最初に、この短編はBINの自分勝手さと御都合主義と妄想と自己解釈が多分に含まれています。

「あ〜ダメ、読む気センワ」と思われる方は読まない方が良いと思われます。

「全然気にしないぜ!!」と思われる方は↓に進んでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を追っていた。

 

手を伸ばせば伸ばす程遠ざかる、触れられない夢を

 

 

 

 

白い花は君の為に

 

 

 

 

強い風が吹く荒野

 

荒れた大地は赤く

 

空はキリキリと音を立てる歯車に支配されたその世界に、一人の男が居た

 

無限に続く荒野

 

まるで墓標の様に突き立つ剣軍

 

その世界を歩くのは赤い男、名はエミヤシロウという。

 

此処は「」と呼ばれる場所に最も近く、「」と呼ばれる場所に最も縁の無い場所。

 

男の居る世界は「座」と呼ばれる場所

 

過去、現在、未来に、善悪問わず偉業を成し遂げた者や、己が死後と引き換えに奇跡を得た者が住まう場所。

 

そして、彼等の様な存在を人は英霊と呼ぶ。

 

エミヤシロウは、死後を世界に売り渡し奇跡を叶えた一人だった。

 

死後を世界に売る。ソレは世界と契約する事。

 

「死んだ後も人を救えるなら、ソレは素晴らしいことだ」

 

彼は、正義の味方を目指した男はそう思った。しかし、其処に彼の望んだ、目指した、救いは無かった。

 

カウンターガーディアン

 

抑止の守護者

 

ソレは純粋な英雄だけが成れる英霊。

 

彼は純粋な英霊では無かった

 

彼は偉大な功績を挙げた事など無く

 

伝説・伝承が伝えられた存在でも無かった。

 

ただ世界と契約した存在

 

世界に守護者として登録されているが自意識などなく、「世界を滅ぼす要因」が発生した場合その「要因」を「取り除く」為に行使される抑止力・・・・殲滅兵器として使われた。

 

彼は嘆いた

 

「世界を滅ぼす要因」とは何時も「人」だった

 

人は自らの業によって滅ぶ、「取り除く」とは「消滅」させる事。

 

「要因」とは「人間」の事だった。

 

世界に召喚される彼の分身は、要因を消滅させ続けた。

 

自由意志などない殺戮機械として、呼び出された土地に居る全ての人間を殺し続けた

 

彼は叫んだ

 

「何が人類の守護精霊だ!! 唯の殺戮者ではないか!!」

 

彼が幾ら叫ぼうとも

 

夢を何処かに落としてしまった

 

彼が幾ら嘆こうとも

 

理想と遥かに遠い距離に居る事に気づいた

 

世界に彼の意思が反映する筈も無く

 

自分が行使された殺戮の情報だけが「座」に保存され続けた

 

少女を殺した

 

老人を殺した

 

赤子を殺した

 

男を殺した

 

女を殺した

 

何十、何百、何千、何万、彼は行使され続け殺戮を繰り返す内に彼の記憶は磨耗し、理想を目指したモノを見失い思った。

 

「何故この様な事に為ったのだろう、もう消えてしまいたい」

 

彼は磨耗した記憶を検索した

 

そして見つけた

 

見つけてしまった

 

彼が、この無限とも言える地獄から消滅する方法を

 

自分殺し

 

彼は狂喜した

 

自分に成りえる可能性を持つ衛宮士郎を殺せば「自分殺し」のパラッドックスが起き、消滅出来るという可能性に彼は賭けた。

 

そして、答えを得た

 

理想を思い出した

 

大切だった、切り捨ててしまった人達の笑顔を思い出した

 

自分の目指したモノを思い出した

 

彼は誓った。赤い少女に

 

「俺、これからも頑張っていくから」

 

朝日の昇る中、彼女と自分が別れた場所で誓った。

 

彼は自分の記憶を思い出す事にした。

 

磨耗しない為に、平行世界の自分が言った「この思いだけは、間違いじゃない」という言葉を忘れぬ為に。

 

最初に思い出したのは、養父との誓いと最後の笑顔。

彼は近くに有った斧剣の腹を背もたれにして座り、苦笑した。

 

思えば養父はズボラな人だった

 

次に思い出したのは、血の繋がらない幼い頃から自分を知っている姉の様な人。

天真爛漫自由奔放で、活力に満ち溢れた笑顔が似合う姉の事。

彼はまた苦笑した。

 

あの姉には敵わなかった

 

次に思い出したのは、血の繋がらない妹の様な人。

儚い笑顔が印象的で、自分の事を「先輩」と呼ぶ可愛い妹の事

彼はそう言えばと笑った。

 

最初は料理が出来なかったけ

 

次に思い出したのは、赤が似合う少女。

自分の魔術の師であり、親友であり、迷惑を掛けた人。

自信に溢れる笑顔が魅力的な女性の事。

彼は渋い顔をした。

 

真冬の川に落とされたな

 

次に思い出したのは、剣の少女。

出会いは唐突だった。

凛とした表情が似合う清楚で可憐な、自分が愛した少女。

彼は儚く笑った。

 

以外と頑固で食いしん坊だったな

 

彼は思った。彼女達とは血の繋がりは無かったが、確かに家族だったなと。

そして気づいた。

 

家族を泣かせる奴が正義の味方に成るなんて、無理だったんだ

 

其処に後悔は無かった

 

家族を泣かせる事は間違いだが、救えた人が居たから・・・この思いは間違いでは無いと思うから、悪いのは巧く立ち回れ無かった自分だと思った。

 

彼は、何かが足りない事に気づいた。

 

大事な事だ、自分に取って大切な・・・掛替えの無い人が居た筈だ。

 

『シロウ、これ何てゆう名前の花?』

 

思い出すな

 

『そっか、シロウも知らないんだ。白くて綺麗なのに』

 

思い出すな

 

『シロウは、何時も傷だらけで帰ってくるね』

 

『ごめんな■■■。でも俺が怪我した事で、助けられたひとが居るんだ』

 

思い出す黙れ!!

 

思い出そうとする自分を邪魔する声を排除し、必死に記憶を検索する。

 

小さな白い手で、帰ってくる度に傷の増える自分の体の手当をしてくれた少女が居た

 

『なあ、■リ■。俺は間違ってるのかな』

 

『間違って無いよ。シロウはちゃんと人を救ったんだから』

 

弱音を吐いた自分を励ましてくれた、白い少女が居たんだ。

 

『シロウは強いけど弱いから、私がシロウの・・・「正義の味方の味方」に成ってあげる。シロウは私のお兄ちゃんで弟なんだから・・・だから泣いても良いんだよ? 少なくとも私の前では、落ち込んで泣いても良いんだよ』

 

自分の味方に成ってあげると「シロウは正義の味方なんだね」と笑ってくれた。

年に数回しか帰らなかった家で、自分の事を待ってくれていた。

自分の隣で、花の様に笑っていてくれた少女が居た。

 

『シロウ、もうお別れなんだ・・・』

 

『なんで・・・なん・・で!!』

 

『もう、そんな顔しないの。私が長く無い事はリンから聞いてたでしょ? それに・・・私は幸せだったよ? シロウと一緒に暮らせて、シロウの作ったご飯を食べれて、タイガと一緒にお風呂に入れて、リンとケンカとかして、サクラとお料理作れて、それにシロウの・・・「正義の味方の味方」に成れて』

 

『何か・・・俺に出来る事は・・無いか?』

 

『・・・私の事を忘れないで、イリ■スフィ■■・■■ン・■イ■■べ■■が貴方の隣に居た事を忘れないでね。私はそれだけで、満足だから』

 

五年、彼女は俺と出会ってから五年で死んだ。

 

「あ・・・あぁぁっ!! イリ■」

 

鉄で覆ったブリキの心に涙が満ちた

 

「■リヤ!!」

 

白い少女の名前が、花の様な笑顔を見せてくれた彼女の名前が、思い出せない。

 

(私は此処にいるよ)

 

声が聞こえた。自分以外に誰も居ない筈の世界に、自分以外の声が聞こえた。

 

「どこから!!」

 

彼は立ち上がり辺りを見回した。見えるのは剣、大地に突き立つ剣しか無かった。

彼はそれでも探した。あの声は自分に取って大切な人の声だと思ったから、名前の思い出せない彼女の声だと思ったから。

 

微かに、優しい香りがした。

 

彼は、自分が寄り掛かっていた斧剣の反対側を見た。其処に在りえる筈の無い

 

小さな白い花が一輪、咲いていた。

 

彼は思い出した。自分が寄り掛かっていた斧剣は、彼女の騎士が使っていた物だという事に

 

涙が止まらなかった。

 

騎士の剣は自分が彼女を思い出すまで、この世界に吹く強風から護る様に突き立っていた。その姿は、これがお前の大事な者だと言っているかの様に。

彼は大地に膝を着き、叫んだ。

 

思い出した名前を、白き少女の名前を

 

「イリヤ、イリヤイリヤイリヤイリヤ!!」

 

花は枯れていた。折れずに枯れていた。自分は此処に居ると訴えるように

 

彼は花に手を添えて泣きながら叫んだ

 

「ごめん、ごめんイリヤ!! 俺馬鹿だから、鈍感だから!! 独りだって勘違いして自分の事だけ考えて忘れてた!! お前を、イリヤの事を思い出そうともしなかった!! ごめん、ごめんイリヤ。俺、思い出したから、ちゃんと思い出したから!! だから、消えないでくれ!!・・・・・・姉さん」

 

彼は斧剣に当たり弱まった風から、花を護るように蹲って泣いていた。

風を遮きる事は出来ないと、彼は分かっていた。それでも花が散らない様に蹲って泣いていた。

 

しかし、風は無情にも花を散らしていく。

 

ヒラリ、ヒラリと赤い大地から白を奪っていった。

 

「あっ、嗚呼アアアアアアアアァァァ!!」

 

彼は悔やんだ。何故気づかなかったと

 

彼は怒った。彼女を忘れていた自分に

 

彼は呪った。自分の心象風景を模した世界を

 

彼の慟哭は止まなかった。

 

 

 

 

 

どれ程の時間が経ったのだろうか

 

世界に抑止として行使される彼の分身からの情報は、何十、何百、何千、何万と更新されていった。

 

彼は泣く事を止めなかった。止めれなかった。

 

「もう、シロウは泣き虫さんなんだから」

 

聞こえる筈の無い声に、彼は顔を上げた。

 

自分の首に手を回された感覚に、在りえないと手を触れさせた。

 

背中に感じる他人の体温に、まさかと声をだした。

 

「イリヤ?」

 

白い雪の少女は花の様な笑顔で言った

 

「そうだよ。泣き虫な弟を慰めにお姉ちゃんが来たよ」

 

彼は振り返り自分より小さな、小さな花の様な少女を抱きしめてまた泣いた。

少女は笑みを浮かべて彼の頭を撫でた。彼は聞いた。どうして此処に居るのか? 何故、此処に自分以外の存在である少女が居るのか?

 

少女は話した。

 

自分が小聖杯として使われた時に大聖杯との繋がりが出来た事を

 

彼が帰って来る度に塞がっている傷、塞がっていない傷に気づかれないように術式を刻んでいた事

 

刻んだ術式は魂を移す為の物でずっと彼の中に居た事

 

彼が呼んでくれないから、思い出してくれないから消滅仕掛けていた事を話した。

 

最初は淡々と、次は済まなさそうに、最後は少し怒りながら、表情コロコロ変えて。

 

彼は謝った。「ごめん」と「ありがとう」と

 

少女は言った。「もう独りじゃないよ」と「ずっと一緒だよ」と

 

彼は少女の言葉にまた泣いた。

 

少女は笑顔で「泣かないの」と言った。

 

そして少女は思い出したかのように言った。

 

「私の事をちゃんと思い出したから、ご褒美をあげる」

 

彼は、いいよと首を横に振った。彼にとって少女とまた会えた事が何よりの救いで在り、褒美だった。

 

この無限とも言える地獄で、生きていく意味に出会えた

 

 

少女は「むぅ〜」と可愛らしく、頬を膨らませ言った

 

「ダメ!! 弟はお姉ちゃんの言う事を聞く!! 私が「良い」って言うまで目を閉じる!!」

 

彼は、苦笑しながら目を閉じた。

 

目を閉じても少女が居る事が分かる事が嬉しくて、幸せだった。

 

少女が「良いよ」と言ったのは、彼が幸せを噛締めている時だった。

 

彼が目を開けると、其処に家が在った。養父と、友と、家族と過ごした懐かしい家が在った。

彼は驚いて少女を見た。少女は「偽て遣ったり」といった顔をして走って門を潜り抜けて振り返り、手招きをした。彼は、呆然としながらも門を潜った。

少女は家のドアを開け、玄関に上がり言う。彼はその言葉を聞き笑顔で返す。

 

 

「お帰り、シロウ」

 

 

「ただいま、イリヤ」

 

 

 

 

荒れた大地に活力が戻り

 

歯車が支配していた空は崩れ日が昇り

 

赤い大地は白く染まった

 

彼はこれからも嘆くだろう

 

彼はこれからも叫ぶだろう

 

しかし、彼はもう独りではない。隣に彼女が居る。自分の味方に「正義の味方の味方」に成ってあげると言った少女が居る

 

故に彼が折れる事は無く

 

故に彼が笑みを失う事は無く

 

借り物の理想を目指して

 

確かな思いを胸に

 

彼は少女と伴に歩み、走り続けるだろう

 

正義の味方に成るために

 

 

 

 

 

 

此処は「」と呼ばれる場所に最も近く、「」と呼ばれる場所に最も縁の無い場所。

 

神秘を知る者達から「座」と呼ばれる場所に不思議な世界がある

 

その大地には白き純白の花が咲き誇り

 

その大地には無限の剣が雄雄しく突き立ち

 

その空は蒼く

 

その空に在る日は優しく

 

その世界は飢える事も、渇く事も無く

 

一人の男と一人の少女が微笑む世界

 

 

偉大なる英雄と呼ばれる者たちが

 

偉業を成し遂げた超人たちが望んだかもしれない世界

 

 

人が知ればこう呼ぶだろう

 

 

遥か遠き理想郷

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

すみません。ごめんなさい。orz

自分勝手、御都合主義な弓救済。しかも、弓×イリ

自分で言います。「何書いてんだ貴様」と

反省しています。でも後悔はしていません・・・・・・書きたかったから

因みに、「全て遠き理想郷」ではなく「遥か遠き理想郷」なのかというと前者は妖精郷、後者が「座」というだけです。特に意味はありません