赤い魔術師と魔法使い プロローグそのニ「短い旅路、深き絆」
なんだなんだなんなんだ、俺はなんもミスってねーぞ、詠唱も魔力を込める量・・も・・・・いや、ちょっと込める量は多かったような気もするけど、許容範囲だろこれくらい・・ってちょっと待て、あれか、魔法の失敗か? ここで発動しないと敵の式鬼に潰されちまう! こんなことになるなら魔法学校中退するんじゃなかった〜〜
なんてことを思っているうちに目を焼くような光が俺と式鬼の間に渦巻いた。
「なんでさ」
ナニオイッテイルンデショウカコイツハ?・・・・・・・・・
side 士郎
とりあえず状況を確認しよう。たしか俺は、師匠の宝石剣を投影した瞬間光に飲み込まれたから、たぶん此処は平行世界だな。うん、少しすれば師匠が迎えに来てくれるだろう ・・・・・・・・
来てくれたらいいな〜。じゃなくてまあ、これで帰る時の心配はないだろう・・・・ないったらないんだ!!
で、今俺の目の前には大剣 を振りかぶっている妖怪? ちがうな〜あっ鬼だ、鬼がいるうわ〜顔怖!なんか紙ついてるし、じゃあなくて!
「とッ投影、開始(トレース・オン)」
振り下ろされる大剣を、投影した干将で受け流し、莫耶で鬼の首を切り裂いた。
side ????
俺の目の前に突然現れた奴は、あっという間に式鬼を倒した。なんだ、このガキは新手の敵か? いや、それは無いか。敵だったら俺に攻撃してるはずだし、とりあえず声をかけてみるか
「おい、お前どこから来たんだ?」
「え、えっと別世界からきました。」
「はぁっ別世界? なに言ってんだお前?」
そのあと謎の人物は、「え〜っとですね〜」と、ここに来るまでのことを話し始めた。宝石剣が〜とか、暴走が〜とか、はちゃけ爺が〜とか、正直何がなんだかさっぱりだ。
「あ〜とりあえず魔法の失敗でここに着たんだなお前は?」
「はい、そうです。それと俺の名前は衛宮士郎といいます。」
「ああ、俺はナギ、ナギ・スプリングフィールドだ。ナギって呼んでくれ、でお前じゃなくてシロウはこれからどうするんだ?」
「しばらくすれば迎えが来ると思うんですけど、その迷惑かもしれませんけど迎えが来るまでナギさんに付いて行っていいですか?」
「ああ、いいぜ。よろしくなシロウ。」
正直、シロウが使う魔法のこと知りたいしな。それに、こんな面白そうな奴を連れて行かないわけ無い訳ないし、これから楽しくなりそうだ。
「行くぞシロウ、俺の仲間を紹介してやる」
シロウが俺たちの仲間に加わってからそろそろ四ヶ月経つ、シロウは俺の予想超えるぐらい面白い奴だった。シロウの使う「魔法」正確には「魔術」というらしいが、俺たちが使う魔法とはぜんぜん違うものだった。
魔術を使うには「魔術回路」というのが必要らしい、だが魔法を使うのにそんな回路必要ないし、魔術の詠唱は自己暗示の要素が多いらしいが、魔法の詠唱は精霊を呼ぶ為の掛け声であり術式でもあるからだ。(俺はそう解釈している)
そしてシロウが、使う魔術もとんでもない物だった。投影という魔術らしいが、これが常識外れのもんだった。魔力によって儀式などに使われる装飾品のレプリカを作るものらしいが、シロウの創った物、特に「刀剣類」はシロウが「消えろ」とか「壊れた」思った時か、実際に壊れないと消えないというもんだった。
だから料理する時は、投影で創った包丁とかを使っている。なんて財布に優しい奴なんだ。ちなみに、シロウの料理もとんでもなく美味いし。
次に驚いたのはシロウの戦闘力だ。ぶちゃけ詠春に剣で勝ったし・・・詠春落ち込んでたな〜シロウの料理食ったら、元に戻ってたけど。しかも、シロウになんたら正宗とかゆう刀貰ってはしゃいでたし、ガトーのおっさんは、シロウに「渋くてカッコいい」と言われて「氣」の使い方教えてるし、シロウもシロウで簡単な技をすぐに使えたから、タカミチがライバル心燃やしてるし、まあ、面白いからいいけどさ。
ん、俺が何してるかって、さっき突然現れた爺さん・・・シロウの師匠が「明日の夜、帰るぞ」といいながら来たからな。
シロウに感謝の意を込めて、プレゼントを作成中だ。少し寂しいぞコンチキショウ
side 士郎
昨日の夜、師匠が俺を迎えに来た。今日の夜といっても後一時間もしないうち帰ることになるけど、少し寂しい・・・・・・たった四ヶ月だったけど、とても充実した日々だった。詠春さんに剣を教えてもらったり、おじさんに氣の使い方を教わったり、名前教えてくれなかったな〜
ナギにもこの世界の魔法教えてもらった。
結局使えなかったけど、それに本当の戦争を体験出来た・・・・・やめよう。
一つ一つ思い出していたら帰りたくなくなる。
「シロウ・・・もうすぐだな」
「そうだね」
「これ、やるよ」
ナギが俺に渡したのは、銀色の指輪だった。
「これは?」
「お守りだよ。お前、対魔力弱いだろ? その指輪には俺の魔力が込めてあるから少しはマシになるだろ。」
「ナギ・・・ありがとう」
「士郎、時間だ帰るぞ」
師匠が声をかけたと同時に世界が歪み始める。この歪みが収まったら、もう俺はこの世界にはいない。
「シロウ、またこいよな〜〜!!」
ナギの声が聞こえた瞬間、歪みが無くなり俺は自分が生まれた世界に返ってきた。
「士郎また、あの世界に行きたいか?」
「はい」
「ならば、また行けばいいじゃろう」
「無理ですよ師匠、俺には世界を渡る術が無いし。系統も違います」
「ほう、人の宝石剣を三割方完璧に模倣したくせに、よくもそんなことを言えるのう」
へ? 今なんて言いやがりましたか? はちゃけ師匠
「ちょ、ちょと待ってください師匠、俺は投影に失敗したから並行世界に飛ばされたんでしょう?」
「何を言っておる。お前さんの投影は三割じゃったが、完璧じゃたぞ。」
「なんでさ?」
「まあよい、士郎、明日から宝石剣の使い方を教えてやる。三割以上の物が創れるのならば後は、知識と使い方を覚えればより完成度の高い物が作れるじゃろうし、なんとかなるじゃろう。それに無ければ違うところから持ってこれば良い・・・じゃが、投影の訓練も怠るなよ。今出来る物よりもさらに上を目指せ、今日はもう寝るがいいお前も疲れたじゃろ。」
「はい、よろしくお願いします。」
俺はこの時初めて、師匠の弟子になれて良かったと思った。
「ああ、忘れる所じゃったがこっちの世界ではお前が居なくなってから、一ヶ月しか立っておらんから学校の言い訳は考えとけよ? まあ、ある程度は手を回しておるが」
前言撤回、なんでこんなくそ爺の弟子になったんだろ・・・・・そして五年の月日が流れた。
おまけ
「師匠、投影が成功していたのになんで俺は跳ばされたんですか?」
「ワシがやったに決まっておろうが」
「一応、聞いときますがなんででしょうか。」
「そんなもん、面白そうだからだ!!」
「ふ、フフフフフフ・・滅ぼしたりゃあ――この外道がー!!」
「馬鹿弟子が!! ワシに勝てるとでもおもうたかー!!」
この後、東の方で不敗っぽい師弟の様な事を言いながら、第二魔法と魔剣・聖剣の打ち合いがあったのは言うまでも無い。