赤い魔術師と魔法使い 第1話「絆の先にぬらりひょん?」

 

「士郎、本当に良いのか? 今ならまだ、間に合うぞ。」

 

<万華鏡(カレイドスコープ)>の二つ名を持つ、五人の魔法使いの一人が言う。

 

「そうよ士郎。私達が協会の頑固者共に「破壊しちゃうぞ。」とか、言ちゃえばそれですむのよ。」

 

「」に辿り着き、「第四魔法」を使う、<青>の称号持つ魔法使いが言う。

 

「いえ、これで良いんですよ。師匠達が何を言っても、直に協会の魔術師達は俺を狙うと思いますから。」

 

「でも、士郎ならそこら辺の魔術師に襲われても大丈夫でしょう?」

 

死徒二十七祖、第九位に、数えられる。「死徒の姫君」が、言う

 

「そうだけどさ、俺は、俺の周りにある日常を壊されたく無いんだよ。」

 

そう、俺を狙い襲ってくるなら良い。俺が姿を消せば良いだけだから。しかし人質を、遠坂や藤ねぇ達を盾にされたら?

俺を探す過程で、イリヤと桜の事ばれたら間違いなく狙われる。それだけは避けなければ為らない。遠坂が報告書に俺達の事はでっちあげると言っていたが、いずれ協会の魔術師が調べに来るだろう。

だから、まだ協会に聖杯戦争の報告が伝わってない今の内に俺が消えてしまえばいい。

遠坂は「絶対に、アンタを捕まえに行くから、覚悟しときなさい!!」とか言って、ガンドを打ちながらも納得してくれた。 桜は「次に、会うときは先輩よりも、美味しい料理つくりますから!!」と、震えながら答えてくれた。 イリヤは、「今度・・会うときは士・・郎が、見惚れ・・るぐらい、綺・・麗になってる・・んだ・・か・・ら」と、涙を流しながら言ってくれた。 最後に、藤ねぇには「親父のように世界を見てみたい」と言って説得したら「やっぱり士郎は血が繋がってなくても、切嗣さんの子なんだね〜 いいよ、いってらしゃい。でもね士郎、此処は士郎の家なんだから絶対に帰ってくること! これは、お姉ちゃん命令なのだ〜〜」と笑いながら背中を押してくれた。

 

だからもう俺が心配する事は、殆ど無い。

 

Side 青子

 

「ねえ、士郎、本当に行くの?」

 

私は尋ねてみる。

 

「はい、後悔は無いです。こうする事が俺に出来る最良の選択だから・・・・・・それに」

 

「それに?」

 

「家族が背中を押してくれたから、仲間が「絶対に捕まえてやる」って言ってくれたから。」

 

「そう・・なら、私は止めないわ。」

 

あ〜あ、あんな目されたら止められるはずないじゃない。なんで私の生徒は私の知らない所で成長するかな〜 志貴の時もそうだったし、まあ・・・生徒の成長は先生として喜んであげますか。さて、後は頼まれた物を渡すだけか。

 

「士郎、はいこれ」

 

私はスーツケースの中から、ペンダントを出して士郎に渡した。

 

「これは」

 

「魔力封じのペンダントよ。今の彼方にはもってこいでしょ? 彼方は、まだ人というカテゴリーに居るけれど時期にそうで無くなるわ。すでにニ〜三割、越えちゃったんでしょ? 後それ、姉貴からの餞別らしいから感謝しなさい。あの姉貴が私に直接渡しに来たんだからね。それと、イリヤちゃんだっけ? その子の調整もしておいてやるですって」

 

「ええ!! とっ、橙子さんが!!」

 

士郎驚いてるわね〜 まあ、直接渡された私なんかその場で心臓が止まるかと思ったもの。 あ〜今思い出しても寒気がするわ。

 

後に士郎はその時の事を

 

「いえ、あの時は橙子さんが善意でしてくれたのかと思ったんですが・・・・・・・まさかあんな裏が在るとは・・・」

 

と語った。

 

Side  out

 

「もう、そろそろ往きます」

 

「所で士郎、平行世界に行くのは良いが。お前は、まだ「正義の味方」を目指しているのか?」

 

ゼルレッチは、真剣な眼差しで士朗に聞く。もし士郎が「目指している」と答えれば、この場で気絶させ鍛え直すつもりだった。

 

「いえ、親父にはすまないけどその夢は諦めました。その代わり、俺は「自分の大切な者の味方」になろうと、思います。」

 

「「大切な者の味方」?」

 

アルトルージュが、興味深げにききかえす。

 

「ええ、自分の大切な者のためなら正義を笑い撥ね退け、悪に憤怒し潰す。師匠の生き方に、似てるでしょ?」

 

「ふん、さっさと行けこの馬鹿弟子が、」

 

「言われなくても、往きますよ。其れよりも頼みますよハッチャケ爺さん、俺だけじゃ移動出来ないんですから。」

 

士郎を中心として空間が歪み始める。右手には紛い物の宝石剣。 左手の人差し指には、少し汚れた銀の指輪。 思い浮かべるは共に旅した異界の友。

 

「いってきます」

 

と言ってすぐに空間の歪みが、士郎と共に消えた。

 

「本当によかったの? おじい様」

 

アルトルージュが言う

 

「会おうと思えば、いつでも合えるからのう。それに・・・・」

 

「それに?」

 

「あの馬鹿弟子は暗に、ワシを超えると言ったのだぞ? それが堪らなく嬉しくての笑いが止まらんわ。」

 

「おじい様を越える?」

 

「そうじゃ、士郎はワシの生き方に似ていると言ったが、奴の目指す物とワシの生き方はまったくの別物じゃよ。確かにワシは、正義を笑い悪に憤怒するがワシの気に触れるような事をせんかぎり潰さんからな。現に、朱い月を滅ぼしたのも単に、気に食わんかったからだからのう。だが士郎は「自分の大切な者」の為に動くと言った。

その生き方を実践する限り奴は死ねんよ。なぜなら「自分の大切な者」にとって奴の死は悪影響だからのう。」

 

「つまり、自分勝手に戦って生き続ける者と自分の大切な者の為に戦いその上、悲しませない為に生き残る者の違い、という訳ですね? たしかに後者・・士郎の方が難しいですね。愛しい人や家族が出来れば特に。」

 

「じゃろう?」

 

それにあの馬鹿弟子は、正義の味方は諦めたといっておったが気付いておらんようじゃ。大切な者の味方というのは、結果的には「少数限定の正義の味方」という事に。しかし、まだまだ未熟者だ・・・だが、だからこそ面白い「諦めたと言った理想」は形を変え「無限の正義の一つ」を導き出したか、全く最初に夢見た理想も難解な物じゃったが・・・・・・次に見つけた物まで難解な物じゃとわな。士郎お前がワシの弟子である限り手は貸してやろう、お前はワシが見つけた、ワシが育てた原石なのじゃからな。我が親愛なる友にして憎たらしい馬鹿弟子よ。

 

 

 

万華鏡と死徒の姫は、笑う。

万華鏡は自分を越えると暗に言ってきた弟子の成長と未熟さ、そして己が見つけ出し者が切り開く未来を思って。

死徒の姫は弟のように思っていた男の成長と己が師を越えると言った、男の覚悟に。

 

 

 

 

浮遊感と共に視界が暗くなる。少ししてから、浮遊感が無くなり光が戻る。

そこまでは良い。まったく問題ない。ちゃんと世界を渡った感触も有る。

問題は一つ今俺の目の前に、

 

「フォフォフォフォ、所で赤毛の少年、君は此処に何か用が有って来たのかね?」

 

なんかもう見るからに怪しい骨格? をした。ぬらりひょん、ではなくて多分・・・老人? と、思われる人に喋り掛けられている。ん? 少年? 

嫌な予感がする。俺の身長は180ちょい有ったはずだ、髪は魔術の使い過ぎで煤けた銀色になったから赤くない。

 

「あの〜失礼ですが俺、何歳に見えますか? 」

 

「十三歳ぐらいに見えるが、・・・お主の顔を見るからに何か有ったようじゃのう」

 

俺の体が縮んでいました。

 

「なんでさ」

 

ゴット、俺、何かしましたか?