分の莫耶で弾き、そのまま袈裟懸けに振り下ろす。弾いた筈の干将が俺の莫耶に当り軌道がずらされる。体を流され体制が崩れる。眼前に迫る莫耶を干将で防ぐが俺の干将が砕け鍛錬が終わり俺は息を吐いて
「何時まで見ている気だ長瀬?」
「やっぱりバレてたでござるか」
「何か用か」
俺は出来るだけ声を低くして聞いた
「一つ聞きたいことが・・・士郎殿は味方でござるか?」
長瀬はそんな事を聞いてきた。長瀬なりに友達を心配しているから俺を監視していたのだろう
「何の味方かは分からんが、俺は学園長に頼まれ学園の警備もしている。お前たちに危害を加えるつもりは毛頭ない、俺は守るだけだ。大切な者と平穏な日常を・・・とにかく敵でもなければ味方でもない、お前が敵になるのなら別だが」
「なら良いのでござるよ。拙者は士郎殿の敵にはならないでござるから」
と長瀬は言い、ネギ達の所に戻っていった。俺はもう一人隠れている人物に向かって話しかけた。
「それでは学園長、詳しく説明してくれませんか?」
「気づいておったのか」
学園長が少し驚いたように言って出てくる。この後、俺の仕事に近衛このかの護衛が追加され、明日学園長が化けたゴーレムを使いここから脱出することになった。俺は朝飯を作った後、侵入者の追跡または排除に向かう事になった。明日は大変そうになりそうだな
俺は台所と思われる所で朝食の準備をしている
「えみやん、お味噌汁出来たで〜」
何時の間にかこのかさん達の俺の呼び方が変わった。なんで変わったのかを聞いたらこのかさんが
「うち達と衛宮君は親友なんやろ?だったら愛称みたいなので呼ぶか名前で呼ぶのは当たり前やん」
と言われた。ここでも「えみやん」と呼ばれるとは、ネコさん以外に初めて言われたな。その後、俺も皆のことを名前で呼ぶか、あだ名で呼ぶ事になった。ちょっと嬉しかった
「じゃあ皆の所に持って行ってくれ、こっちももう少ししたら焼き上がるから」
今日の朝飯はアジの干物を焼いた物に、大根の味噌汁、白いご飯だ
朝飯の片付けをし皆には、出口を探してくると言って俺はその場を後にした。作戦開始だ
侵入者は直ぐに見つかった、いや自分から出てきたと言った方が良い。あのメンバーの中で一番強いのは俺だろうだから最初に潰して置こうとゆう魂胆だろう
「お前は何者だ」
俺は侵入者に聞く、答えるとは思っていない
「・・・・・・・お前には死んでもらう」
そう言って侵入者・・・男は札を投げつけてきた。
「遅い!!」
この程度速度ならば目を瞑っていても避けれる。符を使ってくる事から学園長が言っていた関西呪術協会の過激派だろう。避けた符が木に当った瞬間燃え上がった
「あんた西の過激派だろう、どうやって結界を誤魔化した」
「ちっ!! どこまで知っている!!」
男は焦ったように声を上げる。俺は皮肉げに口歪め
「お前達が近衛このかを狙っている事と西洋魔術師を恨んでいる事ぐらいだが、それがどうかしたか?」
俺は皮肉を込めて笑いながら言ってやった。男の雰囲気が突如変わる
「どうやって結界を誤魔化したのかを聞いたな!? こういう事だ!!」
男の体が変化・・・いや作り変えられる
「貴様!!魔道に身を落としたか!!」
男はすでに人では無くなっていた。その姿は正に異形の物、肘から角のような物が生え下半身は蜘蛛の様になり腹は縦に裂け巨大な目が出てくる。髪は抜け落ち角が生え、口は耳元まで裂けた。
「ソノトウリヨ、オレはクモノヨウマに呪ヲカケコノミにトリコンダ、マリョクヲアゲルタメニ、ケッカイはオレガアナをアけタアトホカノもノヲオトリニしタ」
男・・・いや魔物はそう言い飛び掛ってきた。飛躍的にスピードが上がり此方に突進しながら火を放ち、さらにスピードを上げながら向かって来る。火球を避け、振り下ろされる右腕を夫婦剣で受け止める。受け止めた瞬間背中が炙られるような感覚がしたので俺は魔物の横腹を蹴りながら横跳ぶ。ジュッ!! と右の脇腹が焼け驚愕と痛みに顔が歪む、魔物が放った火球が方向転換し戻ってきていた。コレも魔物に成り下がった物の力なのだろうかと考えながらも傷は塞がっていく、魔物が喋りだす
「スゴイダロ、オレモココマデツカエルヨウニナるトはオモッてイナカッタがな、ココデミツケタほンヲテニイレこのミニトカシタ「ねるがる」トカイテアッタナ。コレノオカゲでフアンテイだッたカラダもアンテイシタキサマはモウ死ヌシガァァァァァァァ――――――」
突然、魔物が苦しみだす
「アヅイアヅイアヅイアヅイィィィガ、ガラダガヤケルー!!」
何が何だか判らないが今がチャンスだと思い、俺は魔物から距離を取り投影で創りあげた弓に矢をつがえる
「I amが the bone of my sword 」
「偽・螺旋剣」
悶え苦しんでいる魔物目掛けて剣を射る。空気を巻き込みながら進む剣弾は魔物の腹、巨大な目を貫き
「壊れた幻想」
俺の言葉と共に剣は爆発した。魔物の体ごと・・・・・後に残ったのは爆発の衝撃で出来たクレ−ターと赤い本だった。
「これが」
多分コレが奴の苦しみだした原因だろう。俺は本を服の下に入れ出口に向かった今の爆発音で学園長も動き出しただろう
ボクは走りながらさっきの爆発音について考えていた
「(爆発音が聞こえてからすぐにゴーレムが現れた、もしかするとボクの他に魔法使いが・・・・?)」
「ネギ!!」
「シロウさん!?」
ボクはシロウさんの声で思考の海から引き上げられた
「ネギ!!」
「シロウさん!?」
俺は少ししてからネギ達を発見した、学園長は旨くネギ達を誘導していた計画どうりだ
「ネギ!!滝の裏に出口を見つけたぞ!!」
出口の扉は問題を解くごとに開く様になっているが、その問題も順序良く解いていった。途中、綾瀬さんが足を捻るというアクシデントがあったが(ネギが背負をうとしたが背負った後すぐに潰れてしまったので俺が背負った)学園長は途中で追い駆けるのを止めたらしい、気配は近づいているがもうエレベーターが見えてきた
「ああっ!! 皆さん見てくださいっ!! 地上への直通エレベーターですよっ!!」
ネギが指を指してゆう
「皆急いで乗って、乗ってーっ」
アスナが皆を急し全員エレベーターに乗ったら・・・・・・ブブ――――
「重量オーバーデス」
「いっ、いや――――!!」
アスナが叫ぶ
俺以外の人は、「地底図書室で二日間、えみやんの料理食べすぎたからアルか〜!!」や「まき絵さん今、何キロです?」などといい具合に混乱している。俺はこのかさんが持っている魔法の本を取って外に出た。
「えみやん!?」
このかさんが驚きの声を上げる
「シロウさん!! 早く戻ってください!!」
ネギが俺に戻るように言うがそれは出来ない
「ネギ、それは出来ない」
「どうしてですか!!」
「もしゴーレムがこの本を追って来たら如何する? 死人がでるかもしれないだろ、だからこの本は持って行ってはいけないんだよ。それにちょうど一人分オーバーだったみたいだしな」
「でも、シロウさんは如何するんですか!! ゴーレムが来るかもしれないんですよ!!」
「大丈夫だ足音が聞こえないだろ? それに俺を心配するならさっさと行ってくれ、時間が経つに連れて俺の生存率が下がるかもしれないんだからな。大丈夫、皆が上がった後すぐに俺も行くから」
俺は笑顔でネギの頭を撫でながら言った。ネギは「絶対ですよ!!」と言って上がってくれた
「なかなかの役者じゃの〜衛宮君」
学園長がフォッフォッフォッフォッと笑いながら歩いてきた
「処で・・・何故君は残ったのかね? あのエレベーターはメルキセデクの書に反応しブザーがなるようになっていたのじゃが」
俺は服の下に入れていた本を学園長に渡して言った
「この本の事を聞こうと思いまして」
「ふむ、テストが終わった後で良いかのう」
こうして俺たちの図書館島の探索は終わった。